第18話 旅程
休憩を終えると再び出発だ。
偵察のアタシが先頭である。
ペースはゆっくり。
「レヴィ脱出の時、最後の食事休憩・トイレ休憩はいつだったか?」
レヴィがダンジョンから出る時の道を考えるにあたって、ヒントになったのがコレだ。
ダンジョンの中でも腹は減るし、出るモノは出る。当たり前だ。
レヴィの最後トイレ休憩は第三層だったらしい。
第三層の空は、そろそろ暗くなる頃だったと。
その時、しばらく袋から出れないから水はあまり飲むな、と言われたそうだ。
レヴィは素直に従ったらしい。
抵抗しろ!
また、レヴィを連れてた冒険者達は、第一層の南へ向かう道の途中で一度軽食を食べていたそうだ。
その時、レヴィは革袋に入れたままだったとか。
ド腐れ外道どもが!
これ、ロイメの冒険者ならみんな同じことを言う。賭けてもいい。
一人だけメシ無しはないでしょ。
第三層を抜ける時にすでに夕方なら、第一層の南を行く頃は深夜だったはずだ。
それでもレヴィを担いだ冒険者達は、軽食を食べた後、キャンプをする様子もなく歩き続けたらしい。
これはおかしい。
夜に歩き続ける。長時間歩き続ける。
両方危険だ。
普通はキャンプをするよ。
レヴィの引き渡しに期限があったのか、夜にしか現れない道でもあったのか。
「レヴィが捕まったのは満月だった。満月にだけ開く仕掛けがあるのかもしれない」
うちのシオドアは言いやがった。
そんな大規模なダンジョンの仕掛けを発見するなんて滅多にないって。
って言おうとしたけど、現実にゴブリン族がダンジョンの外に出てきてるんだよね。
もしかしたら凄いモノが見つかる、かもしれない。
今晩の月齢は13だ。
探索は今晩から始める。明後日の十五夜満月まで、丸2日と少し。
今回の満月で目処を付けたいね。
ダンジョンの角を曲がったら、先の方に何かいた。
あのシルエットは、巨大蟷螂だな。
巨大蟷螂は、通路の真ん中でじっとアタシ達を待っていた。
あの大きな目ん玉でアタシ達を見てるんだろうなぁ。
このでっかいカマキリ、普段はほとんど動かないけど、近寄るとビヨーンと鎌を出してくる。油断も隙もないんだわ。
別の通路を探せば追っかけてはこないけど。
「探索の邪魔だ。討伐するぞ」
シオドアが言った。
だね。通路の真ん中でじゃまっけだし。やっちゃいますか。
巨大蟷螂討伐には、背後を取るか、リーチの長い武器を使うか。もしくは。
「氷槍」
シオドアの術が巨大蟷螂に直撃する。
中級術だ。
魔術が有効である。火属性か氷属性がオススメだね。
術に直撃され、体も冷え、巨大蟷螂の動きが目に見えて遅くなる。
「うぉぉぉオ!」
剣と盾を構えたスザナが飛び出して行く。
「やぁぁァア!」
続いてアタシも。
スザナ1人で大丈夫だろうけど、ここは頑張っちゃおう。
巨大蟷螂討伐はあっさり終わった。仕留めたのはスザナだ。
小さいけど魔石も出たよ。
そして。
「レヴィ、治癒術をかけてよ」
アタシはズボンをまくり上げて、大きくアザになった左足を見せた。
ドジ踏んだよなって?
いやこれ、わざとだから。
「いいですナリ。かけますね」
レヴィはトコトコとアタシの所までやってきた。
「初級治癒」
アザが消え、痛みが消える。
いい感じに効いた。
マナの密度が濃い感じ。
同じ治癒術でも術者の力量で回復量は変わる。
今まで何人もの術者に治癒術師にかけてもらったけど、レヴィは上手な方だと思う。
まぁつまり、レヴィの治癒術を自分の体で試すために青あざを作ったわけ。
術の効き目は期待以上だ。
レヴィの治癒術は『輝ける闇』で役に立つだろう。
「レヴィは治癒術が上手いよ、シオドアより上手じゃない?」
アタシが言うと、シオドアは苦笑した。
巨大蟷螂討伐後、しばらく歩いた。
「休憩にしよう」
シオドアが言った。
ちょっと休憩には早いけど、……またレヴィの足が調子悪いのか。
ペースには、気を使ったつもりだったけど。
休憩時にシオドアがレモン水を作って皆に振舞った。
持ってきたレモンの砂糖漬けをコップに入れ、水を入れ、氷を入れて完成。
うちのメンバーは皆、金属製のマグカップ(名前入り)を持ってる。
「生き返るね」
ヘンニが言った。
レモン水は疲れた時に効く。
氷はどうするんだって?
うちのシオドアは氷属性の魔術師で人間製氷機なんだよ。
でも、レヴィの歩く力の弱さは問題だ。
改めてレヴィの体つきを見る。
脚は短く、腕が長い。
ゴブリン族は樹上生活の民である。平たい場所を歩くより、木に登ったり枝にぶら下がったりする方が得意なんだろう。
「アタシが担いでやろうか。レヴィぐらい余裕だって」
ハーフトロール族のスザナが言った。
確かにスザナなら、レヴィ1人を担ぐぐらい余裕だろう。
これはヘンニも同じだけど。
一番の攻撃役のヘンニは、いざという時のために身軽であってほしい。
ここはダンジョンだし。
「うちの青助に乗ればいいじゃない」
ここで、ネリーが発言した。
おっ、これは?
青助は、ネリーが使役しているスケルトンで荷物運びだ。
「今日の青助の荷物なら、オマケでレヴィが乗っても大丈夫よ。
元々雑に扱われているから頑丈なの」
ネリーさぁ、レヴィに使役霊の扱いが雑だって言われたこと、根に持ってるね。
「ネリーさん、乗せてもらっていいナリか?」
レヴィがネリーを見上げながら言う。
「いいわよ、雑な青助だけど」
ネリーは答えた。
レヴィは青助の背中で背負子に捕まって移動することになった。
樹上生活の民であるレヴィにとって捕まったり、ぶら下がったりするのは負担ではないようだ。
レヴィは、青助に乗ったり、たまに歩いたり、本人なりにペースを作っている。
とりあえず、問題は一つ解決した。
それにしても、ネリーとレヴィって、仲直りしたんだっけ??




