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【衝撃の結末・ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第三部 闇の中に道を探せ
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第17話 空気は読むものではなく吸うものなハズ

 ダンジョンを行くアタシ達『輝ける闇』の空気は悪かった。


 何でって?はい、説明しますよ。



 今回の探索クエストの目的は、「レヴィがダンジョンから脱出したルートを見つける」なわけだ。

 そして方法は「レヴィの記憶を頼りに道を辿る」だ。

 


 アタシ達は、他の冒険者とタイミングをずらし、午後にゲートからダンジョンに入った。

 レヴィを目立たせないため、そして今回の探索クエストは夜が中心になりそうだったから。



 ダンジョンに入って最初に到達するのは大きな噴水がある広場だ。


 ネリーはそこでいつも通り死霊術を使う。

 周りの冒険者達は死霊術を嫌がるけど、シオドア曰く「ギルドの法にもロイメの法にも抵触しない」。

 もちろんアタシも気にしない。


 ネリーが皮袋から丁寧に頭蓋骨を取り出し地面に置く。

 頭蓋骨の後頭部には青い花が描かれている。


 ネリーが召喚?の呪文を唱える。

 すると、頭蓋骨の周りに背骨や大腿骨その他の骨が出現し、スケルトンの姿になった。

 アタシ達には見慣れた光景だ。


 『輝ける闇』では、スケルトンには背負子を背負わせて、運び屋(ポーター)をさせている。

 運んでもらうのは、野営キャンプ用品や、予備の食料、着替えなどだ。

 パーティーに、いつも頼れる運び屋(ポーター)がいるのは強い。実にいい。

 

 スケルトンも見慣れればかわいいモンである。



 そこでレヴィが言ったのだ。


「ネリーさんは魔力は素晴らしいですが、使役霊の扱いが雑ですナリヨ」



 言っておくが、ネリーはロイメでもおそらく両手の指で数えるくらいしかいない上級死霊術の使い手だ。

 

 そのネリーに。

 言うのかい!



 ネリーはジロッとレヴィを睨みつけると、そのまま黙りこくってしまった。

 シオドアやヘンニが話しかけたが、うんとかすんとかしか言わない。



「どうしようトレイシー、どうしたら良いと思う?」

 こういう空気に敏感なスザナがアタシに話しかけてきた。


 知らない。

 魔術師の術式に関するプライドや意地に、ただの偵察スカウトがどう関われるというのだ。



 そんなわけで、アタシ達は空気悪くダンジョンを進んでいた。



 ロイメ・ダンジョンの第一層は、石畳の床に暗い通路が続く、いわゆるダンジョンらしいダンジョンだ。


 ネリーが打ち上げた明かりの魔術(ライティング)が周囲を照らす。

 明かりの魔術の術式には、レヴィも何も言わなかった。


 魔術師の明かりの魔術(ライティング)が下手だと光がちらついて、何をするにもやりにくい。

 そもそも魔術師がいないと、高い魔術道具を使うか、松明の明かりを頼りに進むか、いっそ天井にヒカリゴケが生えてる所で冒険するか。


 結論。ネリーはいい仕事してる。



 途中でレヴィが足を引きずり出した。


「ゴメン。ちょっとペース速かったかな」

 アタシは言った。


 考えて見れば、ゴブリン族は体格が小さい分歩幅も狭いよね。

 ちょっと無理させたかな。


「大丈夫です。でもちょっと治癒術をかけたいナリネ」

 レヴィが答えた。


「一旦休憩たな」

 シオドアが言った。



 アタシは、床と壁にトラップがないか、軽く確認する。

 そして、アタシ達は荷物を置き、何人かは壁に体を預ける。休憩だ。




「靴が合ってないな」

 レヴィの靴を脱がせたシオドアが言った。


 レヴィの靴はロイメの靴屋で急遽仕立てたものらしい。

 ロイメに1人しかいないゴブリン族の足に合わせた靴を作るのは大変だろう。


「ペースはゆっくり目でいこう。時間に余裕はある」

 シオドアか言う。


 ゆっくり目のペースは文句ないけどさ。

 シオドア、なんていうかさ、あんたレヴィに甘いよね。



 休憩中もネリーは誰とも目を合わせない。


 

 そして空気は相変わらず重苦しい。

 あーもう。うざい。うざい。

 この空気、徹底的にぶっ壊してやるわい。


「ねぇシオ、聞きたいことがあるんだけどさァ」


「なんだ、トレイシー?」


「冒険者ギルドの上の方とゴブリン族って、どれくらい深い付き合いなわけェ?」


 シオドアは一瞬虚を突かれた顔になった。



「レヴィはさ、訛は強いけどさ、ロイメの言葉が話せるよね。

 もし、ゴブリン族がホントに冒険者達と関わってないならロイメの言葉は話せないと思うんだよね」


「……。」

 シオドアは沈黙した。

 レヴィも答えない。


「つまりさ、レヴィは部族のシャーマンだっけ?として、ゴブリン語とは別にロイメの言葉を習ったと言うことじゃない?

 ぜんぜん関わりがないなら、わざわざ言葉を勉強しないよね?」


 アタシの推測、当たってるよね?


「えーとですナリですナリナリ」

 レヴィが口をモゴモゴさせている。


 一人でブツブツ言ってたネリーは、今の話題に完全に覚醒したようで、こっちを見てる。



「トレイシーの考えは正しい」

 シオドアが静かに言った。


 やっぱりね。


「ロイメ市は、いや冒険者ギルドは、第四層のゴブリン族と交流を持っている」


「どんな交流よ?」


「年に1〜2回、第四層の決められた場所で代表者が会う。そこで交易を行う」


「ゴブリン族からは魔石や、たくさん取れて余ってる魔物モンスター素材。

 こちらからはゴブリン族が欲しがる物。具体的には、金属製品、ナイフなどの刃物、他には針とか。絹糸、あとは塩や調味料も」


「お互いにとって損のない取り引きですナリ」

 レヴィが言葉を添える。


「だまされちゃダメよ。

 冒険者ギルドにとって、有利な取り引きなことは間違いないんだから」

 ネリーが久しぶりに発言した。


 アタシも同じ意見だ。

 冒険者ギルドが冒険者とゴブリン族との接触を禁じていた理由の一つが分かったよ。

 独占取引ってヤツだよね。


「でもでも、取り引きの場では、ゴブリン族も冒険者ギルドに要望を出すですナリ」


「どんな?」


「変な冒険者を取り締まってほしいとか、そういうのですナリ」


 あ〜、そういうヤツね。

 レヴィをさらったヤツらもそうだけど、たちの悪い冒険者っているからねぇ。


 冒険者であるアタシ達の間を白々とした空気が流れる。


 けどまぁ空気、さっきよりはマシになったよね?だよね?ね?




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