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【衝撃の結末・ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第二部 毎日が冒険日和
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第12話 魔術とスキル

「アタシの魔術は、祖父ジジイに教わったんだ。

 魔術師クランとかで修行はしてないよ」


 アタシはむかし、祖父ジジイにぶん殴られながら修行した。


「風魔術の一種ですよね?」


「そうらしいけど、よく分からないんだわ。アタシは魔術理論の勉強とかやってないから。

 術もこれ一つしか使えないし」


 クリフ・カストナーもギャビンもちょっと驚いたようだ。


 術が一つしか使えないのは、祖父ジジイも同じだ。

 祖父ジジイまごともども馬鹿の一つ覚えなんだよ。




「えーと、どんな風に修行したんスか?」


祖父ジジイに見本を見せられて、後は気合で真似ろって言われてひたすら毎日繰り返すだけ」


 最初はロクに音が鳴らなかった。

 頭じゃなくて身体で覚えろ、気合で鳴らせ、が祖父ジジイの口癖だった。


 普通に魔術師の修行をしろって?


 祖父ジジイ曰く「魔術師として冒険者になるには、魔術適性も頭の良さも足りない」。


 ネリーとかを見てると、悔しいけど祖父ジジイは正しかったと思う。



「興味深い修行法ですね。

 高度に熟練した術はスキルと見分けがつかないって読んだことがあるけど、その類かな」


「アタシは良く分からないよ、そういうのは」


「失礼しました。何年ぐらい修行にかかりましたか?」


「十三歳から三年ぐらいかな。冒険者になる気なら、これが使えるようにならなきゃだめだって言われてさ」


 アタシが冒険者になりたいって言った時、祖父ジジイは怒ったし、反対した。

 それで、冒険者の修行をするために祖父ジジイが出した条件が、爆竹バオズゥの魔術を習得することだったのだ。


「もしかして三年間、ひたすら毎日撃ったとかですか?」


「良くわかったね。そうだよ。今でも毎日練習するよ」


 爆竹バオズゥは、素早く思い通りに発動させることがとても重要なのだ。

 そのためには日々練習だ。



 魔術師クリフ・カストナーは頷いたり、首を捻ったりしながらいろいろ考えている。

 ネリーに話した時もこんな反応だったんだよなー。




 訓練場の主のドワーフ教官がやってきた。後ろにはナガヤ・コジロウもいる。

 もしかして、もう一度褒められちゃう?やだなー。


「トレイシー殿、興味深い戦いぶりたった」

 ドワーフの教官は言った。


「アタシ、これしか使えないんですけどね」

 ここは謙遜しておく。


「それで良いのだ。洗練された術を一つだけ。

 選択肢が増えると迷いも増える。それが戦闘では隙になる」


 ドワーフ武術教官の権威は相当なもので、クリフ・カストナーもギャビンもコジロウも神妙に聞いている。



「今思えば、戦っていて実にイヤな場所で鳴ったな」

 コジロウが言う。


 もちろんアタシはそういう風に鳴らしている。


「術を思った場所、思ったタイミングで発動させてるのはとても難しいんですよ」

 クリフ・カストナーは何やら考え込みながら言う。



「トレイシー殿、もし修行すれば俺でも使えるようになるか?」

 コジロウがアタシに質問してきた。


「分からないよ。それは祖父ジジイに聞いてよ」


 どっちかと言うと無理な気がしたけど、ここは無難に答えておこう。


「血族魔術の一種にも見えるし、誰でも真似出来るものではないだろうな。

 己に合った戦い方を究めることだ」

 ドワーフ教官がまとめた。


「つまり俺では無理ということか?」

 コジロウは食い下がる。


「特殊魔術が誰でも使えたら苦労しないッスよ」

 ギャビンが答える。


「ギャビン殿はもしかして、特殊魔術を練習したことがあるのか?」

 コジロウがさらに食い下がる。


「それなりの魔力と術の適性がないと無理だと思いますよ。

 適性のない魔術は何をやっても無理なんです」

 クリフ・カストナーが断言した。


 コジロウは残念そうに肩をすくめ、ドワーフ教官とともに去って行った。



「それにしても、トレイシーちゃんは俺が思ってたよりずっと強かったンスね。

 トレイシーちゃんじゃなくて、トレイシーさんかな」

 ギャビンが話しかけてきた。


「トレイシーさんとか止めてよ。普通にトレイシーでしょ」


「じゃ、これからトレイシーって呼ばせて貰うッスよ」

 ギャビンはヘラッとした笑顔で言った。


 これ、アタシ、もしかして乗せられた?


 まあ、いっか。

 ギャビンもアタシも冒険者で同業者の偵察スカウトだ。

 ちゃんづけやさんづけより、呼び捨てがふさわしいでしょ。お互いにね。



「こういうのを奥の手って言うんですね」

 クリフ・カストナーがブツブツ言ってる。


「それだけとは限らないけどね」

 アタシは完全に調子に乗っていた。


「じゃあ、他にも奥の手があるんですか?」


 うっ。あーもう。


「例えばこういう道具も奥の手なわけよ」

 アタシは赤の煙玉を見せる。


「道具屋で買ったんだけど、唐辛子の粉が入ってるんだって」


「面白そうッスね」

 ギャビンが真剣に見つめる。

 アンタも偵察スカウトだし、興味あるよね、こういうの。


「投げると、煙といっしょに唐辛子の粉が出る感じですか?」

 クリフ・カストナーが質問してきた。


「残念ながら、まだ実戦では使ってないのよね。

 ロイメの街中では使っちゃだめって道具屋に言われちゃったし」


 試して見るにしても、唐辛子の粉がどれくらい飛び散るか分からない。

 どこなら安全に試せるかなぁ。


「戦う時よりも逃げる時に役に立ちそうッスね」

 ギャビンが言った。

 これはアタシも同意見だ。


「面白い道具ですね。どこの道具屋ですか?」


 アタシは赤の煙玉を買った道具屋の場所を教えた。


 クリフ・カストナーは興味深げに赤玉を手にとって、しばらく眺めてから返した。


 クリフ・カストナーへの借りはこれで返したと言えるかな。






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