38.お姫さまと修行!
すみません、ちょっと短いです
「中央学園の先生にもお話を伺ったわ。キャナリー、貴女まだうまく呪文が唱えられないそうね?」
「えっと……はい……」
キャナリーはアーネ姫に痛いところを指摘されて、シュンとうなだれてしまう。
「苦手なことは誰にでもあります。でもそのまま放っておいてはいけないわ。この夏休みにしっかり特訓しましょうね!」
アーネ姫の手には、例の光る魔法陣の紙がしっかりと握られている。
「よし、がんばろう!」
「気合入れていくモモ!」
「それじゃ、まずは基本の呪文。たしか風はこうね、ヒュヒュヒュ……」
「はい、お姫さま! ヒュゥゥヒュゥゥ……、ヒュゥゥゥ~……」
キャナリーの風の呪文、やはりまったく魔法陣は反応しない。
「ぐぬぬぬ……」
別に今までだってサボっていたわけではないし、毎日少しづつ練習だってしているのだ。いくら気合を入れたからって、すぐに簡単に成功するなんてことはない。
結局その日は、一日中ひゅうひゅう言っていたけれど、何の成果も得られないままに終わった。
次の日、そしてその次の日も、何も得られないままどんどん過ぎていく。
ポワンシェの子犬たちが「遊ぼ?」って寄って来るけれど、ここは我慢。四匹の子犬たちを膝の上に抱きながら、ただひたすら呪文の詠唱を続けるのみだ。
「おかしいわね、なんでそんなに呪文が上手く唱えられないのかしら……」
呪文に大切なのは何と言ってもリズムと音程。そして何としても魔法が使いたいという思い。
アーネ姫が試しに唱えてくれる風の呪文は、リズムも音程もとても耳に心地よく響く。でもキャナリーが唱えると、リズムも何もてんでなっていない、ただうるさいだけの雑音だ。
いくら魔力がたくさんあったって、いくら魔法が使いたいと心から願ったって、こんな様子じゃいつまでたっても魔法なんて使えるはずがない。
きゃうん……?
心配そうな子犬たちに無理やり作った笑顔を見せながら、来る日も来る日もキャナリーは呪文の特訓を続けた。
子犬たちがどんどん大きくなって膝の上からこぼれ落ちるようになっても、それでも毎日毎日もう気が遠くなりそうなぐらい、ひたすら呪文の特訓を続けた。
キャナリーには魔法は無理かもしれない……
本人だけでなく、アーネ姫も、そして周囲にいる使用人たちみんなもそう思い始めた。
これは無理だ、と。
ひゅうひゅう。風の呪文を唱える自分の声が、キャナリーの中でこだまする。
それは過去に何度も何度も聞いた音。
何度も運び込まれたあの場所の音。
天国と地獄の入り口の音。
集中治療室。
自由に動かない足、手すりをつかむことすらできない手。
転んでも起き上がることすらできない体。
息が苦しくなる。
助けを……
呼ば……
……。
ばんっ!
部屋の扉が大きな音を立てて開かれた。
「貴女たち! 隠れて見ていたら、いったいどれだけ同じことを繰り返せば気が済むの!」
そこにはアーネ姫にそっくりな若い女性が、腰に両手を当てて部屋の中を鋭い目で睨んでいた。
アーネ姫に続いて突入してきたこの女性、一体何者なのか!
そしてキャナリーは呪文を唱えることができるのか?
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