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ドングリ魔法はまだ飛べない ~でも、3センチなら飛べるもん!~  作者: 大沙かんな
第三章 出会い篇 (一年生前期)

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16.ローブを染めてみよう!

~~中央学園新聞~~

《驚愕! 飛んだ?学園長の髪!》


 学園長の髪には秘密がある。その調査に乗り出した新聞部は、ついに決定的な瞬間を押さえた。それは……


《運勢》

 火 ガンガン行こう

 水 友情を大事に

 土 たまには休憩も必要

 風 忍耐が大切、焦るな


~~~~~~~~~~



 春の日差しはますます強くなり、あれだけ見ごたえのあった白い桜の花も散って、みずみずしい緑の葉をいっぱいに広げている。


 その代わりに藤だろうか、垂れ下がるような紫の花があちこちで咲き誇っている。


 キャナリーが日課の朝の散歩、というか森の中で駆けずり回って戻ってくると、寮の食堂はもう多くの学園生で賑わっていた。


「みんなやっぱり染めてるんだ~」

「色がいっぱいモモ!」


 初日あたりはキャナリーと同じ新入生たちが、お揃いの生成りのローブ姿で食事をとっていたけれど、その姿は日を追うごとにどんどん減っていき、今ではもう半分かそれ以下になっている。


 こうしてあらためて見てみると、今では生成りの代わりに、赤や青、それに黄色のローブが、まるでお花畑のように食堂の一角をあでやかに埋めていた。



 食事を済ませて、一人教室に向かう。まだ注目されている感じはちょっと残っているけれど、指をさされたり、ひそひそ話されたりするほどではない。


 しゃべる精霊リリスのうわさで、一時は少し大騒ぎになりかけていたけれど、今ではかなり落ち着いてきていた。


「……みんな、おはよう」

「おお、キャナリー、おはよう!」


 いつものように控えめな声であいさつすると、これまたいつものように、アーシュラが大声であいさつを返してくる。


「ん? ちょっと元気がないな、どうした?」

「いや~その、ローブがね。染めたいな、と」


 キャナリーは自分の生成りのローブをちょっと摘まんでみせる。


 アーシュラも生成りのままだけど、あまり気にしていないのだろうか。


「ああ、それか。私もこの体に流れる血潮のように、真っ赤に染め上げてみたいが、なにしろお金がない!」

「そうだよね~、お金がないんだよね」


 たしかアーシュラもキャナリーと同じく男爵家で、山の中の育ちだと言ってたし、生活も似たようなものだっただろう。


 アーネ姫が相談に乗ると言ってくれていたけれど、お金のかかる話ではあるし、キャナリーにしてみれば、ちょっと打ち明けにくかった。


「実家ならまだ何とかなるかも知れんが、ここ王都ではどうにもならん」

「ふえ~、私のところだと、おうちに帰っても厳しそうだよ……」


 もしかしたら、同じ山育ちでも、内情は全然違うのかもしれない。



 二人でそんな話をしていると、ショミンダも教室に入ってきた。


 その姿が、なんだか……とっても青い!


 昨日まで二人と同じく生成りのローブを着ていたはずなのに、今日のショミンダは深く青いローブに着替えている。


「うわわ! ショミンダ、それいったいどうしたの!」

「綺麗な青だな。高かったんじゃないのか?」

「ん~、自分で染めたから、お金はかかっていませんよ。なんだったら二人も染めてみますか?」


「えええ~~! 染めるのって、自分でできるの?」

「私の場合、小さいころから遊びで、魚釣りの糸をヤグルマギクで青く染めていましたから……青なら得意ですよ!」


 魚を……釣り? 石でガッチーンってやって捕るんじゃなくて?


 ち、ちがった、今は魚じゃない、ローブの話だ。


「青だけか? 赤は! 赤は駄目か!」

「赤は……紅葉で染めたことなら……」


「紅葉か……秋まで待つしかないか……」

「今ならヒナゲシの赤い花が咲いていますし、やってみても良いかもしれませんね」


「ショミンダ、緑は? 緑はどうすれば!」

「ん~~~、緑、緑……。その辺に生えてる雑草で良いのでは……」


 ざ、雑草……。


「緑色の濃い葉っぱなら、きれいになるんじゃないか?」

「試してみる価値はありそうですね。どうなるか全くわかりませんけれど」


 アーシュラとショミンダ、他人事だと思って、言っていることがかなり適当だ。


「もう一着、着替えのローブも染めたいですし、お二人も一緒にやってみますか?」

「もちろんっ!」

「や、やる~っ!」


 こうしてショミンダをリーダーに、次の週末は三人でローブの染色に挑戦することになった。



 準備……といっても、そうたいした物はない。簡単に言うと、食堂の調理場の鍋を借りて、薪の残りかすというか灰、それを色付きの花と一緒に煮て、その煮汁に染めたい布を漬けるだけだ。


「一番大切なのは花ですね。たくさん集めないと……といっても、青いヤグルマギクも赤いヒナゲシもいっぱい咲いてますし、適当に摘めば大丈夫です。雑草は適当にそのへんで」

「やっぱり緑だけ、いいかげん!」



 王都の町中では、さすがに花を摘むのは難しいけれど、学園の森を抜けた向こうには花が咲き乱れる草原がある。もちろんそこには雑草もある。


 よし、ここは栗の木だ。栗の木ならば、栗きんとんの力できっとなんとかしてくれるはず!


 よく分からない期待をいっぱい込めて、キャナリーは背中にかごを背負うと、草原に向かう二人とは別れて森の中へと突入していく。


「はっぱ、ドングリの王様の木からとるモモ?」

「栗の木にしようかと思ったんだけど、どうしよう」


 ドングリの王様の木となると、葉っぱが生えているのは、キャナリーだと手の届かない高いところになる。


 そこはリリスに手伝ってもらえばなんとかなる……かな。でも勝手にむしっちゃっていいんだろうか。


「行ってみてから考えよっか?」

「それがいいモモ!」


 こんなことを言い合っていたけど、どうせ考えるより先に行動するに決まっている二人であった。



 ドングリの王様の木、あの日からほぼ毎日のようにあいさつに行っているけれど、あの時みたいな何かの予感がしたのはあの日だけだ。


 今日もこうしてやって来たけれど、特に何か特別なものを感じることはない。たしかに大きいな、とは思うけれど、ただそれだけだ。


「ねえ、リリス、ドングリの王様は本当に精霊じゃないの?」

「違うモモ。でもすごくおじいさんだから、普通のドングリの木じゃないモモ」


 もしかしたら精霊になりかけとか、神さまになりかけとか、そういうことなのかもしれない。


「やっぱり他の栗の木にしようか?」

「……王様、寂しがるモモよ?」


 よくわからないけど、リリスが言うならそうなのかも。


「王様、少しだけ葉っぱもらうね?」


 少しあいさつして、リリスに上から葉っぱを落としてもらう。


 それでもドングリの王様の木は、風に揺れることもなく、ただそこに静かに立っているだけだった。



 緑色の濃い葉っぱをしっかり集めて、キャナリーはアーシュラやショミンダと合流した。彼女たちのかごには赤い花と青い花がいっぱい入っている。


「それじゃあ、私が最初にやってみますね」


 ショミンダは調理場から借りてきた銅の鍋に灰と青い花を入れ、沸騰させないように煮詰めていく。


「青というより、黒という感じだな」

「そう見えるだけですよ。すぐに青くなります」


 桶に入れたローブに、上から丁寧にその黒い液体をかけていくと、ローブが青く変わった。


「こうして漬けて乾かすと、ちゃんと青くなるんですよ? 何回か漬ければ、濃い色になります」


 ショミンダは桶の中を何度もかき混ぜている。そうすることで、色が濃いところと薄いところのムラができにくくなるそうだ。


「あとはしばらく漬けておけば出来上がりです」



「次は私の番だな!」


 アーシュラも同じように、赤い花の汁を煮出していく。そしてローブにその汁をかけると……。


「……赤というよりも、なんか茶色なんだが……」

「おかしいですね、なんででしょうか……」


「お鍋の色がでてきちゃったのかも……」

「ドングリの色モモ! 素敵モモ!」


 どうせ他人事だ。キャナリーもリリスも適当なことを言っていた。



「次は私!」


 なんといってもドングリの王様の葉っぱ。きっとすごいことになるに違いない。


 二人と同じように煮出した汁をローブにかけると……


「何これ? 枯れ葉? なんで~! え~、なんで~!」


 ちょっと緑がかっている気がするけれど、どちらかというと灰色っぽい茶色みたいな変な色になっていた。


「煮てるうちに葉っぱが枯れたのか」

「枯れ葉とは、シブいです……」

「ドングリの帽子みたいな色モモ! こっちも素敵モモ!」


 赤や緑の素敵なローブを夢見たキャナリーとアーシュラの週末は、こうして無残にもドングリな結果に終わったのだった。


 やっぱりドングリの王様の葉っぱは、採るべきじゃ無かったのかもしれない。



「プププッ、ドングリ・コンビね! 調べたところ、赤と緑はちょっとコツがあるのよ」


 ジャネによると、赤の場合は銅鍋じゃなくて土鍋で煮出すと良いらしい。


 緑は銅鍋でいいけれど、葉っぱじゃなくて、青のあとで黄色と、二回に分けて染めると上手くいくみたいだ。


 ドングリの王様、ただのむしられ損である。


 しかしこの情報のおかげで、翌週には二人はドングリ・ローブを上から染め直し、アーシュラは暗い赤、キャナリーは暗い緑のローブを手に入れることができたわけだ。



「ショミンダの、まるで北海の荒波みたいな深い青には程遠いけどな」


「その赤もかっこいいよ? これから燃え上がる火種みたいで!」

「そ、そうか?」


 キャナリーの指摘に、アーシュラは嬉しそうな顔を覗かせる。


「そういえばキャナリーの緑も、深い森の色、と言えなくもないですね」

「えへへ! 下地に王様のドングリも仕込んであるもんね!」


 実際はただのドングリのヘタの色。うまく格好よく言ったものだ。


 それでも三人は充分に満足して、お互いのローブを褒め合うのだった。



 さらにその翌週、話を聞いた生成りローブ軍団が一斉に押しかけて、草原の花が消えてなくなったという。


 ドングリの王様、ただのむしられ損である。


 しかしこの情報のおかげで、翌週には二人はドングリ・ローブを上から染め直し、アーシュラは暗い赤、キャナリーは暗い緑のローブを手に入れることができたのであった。


 さらにその翌週、話を聞いた生成りローブ軍団が一斉に押しかけて、草原の花が消えてなくなったという。


次回から新章!


キャナリー頑張れ!と応援して下さる皆さま、是非とも評価をお願いします!


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