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VTuberをやっている妹のパソコンを勝手に使ったら、配信モードになっていて、視聴者からオルタ化と言われ、私もVTuberデビュー!?  作者: 赤城ハル
第2章

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第34話 合宿4日目

「疲れた」


 私はソファに力無く座った。

 他の皆も同じでクタクタといった感じ。


 皆、初のフェス鑑賞だったため、タイムスケジュール、水分補給や体力等の調整が上手く出来なかったのだ。そのせいで終わった頃にはクタクタ。


 さらに途中、強めの地震があったことも疲労の原因に含まれる。


「ここにスーパーで買ったものを置いておくのでご自由に」


 福原さんがエコバッグをテーブルの上に置く。


「私は疲れたのでお先に寝ます」


 この中で1番体力が残ってそうだと思ってたけど、福原さんでも初フェスはきつかったようだ。


「お風呂は?」


 ハルコさんがリビングを出ようとする福原さんに聞く。


「朝にシャワー浴びます」


 そして福原さんはリビングを出て行き、後には階段を上がる音、続いてドアを開ける音が聞こえた。


「一応、なんか食べよう」


 海さんがエコバッグを漁り物色する。


 中には菓子パンやおにぎり、カップラーメン、冷凍食品があるらしい。

 らしいと言うのも私はスーパーに行っていない。福原さんと照さんが帰宅中にスーパーで買い物をした。


 私は富士フェスでクタクタで車を降りて、スーパーで買い物をする余力はなかった。そしてそれは私だけでなく他の皆もクタクタであった。


「ねえ、冷凍食品は冷蔵庫に入れといた方が良いんじゃない?」

「そうだね。入れといたら?」

「ハルコ、入れといて」

「なんでよ」

「ハルコが1番近いし」

「近いからなんだよ」


 ハルコさんはダイニング側にいて、椅子に座り、ダイニングテーブルで頬杖をついている。


「あの、私が入れてきます」

「千鶴ちゃん、ありがとう」

「いえいえ、喉渇いてたので」

「私もビール飲も」

「ハルコ、結局動くんかい!」

「うるせー。お前の分は持ってこないぞ」

「ごめんごめん。私の分もお願ーい」

「照達は?」

「飲む」


 私は佳奈の分の缶ジュースを、ハルコさんは照さん達の分の缶ビールを持ってリビングに戻ってきた。


 リビングでは照さん達がポテトチップスをパーティー開けをしていて待っていた。


 飲み物を配り終えて、皆はプルタブを開ける。


「ではフェスお疲れ様でーす」


 照さんが缶ビールを掲げる。


「いやいや、私達参加ではなくて観に行った側だから」

「もう! 葵、細かい! こういうのはノリよ。ほら皆も掲げて!」

「はいはい」

「では気を乗り直して、かんぱーい!」

『かんぱーい』


 そして皆はぐいぐいと飲み始める。


「ぷっ、ふぁ〜、染みるぅ〜」

「照、年寄り臭いぞ」

「ハルコにだけ言われたくないわ」

「なにを!」

「まあまあ、二人とも。今日は疲れたんだから、これ以上疲れさせないでよ」


 葵さんが仲裁に入る。そしてポテトチップスを一つ頬張る。


「今日はさすがに疲れましたね」

「本当だね。千鶴はフェス好きだから色々知ってると思ってたよ」

「フェス好きではありませんよ。フェスに行きたいだけです」

「で、念願のフェスに行けて感想は?」

「いえいえ、行きたいフェスは諏訪音楽フェスですよ」

「そうだったね。それで諏訪音楽フェスのチケットを手に入れるためにライブに出るんだよね」

「まだ決まったわけではないんです」

「そうなの?」

「合宿後にテストがあって、その結果次第なんですよ」

「歌は何なの? オリジナル? カバー?」


 海さんが聞く。


「カバーです。五浦宇宙の『スーパーカー』です」

「あの曲? 難しくない?」

「まあ難しいですね」

「自信のほどは?」

「う〜ん」

「先生は?」

「良い感じだと……言ってましたかね」

「あれ? ダンスは?」


 照さんが思い出したかのように聞く。


「それは佳奈が」

「え? 私なの?」

「そりゃあ、そうでしょうよ。私、踊れないし」

「いやいや、あの曲はダンスきついよ?」

「頑張れ」

「うわぁー。どうかお姉ちゃんが落ちますように」


  ◯


「そういえばみはり先輩が参加してたのは意外だったわ」


 そう言って葵さんは缶ビールを飲む。ちなみに3本目。


「Vtuberでも出られるんですね」


 星空みはりさんはフェスの観客ではなく、出演者としての参加。勿論、生身で出ることはなく、スクリーンでの参加。


「すごいですよね」

「そうだね。さすがは0期生」

「あれって、本人はどこで歌っているのですか? もしかして都内からの配信映像とか?」

「いや、専用の撮影ブースがあって、そこからの映像だよ」

「それじゃあ、星空みはりさんもここに来てるってことですか?」

「そうかもね」

「会ったことあります?」

「私はないや。皆は?」


 葵さんは皆に聞く。

 皆も「ない」と首を横に振る。


「どんな人なんだろう?」

「さあ? 0期生だから三十路とか?」


 ハルコさんが答える。


「違うよ。現役大学生らしいよ。あっ、これはここだけの話ね」


 と海さんが言う。


「ソースは?」

「一期生」

「そっか。それだと……一年目の時は高校生?」

「そうじゃない」

「現役大学生で歌も上手いとかどんな人なんだろう」

「ペイベックス所属のアーティストでしょ」

「う〜ん。でも、あの歌声のアーティストは知らないな」

「声優とか? 佳奈は何か知ってる?」


 海さんが佳奈に聞く。


「知らない」


 佳奈は即答した。


「じゃあモデル課とか? 葵は知ってる?」

「ううん。知らない。でもニパ主出身という噂を聞いたことあるけど」

「葵さん、ニパ主って何です?」

「ニパニパ動画の配信者のことだよ」

「そういえば前世がニパ主のペーメンが多いらしいわね」


 とハルコさんが言う。


「ま、いつかは私達もフェスに参加したいね。そうよ思わない、照?」

「……」

「照?」

「うん。頑張りゅ」

「駄目だ。潰れとる」


 照さんは腕枕して目を瞑っている。


「そろそろお開きにしましょうか」

「そうですね」


  ◯


「電灯消すよ」

「うん」


 私は電灯を消してベッドに入る。


「ねえ、さっきの星空みはりさんの件だけど、何か知ってるの?」

「なんで?」


 暗闇から佳奈の声が聞こえる。その声色には驚きと焦りが含まれている。


「なんか知ってそうだったから」

「……べ、別に何も知らないよ」

「そう」


(嘘が下手だな)

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