第42話 心配【瀬戸真里亞】
先に言っておく、私はストーカーではない。もう一度言う。私はストーカーではない。そして変態でもない。
ただのファンだ。普通のファンだ。
赤羽メメのファンで、最近メメちゃんの様子がおかしいので心配しているだけ。
だから私は宮下さんのお家近くにいてもおかしはない。
……おかしくはない。他人には言えないが。
夜ゆえ危険ではあるがもしものためにスタンガンをポケットに。そして首にはホイッスルを下げている。
まあ、住宅街だし変質者もいないだろうし、大声を上げれば問題ない。
もちろん、ペイベックス上半期イベント・ハリカー大会もちゃんと見ている。
この分厚い動画視聴眼鏡を使って。名前の通り、レンズに動画が写る眼鏡で、一応周りも見えるように動画は左側だけに映像を流して見ている。
音はワイヤレスイヤホンを使って聴いている。
「ちょっとそこの君、こんな時間にここで何をしているの?」
メガネを外すと自転車に乗った警察官がいた。
「友達の準備を待っているんです」
と外行の笑顔で嘘をつき、私は宮下さんのお家を指す。
「そうですか。若い女性が1人だと危険ですからね」
「はい。気をつけます」
警察官は「それでは」と言い、自転車を漕いで去っていく。
やばいなこれだとここに長居はできなさそうだ。
◯
ハリカー大会をはらはらしながら見ていたが、メメちゃんがコメントに対して腹を立ててブチ切れ、家を飛び出すということが発生。
コメントに対する怒りには私も同意だ。
本当に自分勝手な奴らだ。先に自分達が間違っていたことを認めず、そして謝罪することもなく、次に新たなやっかみを提示して喚く。本当に腹立たしい。
そして宮下さんのお家から1人の少女が駆け出してきた。
(あの子がメメちゃんだ)
私はすぐにスマホのメッセージで宮下さんに私がメメちゃんを追いかけて連れ戻す旨を伝えた。
私はメガネを外してメメちゃんを追いかける。
(で、でも、何て声をかければ?)
こんな時に不謹慎だが私は推しとの邂逅にドキドキしていた。




