第120話 グラフリ8日目『中央銀行襲撃・下』
私とゆるるはルーフバルコニーから戦闘車両が車道に現れてはロケットランチャーを使って撃破していく。
そんな時にバタバタという音を聞いて、空を見上げるとヘリコプターが近づいてきていた。
「上空にヘリコプター!? あれも敵ですかね?」
「メテオがヘリコプターも来るって言ってたけど……あっ! ロープが!」
地下鉄出入り口付近の上空でヘリコプターの側面スライドドアが開き、ロープに巻かれた人が地上へと降りようとしている。その背中にはSWATの文字。
「なんでわざわざロープで降りるのよ!」
ゆるるがツッコミながらロケットランチャーの砲弾をぶっ放す。
砲弾が命中し、ヘリコプターは大破。ロープで降りようとするSWAT隊員と共に地上へと落ちて爆破。
それを見たゆるるが溜め息交じりに言う。
「バカな人ね」
それからもヘリコプターが何台もやって来た。
「私は装甲車両を狙うからオルタはヘリコプターをお願い」
「了解」
役割を分担して私達はSWATを攻撃していく。
ヘリコプターは高速でやって来ても、地下鉄出入り口に近づくとスピードを落とすので狙いやすかった。それにロープでSWAT隊員を降ろすので空中停止状態になる。まるで当ててくれと言っているようなものだ。
「ああ!」
「どうしたのゆるる?」
私は振り向かずにヘリコプターを攻撃しながら聞く。
「パトカーが一台、通過しちゃったわ」
打ち損ねたパトカーが一台、地下鉄出入り口へと向かってしまった。
「まあ、一台くらいいいのでは? 地下で撃退するグループもいるんだし」
地上より地下で待機しているグループが多い。一台くらいは通過させても問題はないと思う。
「そうね。時には撮れ高も必要よね」
(撮れ高か)
私は心の内で苦笑した。
「そういえば」
私はふと気になったことがあった。
「どうしたのオルタ?」
「戦闘車両って、どうやって地下に行くんでしょうか?」
「ん〜……そのまま?」
「あの大きさは入れませんよ」
戦闘車両は大きい。パトカーでも無理なのに地下鉄の出入り口から入れるとは考えにくい。
「SWAT隊員が降りて、地下へ行くんじゃないかしら?」
「なるほど」
けど、それならどうしてわざわざ戦闘車両に乗ってやって来るのか?
まあ、ヘリコプターでやって来て、ロープで降りようとするくらいだもんね。深く考えてはダメかな。
そして何台ものヘリコプターを撃墜していると変わったヘリコプターがやって来た。
「なんか変わったヘリコプターが来ましたよ」
今までのヘリコプターとは形が違う。
翼かな? 下に何かあるな?
「丸い……なんだろう?」
ヘリコプターが遠いのでよく見えなかった。
それに正面を向いているので。
「ん? 正面?」
今までは地下鉄出入り口に向かうヘリコプターばかりで側面を見せていた。
それが今回はこちらを向いている。
「オルタ、あれは戦闘ヘリよ!」
ゆるるの声と同時に戦闘ヘリの翼から丸い何かが放たれた。
そう理解した時、私とゆるるがいるルーフバルコニーは爆発した。
「ぬわっ!」、「ぎゃあ!」
それは翼の下にあったのはミサイルだった。
ミサイルはルーフバルコニーの少し下に当たったため直撃ではなかった。
けど、爆発に巻き込まれて私達はダメージを負った。
急いで私達は体勢を整えて、戦闘ヘリをロケットランチャーで攻撃。
二発の砲弾が戦闘ヘリ目掛けて飛ぶ。
ちょうど向こうもミサイルを撃ってきたため、一発は互いがぶつかり爆発。だけど残りの一発は戦闘ヘリに直撃。黒い煙が立ち込める。
「やった?」
「ダメ。まだ生きてる。オルタ、もっと攻撃するわよ!」
ゆるるがもう一発を撃とうとすると煙の中から無数の何かが放たれた。
ダダダダダダッ
それは重機関銃による攻撃だった。
床や壁が砕けていく。
「わわわっ!」
私達はその場から慌てて逃げる。
戦闘ヘリは私達の上空を越えるとビルの向こうへと消えた。
「いなくなった?」
「違う。旋回中よ。また来る!」
戦闘ヘリは大きく左旋回で再び私達の正面にやって来る。
「おいでなすったわ!」
「喰らえ!」
私達はロケットランチャーで戦闘ヘリを攻撃。
次は向こうも二発同時に放ったため、互いの攻撃は相殺された。
私達はすぐに砲弾をセットして放つ。
戦闘ヘリの重機関銃により、一発が爆発したが、残りのもう一発は見事ヒットした。
「チャンスよ! オルタ、どんどん撃つわよ!」
「ごめん。もう砲弾がない。スナイパーライフルで応戦するわ」
戦闘ヘリがよろけている今、私達集中攻撃をする。
ゆるるはロケットランチャー、私はスナイパーライフルで戦闘ヘリを狙い撃つ。
そして戦闘ヘリはあちこちを破裂させて地上へと落下して最後は轟音を立てて爆発した。
「「やった!」」
戦闘が終わり、私達は歓喜した。
今までは地下鉄出入り口に向かう戦闘車両やヘリコプターを狙い撃つだけだったから容易かったけど、今回はこちらも狙い撃ちされた。
「でも次、来たらどうします? 私、もうロケットランチャーの砲弾ありませんよ」
「私はまだまだあるから譲るよ」
「ありがとうございます」
ゆるるからロケットランチャーの砲弾を譲り受ける。
「ボートレースで得た配当金のおかげね。ん? 待ってオルタ、大変よ!」
「どうしたんです? また戦闘ヘリが?」
「違う。戦闘ヘリばかりに気を取られていたから地上の戦闘車両とパトカーのことを忘れていたわ」
「えっ!?」
私は車道を見る。
そこには四車線の車道を通過している戦闘車両とパトカーがいた。
きっと私達が戦闘ヘリと戦っていた時も通過していたのかもしれない。
私達は急いで車道を通過しようとする戦闘車両とパトカーをロケットランチャーで狙う。
◯
『こちらメテオ。地下ポイント5125に到着。まずは地下グループの皆に中央銀行から得た金品を分配する。地上グループはもう少しだけ待って』
その全体通話の約10分後に地上グループに連絡がきた。
『地上グループは地下鉄出入り口に来て』
私達は攻撃をやめて、地下鉄出入り口へ向かう。
地下鉄出入り口にメテオとサラサがいて、他のメンバーは地上グループが金品を受け取っている間、周囲のSWATを撃退してくれていた。
「これで全員に渡ったね」
私達地上グループは頷いた。
それを確かめたメテオは次に全体通話を始めた。
『これからは各々好きなように逃亡してね。前に説明したように中央銀行1キロ圏内をNPCのSWATがバリケードで道を封鎖しているから。そこを突破するとそこから先はポリスチームがパワースーツを着て、私達を追いかけてくるから気をつけてね。基本パワースーツのポリスには敵わないと考えて行動して。かたまるよりばらばらで行動する方が良いから。それでは私の通話はこれで最後となります。皆、ご武運を。最後までグラフリを楽しみましょう』




