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VTuberをやっている妹のパソコンを勝手に使ったら、配信モードになっていて、視聴者からオルタ化と言われ、私もVTuberデビュー!?  作者: 赤城ハル
第4章

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第111話 グラフリ7日目『フロアボス』

 鍵のかかったドアを開けるとそこにはくだり階段があった。


「このフロアは攻略ということね」


 私は下り階段へと足を踏み始める。


「これがあといくつも……」


 ソレイユが気が遠いなという声を出す。


「メテオがラスボスはみはり先輩と言ってたから……あと4つ?」


 地下5階にいるとメテオは言っていた。


「えー! 4つも?」

「頑張ろう!」

「けど、本当にそうなのかな?」


 乱菊が疑問を投げる。


「え?」

「みはりがいるのは地下5階」

「だから4つ……」

「いつここが地下1階だと認識した?」

「「はっ!?」」


 地下1階なら階段を下りている。

 でもここまで私達は階段を下りていない。

 つまりここはまだ地上1階。


「ごめん。これはあくまで私のカウントということ。もしかしたら地下1階としてカウントしているのかも」

「いや、でもその可能性も捨て切れませんよね」

「ここから地下1階か。まじかー」


 さっそく根を上げ始めるソレイユ。ホラゲが苦手な彼女からしたらさっさと終わって欲しいイベントなのだろう。


「大丈夫。班分けした皆の最終目標もみはりだから。私達以外が先に到着している可能性もあるし。それにどこかのフロアで他の班と合流することあると思う」

「出来れば次のフロアで合流しますように」


 と、ソレイユは祈るが、次の階では他の班と合流することはなく、また新たなクリーチャーや謎解きで阿鼻叫喚するソレイユだった。


  ◯


 地下2階。


 鍵がかかったドアが開けるとそこは広いエリアで床は水が張っていた。だいたいくるぶし程度。


 そしてそのエリアの中央には。


「ふっふふー。ようやく来たな。まじで待ちわびたぞ。私がここの──」

「いやあ! 何!? キモい! 死ね!」


 ソレイユがクリーチャーを見つけると発砲した。


「ちょっと! 人がまだ喋ってるところでしょ?」


 クリーチャーは鶏の頭と巨大な人の体、4つのムキムキの腕、下はカニの脚。ここのフロアボスということだろう。


「聞けよ! ちょっと!」

「その声は詩子?」

「さすが同期! 分かってくれて助かるぅ」

「ソレイユ、ちょっと攻撃をやめて」

「お、オッケー」


 攻撃をやめるが銃口はクリーチャー化した詩子に向けられている。


「まさか詩子とはね。同期として処分してあげる」

「怖いこと言わないでよ!」

「ゲテモノが言う?」

「あんた達も十分怖いわよ。ゴスロリにアラビアン風に……え? 何? オルタのそれはライブ衣装?」

「はい。ライブ衣装でーす。いえーい」

「何が『いえーい』だ! そんなのがライフル持って攻撃してくるんだぞ。頭パンクするわ。こちとらグロテスクな化け物にされたんだぞ! ざけんな!」


 詩子がカニの脚をばたつかせる。


「で、詩子はここで何をしているの?」

「ええと、なんかイベントが始まったらクリーチャーにさせられて、そしてここのフロアボスに任命。ほんとに最悪だよ。なんかグラフリじゃないじゃん。世界観ぶっ壊れているよ」


 なんかいやいや感が滲み出てる。


「なら、倒せばいいわけね」

「ちょっと、気が早すぎ。せっかく私が待ってたんだから話くらいはしようよ。まじでさー」


 詩子達ポリスはクリーチャーにさせられて、こんな薄暗いところでずっと待たされていたのだろう。

 ちょっとは気の毒と感じる。


「話って何? 私達を油断して倒そうと?」

「そんなことしないよ。同期じゃん」

「カニの脚だから動きにくいんでしょうね」


 カニの脚だから横にしか動かないのか。


「そ、そんなことないよ。私はね、ただ、ずっとここにいたから、人が恋しいの。『会えな〜くて〜、会えな〜くて、苦しぃい〜、君を想うほど〜強くなるの〜』だよ」


 詩子が東野カナの名曲『会えなくて』を口ずさむ。


「おいおい、人の神ソングをそのナリで歌うなよ」


 私はライフルで詩子を発砲。


「いや! やめて! 暴力反対! ちょっと歌っただけじゃん。レクイエムかよ!」

「成仏したらイベントから解放されるんじゃない?」

「ちょっとオルタ、怖いよ!」

「とりあえず私達は下へ向かわないといけないんだけど?」


 乱菊が目的を言う。


「ええとね、それなら奥のドアを開けると階段があるから、それでいけるよ」

「鍵は?」

「私が持ってる」


 乱菊がライフルをトリガー引く。


「ちょ、ちょっとやめろ」

「倒さなないといけんないんでしょ?」

「そうだけどさー」


 私とソレイユもライフルで詩子を狙い撃つ。


「しゃねー。戦うしかないのかー!」


 詩子が吠え、暴れ始める。


「元がカニだけあって硬いのかな。全然ダメージを与えている感じがしない」


 頭は鶏で体は人なのでそこを狙えばいいと考えたのだけど、手応てごたえがない。


「そうね。私もさっきから目を狙っているけど、なぜか硬いわね」

「だろうな。さっきからお前だけ銃口が目なんだよ。怖えよ!」

「チカチカしない?」

「それは大丈夫」

「目眩しにもならないか」


 乱菊が残念そうに言う。


「えっ!? 私を心配してくれているんじゃない!?」

「…………」

「お前ー!」


 詩子がデカい腕を振り下ろす。


「おっと!」

「ちょこまかと!」


 詩子がカニの脚と腕を振り回す。

 カニの脚は意外と細長いため、ヒットして私達は吹き飛ばされる。


「ソレイユ、火炎放射器持ってるよね。それで攻撃して」


 乱菊がライフルから火炎放射器に武器を変えるよう命じる。


「オッケー」


 ソレイユは火炎放射器を装備して、噴出口を詩子に向け、火を放つ。


「ちょっと! カニは茹でるもので直焼きするものではないでしょ!」

「そうだっけ? エビとか焼くこともあるし、カニもあるんじゃない?」


 焼いたカニを食べたことはないけど、探せばどこかのご当地料理としてあるかもしれない。


「クソッ、火が邪魔で周りが見えない!」


 詩子が2本の腕で顔をガードする。


「普通なら特に問題はなかったけど、今回はVRだったのがネックだったようね」

「乱菊! 同期なのに! 少しは優しくしろよ!」


 けれど火炎放射器、ライフルでもダメージを与えているように思えない。

 弱点がどこにあるのか?


「オルタ! へそだ! へそが弱点!」


 詩子が両腕で顔をガードしてのけ反った時に、丸見えとなったヘソを乱菊が攻撃した。その際、手応えを感じたらしい。


「本当だ」


 へそめがけて狙い撃つとカンッカンッというはじくような音ではなく、ドスッドスッというめり込むような音だった。それに血が出るような演出もある。


「ガンガン狙うぞー!」

「腹の贅肉が弱点だったとはね」

「贅肉なんかねーし。これはアバターだし。現実の私はくびれのあるナイスバディだし!」


 詩子は逃げようとするが、乱菊が言っていた通り、カニの脚のため動きが難しいようだ。

 私達は左右へ逃げようとする詩子を追いかけて、へそを狙い撃ちする。


「やめーろー」


 腕は4つのため、詩子は残りの2本を振り回して私と乱菊を攻撃しようとするけど、火炎放射器で視界が塞がれているため、狙いがズレる。


  ◯


 時折、詩子の攻撃がかすったりもして大変だったけど、私達はとうとう詩子を倒した。


「これでやっと成仏できるね」


 光となって消えていく詩子に私は慈愛を込めて最後の言葉をかけてあげる。


「テメェら絶対許さないからな」

「……早く成仏して鍵を出せよ」

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