第88話 グラフリ3日目『ギャング抗争(下)』
「……さてと、それじゃあ、次に行こうか」
ギャング達を倒し終えて、ネネカが言う。
「次? タワーに向かうということ?」
マイが聞いた。
一応、私達Cチームの目標もギャングのリーダー・無二丸がいるタワーを目指すこととなっている。
「違う。この先に複合施設があるからまずそこに」
「複合施設?」
「まずタワーは周囲の工場に命令を与えたり、エネルギー管理、不審者の排除をするための中枢なの。そのタワーに入るには複合施設内から中に入らないといけないの」
「正面から入らないの?」
「もちろん、正面ゲートから入るという点もあるけど、そこは敵が多いし、強いからね」
「なるほど。私達はあくまでゆっくり進んでいうだけね」
「そういうこと。オルタもそれでいい?」
「はい。私はほぼ素人ですのでAチームの迷惑をかけないのであれば問題ありません」
「殊勝ね。ま、今回はメテオ達Aチームに任せましょう」
そして私達は複合施設へと向かった。
◯
「ここが複合施設?」
マイが複合施設を見て、疑問の声を出した。
けど、その気持ちは分かる。もしマイが言わなければ私が言っていただろう。それだけおかしかったのだ。
件の複合施設は小さい施設だった。それこそとある工場に併設されてもおかしくない事務所みたいな一階建ての低い建物だった。
しかもタワーと繋がっていない。
「ネネカ、場所間違ってない?」
「いいえ、マイ、ここで合ってる。見た目は事務所のような建物だけど中は違うの」
「違う?」
「地下があってね。タワーと繋がってるのはその部分」
「なるほど」
「さ、いくよ」
「「おー!」」
私達は複合施設の扉を開けて、中に入るとギャングがいた。
「うぉっ! いる!」
先頭のネネカがすぐに物陰に身を隠す。
私とマイもつられてすぐに身を低くするも、ギャング達に見つかり、攻撃を受ける。
「ああー、もうー! また戦闘なのー!」
マイは鬱陶しそうな声を出して、ライフルを発砲。
「仕方ないでしょ。ここはやつらのアジトなんだから」
そして一階にいるギャング達を私達は掃討した。
「思ったより、弱いですね」
意外とあっけなく倒したので私は驚いた。
一階にいた敵は6名。武装は5名がライフル。うち1人がサブマシンガン。
サブマシンガンを注意し、かつ先に倒せばあとは簡単だった。
「強いのはタワー内部でしょうね」
「なら、そこまでは戦闘があってもサクサク進めますかね?」
「どうかしら?」
「ほら、2人ともこっち!」
マイがエレベーターを見つけたらしく、手招きをする。
私達はエレベーターに乗り、地下1階に向かう。
「ドアが開いた瞬間、蜂の巣にされたりして」
マイが物騒なことを言う。
「かもね。こちらも構えてようか」
そしてエレベーターは地下1階に着く。
ドアが開き、私達はライフルの銃口を前に向ける。
が、何もなかった。
エレベーターを降りて、周囲を確認。
「敵はいないみたいね」
そう言ってネネカは息を吐いた。
「ここはなんでしょうかね?」
地下1階は何もない空間だった。
通路にしては広いし、かといって何もなく、工場でも倉庫でも詰め所でもない。
暗くて広い通路。
「まるで車のない駐車場ですね」
「そうね。広いだけね。天井にパイプが走っているけど、それが重要なのかな?」
「どうでもいいじゃん。敵がいないならさっさと進もうよ」
そう言って、マイは奥へと進んで行く。
「少しは警戒しなさい」
「平気、平気」
ネネカの声を無視してマイはどんどん前に進んで行く。
「まったく」
ネネカは呆れたように溜め息をつく。
「とりあえず私達も奥に進みましょう」
「そう──」
「ぬわっ!」
奥からマイの驚く声が聞こえた。
「どうしたの?」
「ネネカ、た、大変! デカいのがいる!」
「デカいの? 何?」
マイが駆け足で戻ってきた。そしてその背後には大きなクモがいた。
「く、クモ? 巨大な虫?」
「違うわ、オルタ。あれは本物のクモではない。あれはロボよ!」
よく見ると確かにそれはクモ型のロボだった。
「オルタは背後に回って、私は正面から撃つわ!」
「分かった」
「マイも横に! 柱の影に隠れて」
私は敵にバレない様に動き、背後を取る。
「こっちよ!」
マイが横へ跳んだ時、ネネカがライフルで巨大なクモ型ロボットを狙い撃つ。
クモ型ロボットはマイからネネカへとターゲットを変えて、猛スピードで迫る。
現在VRだから迫ってくる巨大なクモ型ロボットはさぞかし怖いだろう。
頑丈なのか。スピードが落ちない。
私とマイも柱の影からクモ型ロボットを攻撃。
クモ型ロボットは猛スピードのままネネカに突進。
微かに悲鳴が聞こえた。
そしてクモ型ロボットは止まることなく、壁に衝突。
壁にめり込み、脚をジタバタしている。
これは好機と私とマイは遠距離からライフルで攻撃。
銃弾の嵐を受けてもクモ型ロボットは壊れることがなかった。
そして壁から頭を出して、後退する。そしてUターンしてこちら側に振り向く。
私達は瞬時に柱で身を隠す。
マイはどうなったか?
突進前に回避できた?
それとも轢かれたか?
ここからでは距離があってわかりにくい。
見えるのは──崩れた壁の一部と壁近くに横たわる紫色の何か。
紫のそれはギャングのパーカーだろうか。
私はクモ型ロボットに見つからなように移動してネネカのもとに向かう。
「ネネカ、大丈夫?」
「オルタ、蘇生プリーズ」
「了解です」
私はアイテムを使い、ネネカを蘇生し始める。
円グラフが現れ、進行のパーセンテージが表示される。
1……2……3……。
ゆっくりと数値が上がっていく。
遠くで銃声音が耳に入った。
「オルタはマイの加勢に行って!」
「でも」
「大丈夫。一度蘇生アイテムを使ったら、離れても平気。だからオルタはマイのもとに行って」
「分かりました」
離れると蘇生は中断されることなく行われている。
どうやら本当に離れても平気らしい。
私はマイのもとに駆ける。
しかし、あのクモ型ロボットはどうやって倒すんだろうか。
武器はライフルと手榴弾。
ライフルで全然ダメージを与えられないのに手榴弾でも難しそうだ。
何かヒントはないだろうか。
私は周りを見渡すが、ここには何もない。あるのは柱と天井に走る無数のパイプ。
(パイプ)
私はパイプに向けてライフルのトリガを引く。
弾が当たり、プシュと小さい気体が漏れ出た。
(これって……ガス?)
私は何度もパイプを銃撃して、ガスを発生させる。
(よし。これなら)
そして私は巨大なクモ型ロボットのもとに駆ける。
銃声の音に向かうとマイがクモ型ロボットと戦闘をしていた。
クモ型ロボットが先の尖った脚でマイを狙う。マイはなんとかそれを避けながら、反撃をしている。
私は後ろからクモ型ロボットをライフルで連射。
「こっちだ! こっちに来な!」
次には私は手榴弾を投げる。
手榴弾はクモ型ロボットに当たらず、地面に落ちてコロコロと転がり、地面とクモ型ロボットの間に入った。
バンッ!
音が鳴り、煙が出る。
クモ型ロボットは八本の脚をガタガタと震わせた。
そしてゆっくりと八本の脚を使って振り返る。
私はライフルで威嚇して、「こっちだ!」と、声を出して逃げる。
クモ型ロボットは一度、前脚2本を上に挙げ、怒りのポーズを取る。その後、私へと突進してくる。
私は後ろから突進するクモ型ロボットを当たる寸前で横にローリングをして回避。
(うぐっ!)
ローリングは視界がぐるんと回るため、気分が悪くなる。
しかも今はVR中。視界の回転はリアル過ぎ。
なんとか回避しながら、パイプに穴を開けたところまで誘導する。
そして私は振り返り、クモ型ロボットが目的地まで来るのを待つ。
クモ型ロボットがガシガシと脚を使って、突進してくる様は恐怖しかなかった。
「食らえ!」
私は天井に手榴弾を投げる。
ドカン!
手榴弾とは違う大きな爆発が発生し、私は後ろへと飛ばされる。
「ぎゃあ!」
地面を転がり、しばらくして止まった。
視界がぐるぐるしたため、気分が悪くなる。
(VR……私に取って天敵かも)
吹き飛ばされた私はゆっくりと立ち上がる。
そして爆炎で燃え盛るクモ型ロボットを見る。脚は何本か無くなり、アイカメラもヒビが走っている。
「倒した?」
しかし、クモ型ロボットはゆっくりとだが、残りの脚を使って私に近づいてくる。
「嘘っ! まだ動くの?」
私はライフルでクモ型ロボットを攻撃。
どれだけ撃ってもクモ型ロボットは倒れることなく、ゆっくりと近づいてくる。
もうあんなにボロボロなのに。
半壊状態にも関わらず、執念のごとくゆっくりと近づいてくるのはもはやホラーだ。
「オルタ、お待たせ!」
マイがやって来て、後ろからクモ型ロボットを攻撃する。
「すごい! ここまでダメージを与えたの!」
次にネネカも現れて、3人でクモ型ロボットを攻撃。
それでもクモ型ロボットは前進する。
「なんでこれだけ撃っても倒れないのよ!」
マイが悲鳴交じりの声を上げる。
「なんか弱点はないの?」
ネネカが私に聞く。
もう一度、天井のパイプをライフルで撃って穴を開けるべきだろうか。
だが、吹き飛ばされたことにより、私のHPもやばい。
それに近い。
他にあいつが弱点となる場所はどこだろうか。
嫌がるような──。
「そうだ。地面!」
「地面?」
「あいつと地面の間に手榴弾を投げ入れたら、ガクガクと反応しました」
「よし!」
ネネカは手榴弾を転がして、地面とクモ型ロボットに間に入れる。
ボンッ。
手榴弾は爆発して、クモ型ロボットはガクガクと揺れた。
「マイ、オルタ! どんどんやるよ!」
「「おー!」」
◯
巨大クモ型ロボットを倒し終えて、私達は少し休憩することにした。
その間に私はアイテムでHPを回復。
「ねえ、一つ聞きたいのだけど、このクモ型ロボット、えらくボロボロだったけどどうやったの?」
ネネカが私に聞く。
「ああ、それは天井のパイプですよ」
私は天井を指す。
天井には縦横無尽にパイプが走っている。
「あれに穴を開けるとガスが出るんですよ。で、その下に奴を呼びつけて、手榴弾を上に投げたんです。そしたら大爆発で奴に大ダメージを与えたんです」
「なるほど」
「えー、ならさっきもそうしてくれたら良かったじゃない」
マイから苦情を受けた。
「いやいや、すごい爆発でしたから。私も大ダメージ。あの時、クモも近かったので、それだとこちらもダメージを食らうと思って、それでなしにしました」
「そうね。一度に皆が倒れるとやばいものね」
◯
休憩後、地下1階の奥へ進んでいた時、ガタガタという音と揺れを感じた。
「ん? 地震?」
「ちょっと違うような……上で何かあったのかしら?」
ネネカが天井を見上げて言う。
「他のチームが戦っているのかな?」
「でも……タワーにはとっくに入ってるはずだし……」
「ま、考えても分からないんだし。とっと先に進もー」
マイが明るく言う。
「そうね」
ネネカも同意して、先に進むことにした。
そして地下1階の奥に辿り着き、私達はエレベーターを見つけた。
「これでタワー内部に入るってことだよね?」
「そう。ここからが本番だよ」
マイの問いにネネカは頷く。
ネネカは呼び出しボタンを押す。するとすぐに扉が開き、私達はエレベーターの中に入る。
「あれ? 25階しか選べない」
地下1階と25階のボタンしかない。
「これもしかして最上階?」
「まっさかー」
「でも、25階しかないなら25階へ行くしかないわね」
ネネカが25階のボタンを押す。
そして扉が閉まり、エレベーターは上昇していく。
チンッと音が鳴り、扉が開く。
念の為に私達は側面に隠れていたが、何も起こらなかった。
「あれ? 何もない?」
扉の向こうは長い廊下があり、奥にドアが一つだけある。
床は大理石で、その上に絨毯がひかれている。壁もツルツルで奥のドアは金のプレート付き。
「なんか偉い人がいそうなフロアだね」
「オルタ、もしかしたら本当に最上階だったりして」
「まっさかー……とは言い難いよね、この状況だと」
マイもどこか緊張した声を出す。
とりあえず私達はドアの前に近づく。
「どうする? 一気に開けちゃう?」
「待って、マイ。どうせならここから撃っちゃわない?」
ネネカがドアに向けてライフルの銃口を向ける。
「よし。やろう!」
マイもライフルを構える。
それで私もライフルを構え、号令を待つ。
「よし。それじゃあ…………撃てぇ!」
私達は一斉にトリガーを引いて、銃弾を前方に向けて放つ。
ダダダダダダッ!
トリガーを引き続けて、銃弾の雨を前方に浴びせる。
「よし! もういいよ!」
ネネカの言葉に私とマイは攻撃を止める。
「さあ、中に入りましょう」
ネネカがドアを開けて、1番に入る。続いてマイ、そして私が。
中は社長室のような部屋で私達の銃弾により無惨な部屋と化していた。
ガラスのローテーブルは粉々。黒革のソファは破けて、白の塊に。社長の机も穴だらけ。
「人は……いないみたいね」
ネネカが部屋を見渡して言う。
「えー、無二丸いないのー?」
マイが敵ギャングのボスがいなくて残念がる。
「それじゃあ、無二丸はどこにいるんでしょうか?」
私はネネカに聞く。
「さあ? ここにいないなら別の階かな? ここが最上階っぽいから……あとは下の階かしら?」
私達は廊下に出て、エレベーターホールまで戻る。
そしてエレベーターホールでネネカが階段口を発見した。
「ここから下の階に下りれるわね」
そう言ってネネカが階段を下り始める。
◯
階段を下りて24階り散策するも誰もいなかった。
そして不思議なことに24階にはエレベーターがあった。調べると地下1階と25階を除き、1階から24階まで各フロアに止まるようになっている。
「どうして25階はなかったのかな?」
「ん〜、一気に最上階へ辿り着いて欲しくなかったんじゃない?」
「地下がないのは?」
「もしかしたら逃げるためのだったのかな?」
なるほど。一気に地下1階に逃げるためのものかな。
「ま、考えても分かんないわよ」
ネネカが次の階へ行きましょうと言う。
そして23階、22階へと移動した。
どの階ももぬけの殻。誰もいない。
「もしかしてここはタワーではない?」
マイの呟きにネネカは窓に向かう。
「いえ、ここがタワーよ。ここより他に高い建物はないわ」
私も窓から地上を見下げる。土煙が立っていたり、半壊した建物がいくつかある。
「なら、敵ギャングボスの無二丸はどこー? Aチームは?」
「そうね! Aチームに連絡しましょう」
ネネカは無線機を出してAチームに連絡を取り始めるが──。
「駄目。応答しない」
「Bチームは?」
次にネネカはBチームに連絡を取ろうとする。
『もしもしこちらサラサ、Bチーム。どうしたの?』
声の背後から銃声音が聞こえる。
戦闘中なのかな?
「こちらCチーム。タワーの22階にいるんだけどもぬけの殻。無二丸がどこにいるか知ってる?」
『無二丸なら今、目の前で暴れてる!』
「え? サラサ、今どこ?」
『地上だよ!』
「地上!? 無二丸はタワーにいるんじゃないの?」
『初めはタワーにいたけど、Aチームとの戦闘で無二丸が秘密兵器を出したの! Aチームは全滅。そして現在は私達Bチームが対応している』
「分かった。すぐに援護に向かうわ」
ネネカは通話を切り、私とマイに向かって、
「これから地上に下りるよ」
「「おー!」」
「しかし、まさかAチームがやられていたとわね」
私達はエレベーターで1階へと向かう。
◯
「うぉっ、これはなんとも……」
マイが呆気に取られた声を出す。
それも仕方ないだろう。
私も驚きで言葉が出ないのだから。
今、私達Cチームはエレベーターでタワー1階に降りた後、外に出ていた。
するとBチームが超巨大な機械の象と戦っていたのが目に入った。
超巨大な機械の象は高層ビル並の高さ。そして頭にはランプがあり、赤く点滅している。
その機械象は20メートル程の鼻を上げて大きな機械音を出す。
それがまるで本物の象みたいな鳴き声だった。
なんか世界観がぶっ壊れてない?
現実のアングラをモデルにした世界ではないの?
SFっぽくなったよ。
「こちらCチーム、地上着いた」
ネネカがBチームに連絡を取る。
『こちらサラサ、敵は見て分かるよね?』
「ええ。でかい象がいるわ。ブンブンと鼻を振り回して、周りの建物を破壊しているわ」
『鼻だけではないわ。目からビームを出すし、背中からは小型ミサイルが放たれるわ』
「もうめちゃくちゃだね。どうやって倒すの?」
『それが分かれば苦労はしないよー。とりあえず撃つだね。一箇所に集まっていると狙われるからバラバラになって攻撃』
「なるほど分かったわ。無二丸はあの中に?」
『……それは分からない。たぶん中にいると思うわ』
そして私達は別れて個々で超巨大な機械象を攻撃することにした。
私は建物の影に隠れて、後ろから機械象を狙い撃つ。
しかし、クモ型ロボットと同じでライフルの銃弾は全く手応えがなかった。
(狙う場所があるのかな?)
後ろで狙う場所といえば、尻尾かケツの穴くらいか。
(おっと!)
機械象が振り向いた!
「正面はやばいぞ」
私は急いで機械象の後ろに回り込もうと動く。
だが、敵の太く長い鼻が振り回されて、直撃は免れたものの建物の破片が当たり、私は転ぶ。
「いたたたっ」
私は立ち上がり、すぐに建物の影に隠れる。
そしてちらりと顔出して伺う。
「…………」
機械象と目が合ってます。
(って、おいおい、こっち向いてるじゃん)
私はすぐにその場を離れる。
背後から象の鳴き声が聞こえた。
大きな空を切るフルスイング音、そして建物が崩壊する音。
私は振り返らずに逃げる。
けれど相手はさらに小型ミサイルなどで追撃をしてくる。
雪崩のように建物は崩れて落ち、私は跳んだり、転んだりしながら私は逃げる。
そして次第に音が小さくなった。
(撒いた?)
私は振り返る。
後ろには瓦礫に覆われた地面。周囲に建物はなかった。
機械象の横顔が見える。
もうこっちには用がないようだ。
なぜだ?
敵からすると私は丸見えのはず。
なぜ狙わない。
機械象は私に尻を向けて別のターゲットを探し始める。
「何はともあれラッキーなのかな?」
私は近くの建物の側に寄って、HPを回復する。
「ん? ここは──」
近くの建物の正体はタワーだった。
ぐるぐると動き回っていたら、どうやらタワーに戻ってきたようだ。
「もしかしてタワーが近くにあったから狙わなかった?」
そういえば私達がタワー最上階にいた時には機械象はいたらしい。その時、タワーは倒されてなかったし、私が窓から周囲を見たときは外の被害は少なかった。まるで慎重に機械象が動いていたかのように。
「このタワー、あいつにとって大切なものなのかな?」
私はタワーを見上げる。
タワーの先には航空障害灯があり、赤く点滅している。
「あれ? あれって、夜に光るんだよね? 今、昼だけど……」
航空障害灯ではない?
なら、あれは一体?
というか、どこかで見た……ああ!
私は機械象を見る。機械象の頭にはランプがあり赤く点滅している。
あれが普通の点灯なら気づかなかったかもしれない。けど、不自然に点滅していたから引っかかっていた。
それが今、私にある推測を与えた。
私はタワーの中に入り、エレベーターで24階に。そして階段で25階へ駆け上がる。
奥の部屋に行き、中を物色。主に壁を念入りに調べる。
調べて続けて、戸棚が動かせると知り、私は戸棚をスライドさせる。
すると一枚のドアが現れた。
ドアを開けるとどうやら外に繋がっているらしい。
タワー側面に沿った狭い螺旋のような通路を進み続けて、私はタワーの航空障害灯の近くまで行き着いた。
そして航空障害灯の下には9面のモニターと机のような機械があり、金髪サイドテールの女の子がモニターを見ながら、機械を操作していた。
「イケイケ! オラッ! もっともっと鼻を振り回して蹂躙しな!」
やはりこの子があの巨大な機械象を遠隔で操っていたのだ。
彼女は私が近づいていることに気づいていないようだ。
私はライフルを構える。
「アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー」
そしてトリガーを引いた。
ダダダダダダッ。
銃口から弾丸が弾け飛ぶ。
「えっ! 誰? ぎゃあ! ちょっ! 不意打ちは駄目! やめて!」
私は泣き言を無視して撃ち続ける。
女の子だけではない。機械も私は銃撃で壊していく。
モニターは全面壊れ、机のような機械もボロボロにして黒い煙を出させた。
「撃った後で悪いんだけど、貴女が無二丸ね」
「そうですぅ〜。無二丸ですぅ〜」
「もしもし、こちらオルタ、無二丸撃破」
私はネネカに連絡する。
『マジか。機械象が止まったから何かと思ったら無二丸を倒したのか。あいつ、どこにいた?』
私は航空障害灯と象の頭にあるランプの点滅からある推測をしてタワーの屋上に向かい、無二丸を見つけ、撃破したことを説明した。
『なるほどね。遠隔か。よく推理したね』
「いやあ、たまたまです」
『サラサや他のVにも報告しておくよ』
「よろしくお願いします」
こうして敵対するギャングのボスを撃ち倒して、ギャング抗争は終焉を迎えた。




