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第27話 魔法少年マナカ・マグラ第11話【瀬戸真里亞】

 大学の昼食後、


「これ宮下さんから」


 私はコードの書かれた紙片を天野に向ける。


「え? 何?」

「ハリカーのコードよ。あんたが頼んだんでしょ」

「ああ。そうだった」


 特にどうでもよさそげに天野はコードが書かれた紙片を受け取る。


「私、写真撮るから待って」


 あらたがスマホを取り出し、写真を撮る。


「新もハリカー持ってるの?」

「持ってるよ。弟が買った」

「天野はハリカー経験あるの?」


 と私は天野に聞いたが、答えたのは新だった。


「めっちゃ強いよ。確か小学生の頃にハリカー全国大会で東京の次席代表だったんだよ。ね?」

「次席代表?」

「都内2位ってことよ。昔よ、昔」


 天野は話を切り上げようとしているのかバッグを持ち、席を立つ。


「えー。聞いてなーい」

「自慢することでもないでしょ」

「でも2位って、すごいじゃん。それって、いつの頃?」


 私も席を立ち、話を続けさせるため質問をする。


「小3の頃」


 天野は歩きつつ答える。


「へー。新はなんで知ってたの?」

「小中一緒だったし」

「そうだったの?」

「言ってなかった?」


 あれれ? と、新は小首を傾げる。


「聞いてない、聞いてない」


 つまり天野は小中は新と。高校は宮下さんと同じだったということか。


「で、全国大会はどうだったの?」


 私は天野に聞く。


「中止よ」

「中止?」

「前に話したでしょ? 色々とトラブルがあったって。それで全国大会は中止」


 確か負けた子が勝った相手に嫌がせとかをしていたという。


「へえ。それって……もしかして天野が……」

「違う!」


 天野が私に振り向き、語気を強めて否定する。


「そ、そうなんだ」

「そうよ」


 と言って天野はずかずかと前を歩く。


「確か、1位の子だよね」


 新が答える。


「その子に嫌がせが?」

「らしいよ。詳しくは知らないけどね」


 そこで私のスマホが鳴った。


 誰だろうと伺うと宮下さんかのメールだった。

 私はちょっと立ち止まり、メールを開いてみた。


『見つけた。天野さん、英数科にいたよ』


 そして卒アルから撮ったであろう画像も添付されていた。


「うわっ、全然違う」


 高校時代の天野は化粧気のない黒髪ストレートの少女。今のステレオタイプの遊んでる系女子大生とは全然違う。


「ん? どうしたのよ?」


 天野達も立ち止まり、私に振り向く。


「宮下さんからメールが来てたの」

「へえ」

「前にあんたが同じ高校だって話になってね。向こうは知らないって言うから、卒アルで……」

「え!? ちょっ、待ちなさい!」

「写真が送られてきたわ」


 私はスマホの画面を天野に見せる。画面には高校時代の天野の写真が載っている。


「やめて! バカ!」


 天野は私の手を叩き、スマホ画面を下に向けさせる。


「清楚系でもイケたんじゃない?」

「うっさい」

「てか英数科だったんだ。国公立進学派だったんだね」

「そうよ! もう黒歴史なんだか!」


 なぜ黒歴史なんだろうか? 英数科は頭の良いクラスらしい。むしろ誇れるべきでは?


 天野は私の疑問に勘付いたのか、


「国公立なんて難しいのよ。私の学校、そんなに偏差値よくないのよ。それなのに勉強、勉強ってさ、ほんとにやんなっちゃうわ」

「なるほどねー。それで勉強から解放されたあんたは大学デビューを」


 私は深く理解したようにうんうんと頷く。内心は笑ってるけどね。


「だーまーれー」


 天野は両耳を塞ぎ、いやいやする。


  ◯


 赤羽メメ・オルタの『魔法少年マナカマグラ』第11話の視聴配信が始まった。

 さて練習の成果は出ているのかな?


「みなさーん、こんにちはー。オルタでーす。今日は『魔法少年マナカ・マグラ』の第11話を見ようと思いまーす。コメントはネタバレ防止のため私からは見えないようになっています。スパチャお礼タイムはあとでメメが行いまーす」


 褐色肌と赤眼白髪の少女が手を振り、挨拶をする。


「いやー、それしても前回はモンスターの正体でびっくりしましたよね。まさか魔法少年の成れの果てがモンスターだったとは。ひどいよね。願いを叶えてもモンスターになるし、叶えなくても徐々に魂が澱んで魔法少年になるんだもん。ペコ丸は魔法少年をモンスターにさせて、それを魔法少年に狩らせて、ダークソウルを手に入れる。そしてその魔法少年はいずれモンスターになり、それをまた別の魔法少年が……の繰り返し。なんてマッチポンプなシステムなんだ。ペコ丸だけがダークソウルを手に入れてうはうは。このぺこ丸、まじで鬼畜クソ野郎じゃないか」


 う〜ん。ちょっと長いな。


 もう少し短めに……いや、これはそれだけ夢中になり興奮していると言えるのでセーフなのかな?


 そして『魔法少年マナカ・マグラ』第11話が始まった。


「あれ? ケンゴがメイン。ん? でも、メガネ。あれ? ケンゴって、メガネ着けてたっけ?」


 これは当時の私達も驚いたよね。「あれ? なんでメガネ?」って。


 そして教室のシーンで担任が転入生として東雲ケンゴを紹介する。


「あっ、転……ん? あれ? 時間がおかしくない?」


 そうそう。ここらへんで時間がおかしいって気づくのよね。もしかしてタイムリーパーでこれは1周目の記憶って。


 授業でケンゴは教師に問題の答えを述べよと当てられるも、答えられず。他にも病弱ゆえに体育も途中から見学。


「ケンゴは病弱で全然ダメダメなんだ。性格も陰キャっぽい」


 放課後になり、ケンゴはとぼとぼと歩き、自分の駄目さに自己嫌悪に陥っている。そんな時にケンゴはモンスターに狙われてしまった。


 急いで逃げるも病弱なケンゴは転んでしまい、立ち上がる気力もなく、諦めてしまう。


〈ま、いっか。どうせ俺が死んでも……。それに死んだ方がもう誰にも迷惑をかけることもないし〉


「あ! ここで諦めるの? やられるの?」


 しかし、そこに魔法少年マナカによってケンゴは助けられる。


「主人公、魔法少年になっとるぞー」


 そう。今まで契約をしなかった主人公が、この時間軸では契約をして魔法少年をやっているのだ。


「そしてケンゴも魔法少年になるのかな? あれ? やらない?」


 この時点ではまだケンゴは魔法少年にはならないのだ。


 そして【カナンの祝宴】という超大型モンスターがやってきてマナカ達は敗れる。

 その後、ケンゴはぺこ丸と契約して魔法少年になり、ポイントを貯め願いを叶える。ケンゴの願い。それはマナカを救うこと。


「え? タイムリープ!? まじで?」


 タイムリープしたケンゴはマナカを助けるためチームに入る。


 そして、とうとう【カナンの祝宴】を倒す。


「街はめちゃくちゃだけど。なんとか倒せたよ」


 だが、ここでマナカに異変が!


「え? あれ? なんかマナカが呻いているよ。苦しんでる? え? なんで? 黒いモヤが! ああ! モンスターになっちまったーーー!」


 しかもモンスター化したマナカは巨大で先のカノンの祝宴よりやばい。


「でっか! え!? どうするの? あれ? ケンゴが光出した。これって……」


 マナカがモンスターになったことにより、ケンゴの願いが自動で発動した。


 そしてまたもう一度やり直しに。


「え? 信じてくれない?」


 ケンゴが魔法少年の成れの果てがモンスターと教えても誰も耳を傾けてくれない。

 マナカもまた半信半疑な状態。


 その世界線ではショウヘイがモンスター化。

 そしてケンゴが言ってたことが本当だと知るとトキマサは発狂して魔法少年狩りを行う。


「怖え! パイセン怖え!」


 狂人と化したトキマサをマナカが倒し、そしてまた【カナンの祝宴】と対峙する。


 見事2人は【カナンの祝宴】倒すが、マナカの魂が澱んでしまい、黒いモヤが体から現れる。


〈頼む。俺を殺しくれ。俺がモンスターになる前に早く!〉

〈そ、そんな〉

〈俺はでかいモンスターになって災厄をもたらすんだろ?〉

〈で、でも〉

〈もし、また時間を繰り返すなら、どうか俺を魔法少年にならないようしてくれ。頼む〉


「え? 殺すの? え? まじで?」


 ケンゴは雄叫びを上げ、剣をマナカの胸に突き刺す。


「うっわー。すごいなーこれ」


 またタイムリープしたケンゴはマナカとペコ丸を会わせないようにするが、どうやってマナカは契約して魔法少年になってしまう。


 そして──。


〈諦めない。俺は絶対、マナカを救う〉


「うおー。カッケー。ケンゴ、やばいわー。主人公じゃん。実は裏でこんなことがあったとは」


  ◯


 配信終了後、宮下さんからメッセージが届いた。


『どう? 結構良かったかな?』

『う〜ん。及第点かな』

『きびしー』

『あ、でも、コメントもネットの反応も上々だよ』

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