第72話 グラフリ配役発表
3Dモーションを使った、配信が始まった。
「はーい、皆、こんばんわー。白狼閣リリィだよー」
白髪で狼のケモ耳を持つ女の子が挨拶をする。
「赤焔アメージャだよ」
続いて隣の赤髪でケモ耳の女の子が自己紹介をする。
2人共、ペイベックスの2期生VTuberである。仲が良く、コンビで配信をすることが多い。
「今日は大型コラボのグラフリについて説明するよ」
「グラフリってドロケイのやつだね」
「そう。正式名称はグランド・フリーダム。ポリス、ギャング、トリックスターが街中で暴れまくるというゲーム。それを今週の土曜日から来週の土曜日までの計8日間で執り行われるペイベックスの一大イベントだよ」
「8日間! それはすごいや!」
アメージャが両手を上げて、口を開ける。
『楽しみー』
『待ってたよー』
『一大イベント!』
コメント欄もグラフリの件で盛り上がっている。
「ワオ! これは楽しみです眠れなくなっちゃうよ!」
「アメージャ、リアクションが一昔前の通販番組みたいになってるよ」
「すごーい、この包丁、どんな物もスパスパ切れるぅー」
アメージャは包丁で何かを切っているジェスチャーをする。
『似てる』
『w』
「ボケるな。まじめにやれ!」
「いや、振ったからさ」
「オホン、気を取り直して。今日はそのグラフリ内での配役を発表したいと思いまーす。誰がどんな配役になるのか楽しみだね」
「てか、ライバー内では知れ渡っているよね」
「アメージャ! そこは初めてっぽく! 知らないフリ!」
「はいはい。ワー、ダレガナニヲヤルノカナー?」
アメージャがすごいカタコトの言葉を使う。
「……では、【ポリス】役から発表したいと思います。0期生から星空みはり、姫川ミウ」
『ええ!? みはりがポリス!?』
『悪徳警察官か?』
『不正でもするのか?』
『これは絶対観ないと!』
「1期生からは九条クエス。2期生からは花右京トビ、祭囃子ユーリ。3期生からはうたたね詩子、ハバネロみぃこ。4期生からは銀羊カロ、七草ユキノ、さち美、飛丸アオの4名。4期生は鍵穴カフス以外ポリスということですね。続いて5期生は有流間ヒスイ、黒狼ミカゲ。6期生は天狗丸セレンのみとなっております」
「ねえ、みはり先輩がポリスってまじなの? あの人って、どちらかというとさ──」
「それはどういう意味かなアメージャ君?」
白狼閣リリィが渋めの声で質問する。
「ペイベックスVTuberを牽引する大先輩なんだから取り締まる役をやっても問題はないはずだが?」
「きたねぇ、コイツ! バッシングを受けないようにしてる! お前だって本当は暴れ役のギャングか、言うことの聞かないトリッキーなトリックスターが合ってると思ってるだろ?」
「さあ? なんのことやら」
「ずるいぞー」
「さて、お次は【ギャング】役のペーメンを紹介するぞー。0期生から勝浦卍、桜町メテオ」
「その低い声で紹介するの? ギャングだから? あとメテオは順当だね」
「黙りなさい」
低いダンディな声でアメージャを叱るリリィ。
『ギャングボイスか?』
『お前が黒幕か?』
『メテオは順当』
『禿同』
『メテオがみはりと同じくポリスになったら善悪が逆転する』
「1期生からは星屑ミカエル、秋津川ネネカ、2期生からは完熟サラサ。3期生は夜闇乱菊。4期生は鍵穴カフス」
「少なくね? 2期生から4期生まで1人じゃん」
「5期生は松竹マイ、オルタ。6期生は猫泉ヤクモ」
「ちょっと待って。全員で何人だ? えっ!? 10人!? ポリスより少ねえぞ」
「フッフッフー」
「どうした? 赤ちゃんが産まれるのか?」
「それはヒッヒッフーだ! そうじゃなくて実はゲストがいるのだよ」
「ゲスト?」
「そうともとびきりのゲストさ」
リリィは腕を組んで答える。
『ゲスト?』
『誰?』
『まさか他の箱とコラボか?』
『男を入れるな!』
『ペイベックスって、男性VTuberいたよな?』
『虎王子ゼン?』
「実はキセキカナウと無二丸が飛び入り参加するのさ」
『キセキカナウ!?』
『四皇じゃねえか?』
『無二丸も!』
『ギャラいくらよ?』
『いいのか?』
『これは伝説になる』
「個人勢のお二人方を参加させて大丈夫なの?」
「今回は特例ということさ」
「すごーい」
「ただ残念なことに毎日というわけではないようなんだ」
「そうなんだ。いつ頃に参加?」
「それは配信を観てくれ」
「私は演者なんだけど」
「2人がいつどこで活躍するか楽しみにしてくれ」
リリィがリスナー側に向けてメッセージを送る。
『楽しみにしてるよ』
『絶対観るよ』
『これ以上のないキャスティングだ!』
「というわけで、最後は【トリックスター】役について紹介するよー」
リリィは声を可愛らしい女の子の声に戻して紹介を始める。
「0期生からは明日空姉妹」
「ちゃんとルナとソレイユって紹介してあげな」
「1期生からは月風ゆるる、山吹色モモネ。2期生からは私、白狼閣リリィと──」
「うちうち、アメージャだよー」
『2人でどんなお店開くのかな?』
『キター!』
『やはりトリックスターか』
「3期生からは雪柳ティファ、前田テルマ。5期生からは那須鷹フジ。6期生からは前園アキミ、三太夫パコとなっておりまーす」
「4期生は【トリックスター】役にはいないんだ」
「そうなんですよ。それと5期生の赤羽メメと6期生の音切コロンは高校生のため不参加です」
「このゲーム年齢制限あるもんね」
『高校生組か』
『大人になってからと』
「あと配信が深夜だもんね」
「オルタとか他に大学生のVはどうするの?」
「年齢は大丈夫です。ただ、学業のため切り上げが早いかもしれません」
「なるほどね」
『深夜配信後の学業はつらいよな』
『大学だから昼抜きとかしてないのかな?』
『代勉させよう』
『代わりに俺が出席しよう』
「さて、次は【トリックスター】について説明するよ。【トリックスター】は普段は街中でお店を経営して働いている人なんだけど、時折、犯罪行為をする役だよ。ギャングと手を組むこともあれば、独立して犯罪を行うこともある」
「私達はハンバーガーチェーンを経営するんだよ」
「そうそう。皆、ハンバーガー好きだよね?」
「美味しいから来てねー」
「病みつきになっちゃうから」
『病みつきw』
『絶対ヤクが入ってそう』
『リピート続出!』
「そして最後にとびきりの情報を発表したいと思いまーす」
「おお! なんだろう? あと一つ何かあるの?」
「それは今回のグラフリは普通のグラフリではなくVRなんです! つまりVRグラフリ。それが今回の大型コラボ企画の本性なんです!」
『ぶ、VRーー!』
『超やばない?』
『予算とかすごそう』
「ただ残念なことに全てがVRというわけではないんです」
「一部ってこと?」
「そうなんだよ。期間中にイベントがあって、一部イベント時にはVR可能となるんだ」
「イベントって何?」
「それは配信を見てのお楽しみさ」
「私、演者なんだけどなー」
「でも、どうして一部イベント時だけなの?」
「ペイベックスのスタッフ達がVRグラフリを試運転したら大勢のスタッフが吐いちゃったの」
『まあ、全部VRにすると8時間だもんな』
『スタッフの多大なる犠牲』
『乙』
「けれど、最後にはアンケートがあり、上位5つのVR配信は後にVRアーカイブ化!」
「VRアーカイブ化? 動画がVRになるってこと?」
「正確にはライバーと同じ視点……いえ視界を持つということです」
「それ需要ある?」
「ライバーになった気持ちになれるんだよ」
『ライバーと同じ視界か』
『何を見て、どう動いたのかが分かるんだね』
『そこそこ需要はあるんじゃない?』




