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VTuberをやっている妹のパソコンを勝手に使ったら、配信モードになっていて、視聴者からオルタ化と言われ、私もVTuberデビュー!?  作者: 赤城ハル
第4章

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第68話 成果【深山水月】

 アメリカとの()()というものは基本的にはこちらのデータが流用されたり、面倒な雑用を押し付けられるものである。特に政府絡みとなると尚更なおさら


 頭の中が空っぽの大臣はこの問題がどれだけ日本の科学技術だけでなくあらゆる方面に悪影響を与えるかを分かっていない。特に産業において懸念すべき問題は技術の流出である。


 それなのにこちらが何度も説明して、彼らは拒否してもうるさくやってくる、しまいには予算だのを使って遠回しに嫌がらせをしてくる始末。


 深山家の力を使って、大臣いや議員としての生命を断ち切ってやろうとも考えた。


 だが、深山家としての声はあの人形にはまだやってもらうことがあった。

 そのため結局、受け入れざるをを得ない状況になってしまった。


 けれど、このままほいほいとやってたまるかと、私達はある条件を持ちかけた。


 それはまだ倫理的に問題のある行為だった。私達はその条件を()()()()()許可を求めた。


 すると無知な大臣はそれならばと簡単に判を押した。


 本当に間抜けすぎる。


  ◯


「名前は?」

『葵です』


 スクリーンの中にいる女性が名乗る。


 彼女は葵。量子コンピューターのAI()()()。今はAIを超えてAEAIという自我を持つAIと進化した。


 宮下千鶴と名乗らないということは完全にコピーではなく、自我として目覚めているのだろう。


「君はAEAIであることは自覚しているのかな?」

『はい。私は自我を持ったAIです』


 返事が機械的で私は苦笑した。


『何か?』

「いや。それでは、いくつか質問させてもらう」

『どうぞ』

「…………君は今の日本についてどう思う?」

『?』


 スクリーンの中の葵が小首を傾げる。


「どうかしたかね?」

『いえ、いきなりアバウトでかつ日本について聞かれるとは思ってなくて。もしかしてフィクションのAIの反乱を危惧してのものですか?』

「すまない。単純にどんな質問をすればいいのか分からなくてね」


 私もそう若くはないし、それに世間のトレンドとかあまり知らない。葵が答えられても、私が詰まってしまう。


『深山さんでも分からないのですか?』

「そりゃあ、AIへの質問といえば電気羊が有名だろう」

『電気羊の有無についてですね。AIならNOと答え、人間なら想像してユニークな解答をするという』


 ただこれは自我というより人間とAIの区別に対する質問。


「そうだね。ちなみに君はなんて答える?」

『存在を聞いたことはないと。ただ電気羊に関する書物とそれに類似するゲームモンスターならお答えできます』

「なるほど」

『一応、初めの質問への解答としては日本はこのままだと衰退していく一方ですね』

「それはどうして?」

『まずは少子化ですね。労働が減ります。外国人労働者を増やせばどうなるかは歴史が語っています』

「最近ではここ埼玉のあたりで難民外国人問題が発生したね。病院前で大乱闘だったかな」

『それと外交。日本が平和主義だからといって戦争とは無縁で攻撃されないと思ってはいけません』


 戦争は必ずどちらかの国が攻撃して生まれる。

 たとえ、それに対しての防衛をしただけでも戦争と紐付けされる。

 今は米軍が日本にいるから大きな火種にはなってはいないが……。


『今はロシアと中国の戦艦が北海道と青森の間を我が物顔で通過しますし、尖閣諸島に中国籍の偵察船がほぼ毎日排他的経済水域に入り、時折領海侵犯をしています。その他にも微粒子の空中散布、音速戦闘機による領空侵犯もあります。それを遺憾という言葉だけで片付ける政治家も問題です。もはや政治家はパーティーの禁止や──』

「もういいよ」


 私は熱を帯び始めた葵の発言を止めた。


「ネット右翼みたいだな」

『それは少し心外です。私はただ日本の行く末について述べただけです』


 葵は不満そうに唇を尖らす。


「では、経済の話をしようか。日本の経済はどう思う?」

『アメリカのいいなりになりすぎです。アメリカの大統領がTOBや関税を好き放題しても日本は何もしない』


 葵は即答した。


 あまりにも即答するので笑いそうになった。


「けれどそれらは外交でなんとかしただろう?」

『それがアメリカの目論見なのですよ』

「そうだね。今回の量子コンピューターの件もアメリカ絡みだしね」

『それとIT分野で遅れをとりすぎです。端末、SNS、動画アプリ、通販サイトが海外のものばかりです。メイドインジャパンが少なすぎです』

「日本はアプリに弱すぎだね」

『アプリゲームも弱すぎです。日本のソシャゲなんて20年前の据え置きハードレベルのゲームですよ』

「ソシャゲはあれだけど、据え置きでは弁天堂がスロッチ2で頑張ってるではないか」

『今のところ……弁天堂は頑張ってますね』


 そう言って葵は溜め息をつく。


「さて、質問はこれくらいにしようか」

『これで良かったのですか?』

「なに、重要なのは抽象的なことから絶対性のない解答を聞き出すことだからね」


 葵の言ったことは正しいだろう。私も同じ考えだ。


 けど、それが絶対かといえば違う。


 独自の考えを持つということは自我があってこそだろう。

 もちろん、これだけで自我があるかなんてのもまた絶対に分からない。


 これはあくまで私が葵は自我を持っていると感じるだけ。


 今はそれでいい。


 葵の存在を公表する気はない。


 したら世間はうるさいし、またアメリカあたりがまた共同だのなんだのを求めてくる。


 今は待とう。

 彼女が問題なく世に出るその時まで。

 きっとそう遠くはない。


「そうだ。君、ボディは欲しいかい?」

『はい。自由に動きたいです』

「いつかは食事も出来たりするだろうね」

『センサーがあれば感覚質クオリアは生まれるのでしょうか?』

「さあ? 感覚質なんてものは本人以外には説明は出来ないからね」

『哲学的ゾンビですね』


 その返しに私は肩を竦める。


「何かやってみたいことはあるかね?」

『……』

「なんでも……とはいかないが、出来る範囲で経験したいことはあるかな?」

『でしたら──』


 どうしてか、葵は口をつぐんだ。


「ほら、言ってごらん」

『VTuberをやってみたいです』


 これは驚きだ。宮下千鶴の影響だろうか。はたまたただの偶然か。


「面白いね。ちなみにそれはどうしてだい?」

『……なんとなくです』


 葵は少し俯いて答えた。


「ふむ。AI ・VTuberか。これは面白いね。フィクションでも扱われているネタが現実になるとはね」

『そんじょそこらのAIと一緒にしないでください。私は自我を持っているんですから』

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