第43話 ニンジャコース
WGEハリカー・エキシビションマッチのコースが発表され、その中にニンジャコースがあった。
走ったことのないコースのため、私はニンジャコースを勉強することにした。
まずネットでの情報によるとニンジャコースはゲーム酔いは勿論のこと、バグが多いことで有名であるらしい。
中でも有名なのはワープバグ。
ニンジャコースは一周して終わるコースゆえに長い。けれど後半のルートと密接したルートがレース始まってすぐにあり、とあるアイテムを使って、ある行動を取るとバグが発生して後半のルートへワープしてしまう。
そして私は動画でそのバグによるワープを見た。
「うわっ、これはヤバイわ」
あまりのバグさで私はつい呟いてしまった。
具体的にどのようなバグが起こったのかというと、スタートしてから1つ目のアイテムボックスで加速アイテムのスラスターを取り、カーブを曲がったところでカートが止まる。その時の順位は12位。そして左へ90度カートを向けて、スラスターを使う。その状態だと左壁にぶつかるのだが、その左壁をカートがすり抜け、後半のルートへワープ。
順位は12位からいっきに1位へ。
そこから2つカーブを曲がるとゴール。
卑怯すぎるバグだ。
その他にもバグがあるらしいので、調べてみた。するとアイテムでミサイルを任意で得られるバグ。無敵化するバグ。アイテムを消費せずもう一度使用できるバグ。
「どう? 勉強はかどってる?」
佳奈が私の部屋に入ってきて言う。
「バグのオンパレードだね」
「そうそう。だから公式でも大会とかでニンジャコースは使用不可になったり、スロッチ版ハリカーに採用されなかったの」
「それが今回、WGEで採用された」
ネットでもニンジャコースが選ばれたことは話題になっている。
「採用されたってことはバグもなくなったのかな」
「たぶん」
ま、それもそうだろう。バグがあるままでは大会に使用できない。
「それじゃあ、今、動画でバグの勉強をしても意味ないのかな?」
「ないだろうけど……こういうコースだっていうのは知っておくべきじゃない」
「このコースを練習できないかな?」
「据え置きハードのWeeVとソフトのハリカーを持ってないと駄目だね」
「持ってる?」
「持ってない」
佳奈は首を横に振った。
「誰か持ってる人いないかな?」
「誰かというか……たぶんペイベックスにあるんじゃない? 福原さんに聞いてみたら? 最悪なくても調達してくれるかも」
「そうだね。聞いてみるよ」
私はさっそくスマホでマネージャーの福原さんに連絡した。
『もしもし』
「あのー、ペイベックスにWeeVとハリカーありますか?」
『WGEの件ですね』
「はい。ニンジャコースの練習がしたくて」
『ええ。あります。配信部屋に来てくれたら、いつでも利用できますよ』
「ありがとうございます」
『申請しておきますね』
そして私は翌日にスタジオで配信部屋を使用することとなった。
「WeeV、スタジオにあるって」
「良かったね」
「なかったら大変だったよ」
「なくても動画でコースは覚えられるでしょ?」
「いやあ、それ大変だよ。だって、見続けるとゲーム酔いしちゃうんだもん」
「あー、ゲーム酔いもあるのか」
ニンジャコースは天井走りもあるため、視界がぐるぐる回って酔いやすい。
「酔わないためにもいっぱい練習して慣れないとね」
「そうだねー」
私の弱点の一つがゲーム酔いだ。
「ニンジャコースもだけど、他のコースも練習しないと駄目だからね」
「分かってる」
「ボルケーノとか」
「……うん」
私は歯切れ悪く答えた。
「もしかしてまだネットのこと気にしてる?」
「気にしてないといえば嘘になる」
「むしろこれはチャンスと思えばいいんじゃない? ここでイニシャルカーブして、チートじゃないアピールすればいいんだよ」
「勝ったらチートって言われそう」
「逆だよ。公式だからチートって思われないよ」
「それ福原さんも前に言ってた」
「なら、そうしなよ。大丈夫。いけるって」




