第37話 ハリカー・メーカー③
『疲れた』
ミカエル先輩がぐったりとした声を出した。
「いやあ、本当に大変でしたね。私、シューティングゲームなんて全くやったことないので大変でした」
『そう言う割には2位じゃない』
「たまたまですよ」
『私は1位よ』
キセキが自慢げに言う。
「あの順位からの追い上げ、すごかったですよ」
みはり先輩のコースはキセキ、私、みはり先輩、ミカエル先輩の順でゴールした。
キセキは3周目まで最下位だったが、アイテムボックスでミサイルを手に入れた。
ミサイルはプレイヤー自身がミサイルになって低空飛行で突っ込むアイテム。妨害してくる動物達を薙ぎ倒して、キセキはトップに躍り出たのだ。
『ええ。流れ的に次はマウンテンコースにしましょう』
『ジャンプアクションが多いコースだね』
『もちろんジャンプメインですけど、ジャンプだけではありませんわ』
『へえ、それは楽しみだ』
私はコントローラーを佳奈に渡す。
皆はミカエルのコースを選び、レースが始まる。
山道を駆け上がって、山頂付近から下り坂に。
途中ジャンプ台があり、私達はカイトを広げて滑空する。
下は奈落の底。
ここまでは普通だった。下地となるコースそのまんま。
だけど、飛び進んでいくと大きなキノコの群れが見えてきた。
『あれで跳ねるのね』
キセキがまず緑色のキノコに飛び移ると、キセキのカートはピョーンという効果音と共に跳ねる。
それに続いて佳奈もキノコの上に跳ねる。そして別のキノコの上に飛び移ろうとするが──。
「ぎゃあぁぁぁ! 落ちた! なんで?」
佳奈のカートがキノコの上に乗ると、キノコは煙を立てて消えた。
『それはダミーですわ!』
「ええっ!?」
『他にもあるのでお気をつけてください』
『ぐぬぬ、ミカめー!』
『みはり、逆にミカのあとを追えばいいのよ』
『なるほど』
このコース作成者はミカエル先輩。なら、どのキノコが本物か判るというもの。
『ちょっと、卑怯ですわよ』
『『お前が言うな!』』
◯
そしてミカエル先輩、キセキ、みはり先輩、佳奈の順でレースは進んでいく。
キノコジャンプエリアの後、山道を進んでいくと崖から岩が転がり落ちてきた。
『これがジャンプ以外のギミック? これなら普通ね』
キセキは岩を悠々と避けていく。
確かにこれだけでは普通だ。避けるのも難しくない。
『落ちてくるのが岩だけど思って?』
「ん? 先輩、他にも何か落ちて……えっ!?」
なんとアイテムボックスや爆弾、ハリオのモブキャラが落ちてきた。
『アイテムボックスは嬉しいけど、爆弾は嫌ね』
みはり先輩は落ちてきた爆弾を避けて、アイテムボックスからアイテムを手に入れる。
『てか、モブキャラはなぜ?』
『まあ、すぐに分かるわ』
ミカエル先輩は不敵に笑う。
「爆弾、投げてきた!」
崖から落ちてきたモブキャラはコース上で立ち上がり、手近な爆弾を拾って、プレイヤーに投げてくる。
『モブキャラが爆弾を投げてくるからこのエリアはさっさと進まないといけませんわよ』
そしてミカエル先輩はお嬢様風に高笑いする。
「ぐぬぬっ!」
◯
2週目に入った時、コース内で大きな地震が発生した。その影響で道が割れて、細くなっていく。
『うお、細くなって進みにくい!』
『2週目だけは地割れで細くなります』
『危なっ! ちょっとミカ! オイルを道に落とさないでよ』
『先頭の特権ですわ』
キセキはなんとか躱したが、みはり先輩はオイルを踏んでしまいスピン。そしてそのまま崖に落下。
『落ちたー!』
『あらあら、残念ですわね』
崖から落ちたみはり先輩をミカエル先輩は嘲笑う。
『なんとかアイツを落としてやりたい』
みはり先輩が恨みのこもった声を呟く。
「それは順位? それとも崖に?」
『どっちも!』
『私も手伝うわ』
妙な連帯感が生まれ、3人は前を走るミカエルを狙い始める。
◯
3周目になると山が噴火した。
ジャンプ台でカイトを出して飛ぶと、奈落の底からマグマが炎の柱として飛び出てくる。
『危なっ! マグマが来るぞ! 避けろ!』
キセキが注意喚起をする。
『なんとかキノコまで辿り着くんだ!』
「辿り着いたのですけど、ミカエル先輩から離れました!」
『あとは運だ!』
なんとか佳奈は運良く、本物のキノコを選んで、キノコエリアを抜ける。
『フフッ、安心するのはそこだけかしら?』
なんと岩が落ちてくる崖エリアはかなり大変なことになっていた。
岩は火を伴って、転がり落ち、なぜかコース上に落ちると爆発した。爆弾やモブキャラを巻き込んでの大爆発。
避けても爆風で吹き飛ばされる。
『ぎぃやあぁぁぁ!』
みはり先輩が岩の爆発に巻き込まれて、吹き飛ばされた。




