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VTuberをやっている妹のパソコンを勝手に使ったら、配信モードになっていて、視聴者からオルタ化と言われ、私もVTuberデビュー!?  作者: 赤城ハル
第1章

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第22話 5期生トーク配信

『トレンド4位おめでとー』


 配信が始まって早々、私は皆に祝福という名のいじりを受けた。


「やーめーてー」


 今日は公式ペイベックスチャンネルによる5期生トーク配信。


 収録場所はペイベックス本社。ここで全員集まっての収録。


 各々で繋がると配線問題で通じなくなる可能性があるため、一つの場所での収録と決まっている。


 今日のトークはネットの目安箱に投函された質問に対してフリップで答えていくという内容。


 部屋のテーブル中央にマイク。そして5人を捉えるカメラ。各々にはタブレットとペンが配布。


 リーダー有流間ヒスイ正面側の壁にはディスプレイがあり、ネットでの音声なしの配信映像が流れている。


 配信映像では左から有流間ヒスイ、那須鷹フジ、松竹マイ、赤羽メメ、黒狼ミカゲの順で並び、その下に青枠がある。青枠にはメンバーがタブレットで書いた文字が映しだされるようになっている。


 そしてタブレットにはコメントが見られるようにコメント欄がある。


「それじゃあ、目安箱の質問を開示しまーす」

 5期生リーダーの有流間ヒスイが進行を開始する。

『わー』

「最初の質問はこちら。【最近買った物は?】です」


 ヒスイ:『ファミレスのステーキを乗せるやつ』

 フジ:『ベッドの掃除機』

 マイ:『バッグ』

 メメ:『服』

 ミカゲ:『グッズ。抱き枕』


「フジのベッド掃除機って何?」


 進行兼解答役のヒスイが聞く。


「ほら、ベッドとか布団とかにやる掃除機」

「へえ」


 とマイがそんなに興味のない返事をする。


「いやいや、結構必要だよ。ダニとか取らなきゃあダメだし」

「フジって汚いから皮脂とかでダニが増えるんだね」

「汚くねーし」

「フジの皮脂は年季のある芳醇だからね」

「なによそれ。皮脂に年季も芳醇もねーわ」

「アハハ。次にベッドの掃除機繋がりで言うとミカゲの抱き枕って何?」


 ヒスイがミカゲに話を振る。


「この前の星空みはり先輩の抱き枕カバーを買ったの」

「それで殴ってんの?」


 マイが面白おかしく聞く。


「殴らねえよ!」

「ストレス溜まって、ついやっちゃったの?」 


 フジも乗っかって聞く。


「違うよ」

「だからって先輩を」


 そして私も乗っかる。


「違うから。先輩のファンだから!」

「まともな物を買ってくださーい」


 ヒスイが注告する。


「いやいやいや、そんなことを言ったら、あんたのファミレスのステーキを乗せるやつって何よ」

「え? ほら、茶色い木皿の上に黒い鉄板がくっ付いてるやつ」

「……ああ、あれね。なんでそんなの買ったの?」

「家でね、ステーキを焼くとすぐ冷めるの。だから買ったの」

「へー」

「マイ、もう少し興味を持ってよ!」



  ◯


【Vtuberやっててキツかったことは?】


 ヒスイ:『苦手なゲーム』

 フジ:『凸待ち』

 マイ:『喉』

 メメ:『喉』

 ミカゲ:『嫌なコメント』


「マイとメメは喉なんだね」

「喉が痛い」

「うん。ケアが大変」

「へえ。ちなみにケアとかは何してるの?」

「私は加湿器使って常に喉を潤すようにしている。あと、枯れたらのど飴」

「私も同じかな。最近はハーブティーを飲んだよ」

「ハーブティー?」


 マイが興味を持って聞く。


「うん。オルタが大学生協で買った青いハーブティー」

「効くの?」

「効く……かな? ただ香りと味は最悪だけどね」

「何て名前のハーブティー?」

「名前はなんだっけ? 今度調べておくよ」

『お願いね』

「え? 皆も?」

「そりゃあ、青いハーブティーなんて気になるし」


 フジが頷きつつ言う。


「さて、次はミカゲは『嫌なコメント』って書いたけど、どんなの?」

「まあ、挑発とか下ネタとか鬱陶しいやつ」

「それは私もわかるわ。イライラするやつとかね。リスナーの皆さんも節度あるコメントをお願いしますねー」


 ヒスイはカメラに向かい手を振る。


「ヒスイは苦手なゲームってあるけど、やっぱホラー?」

 とマイが聞く。


「うん。ホラーがどうしても苦手で」

「私も苦手」

「えー、そお? メメは結構得意じゃん。オルタちゃんの方が苦手っぽいよ」

「あー、この前の配信ね。見た見た」

「そうだね。今度、ヒスイとホラーやらせら面白そう」

「それ面白そうね!」


 ヒスイは目を輝かせて言う。


「それじゃあ、次の質問を……」

「待て待て! 私の凸待ちは?」

「あー。キツかったの?」

「マイ、もう少し興味があるように聞いてよ」

「ごめん、ごめん。で、キツかったの?」

「キツかったよ。来てくれるかどうか分からなかったし」


 重い息を吐くようにフジは言う。


「めっちゃ、先輩方とコラボしたり、凸待ちに凸ってたじゃん」

「それでも来てくれるか、怪しかったし。来るまでの間、喋らないといけないし。大変だったんだから」

「へー」

「もうマイ、ひどーい」

「メメなら凸待ちしたらめっちゃ来るんじゃない?」

「え?」


 急なフリに私は驚く。


「いや、フジでもきついなら私はもっときついかも」


 両手を振って否定する。


「いやー、オルタ目当てで来るよ。きっと。今度、凸待ちやってみなよ」

「えー」


  ◯


【ここ最近、驚いたことは?】


 ヒスイ:『赤羽メメ・オルタ』

 フジ:『オルタ』

 マイ:『オルタちゃん』

 メメ:『お姉ちゃんがデビュー』

 ミカゲ:『オルタ』


「お! 皆、オルタですね」

「これはそうでしょう」

「びっくりだんね」

「事故からの大躍進!」

「『お姉ちゃんは近くにいる?』、『このトークに参加可?』というコメントが来てますが、残念ながらオルタは来ておりませーん」


 するとコメントには『つまんねー』とか『オルタの件で来たのにー』とか『もう帰ろうかなー』といったコメントが溢れた。


 やばい。このままだと同接が減る。この時の焦りはメンバー全員共有していただろう。


 私は慌てて、


「姉はいませんが私が姉……じゃなくてオルタについて、話せる範囲でお答えしますよー」


  ◯


【自分へのご褒美は?】


 ヒスイ:『美味しいもの』

 フジ:『美味しいもの』

 マイ:『ショッピング』

 メメ:『ショッピング』

 ミカゲ:『ショッピング』


「おお! 美味しいものとショッピングに別れましたね」

「え、でも私とメメは同じでもミカゲは違うよね」

「え? 私もショッピングだよ?」

「いやいや、あんたはマンガとゲームでしょ?」

「そうだよ」

「ほら。私とメメは服とかバッグだもん」

「そうですねー。そうですねー。どうせ私は陰キャですよ」

「でも、この前のオフで一緒にショッピングしたよね」

「うん。リーダーと服買った。あとエロい下着も」

「私も誘ってよー」

「私も」

「私も」

「いやいや、JKにエロい下着を買わすのはちょっと……」

「ひどーい」


  ◯


「はい。それではもうお時間ですね。最後の質問とさせてもらいまーす。では最後の質問は……ジャジャーン! 【今欲しい物は?】です」


 ヒスイ:『登録者』

 フジ:『登録者』

 マイ:『登録者』

 メメ:『登録者』

 ミカゲ:『登録者』


「えー。みーんな、登録者でしたー。ですので登録のほどお願いしまーす」

「でもさ」


 ここでマイが、


「メメは登録者、爆上がりでしょ?」

「え? あっ、それはオルタのおかげだからだよ」


  ◯


 配信の後、5期生メンバーで食事に行き、家に帰ってきたのが夜11時頃だった。


「ただいま」


 私は玄関でローファーを脱いで、階段を上がり、自室に向かう。


 そしてベッドにダイブした。


「疲れた。まじ疲れた」


 肉体的疲労はなく、ほとんど精神的なものだ。


 5期生メンバーとは仲が悪いわけではない、仲は良い。


 だけど年齢も違うし、オルタの件もあり、どこか気を遣わなくてはいけない。


 トントン。


 ノックされた。


「なーにー?」


 私は枕に顔を埋めたまま返事をした。


 ドアが開き、


「風呂空いたよ」


 ノックの主は姉だった。


「う〜ん」


 どうしよう。入りたいけど、ちょっと疲れ気味。


「お父さんが先に入ろうとしているんだけど」


 それを聞いて、私は起き上がる。


「先入る」


 父より後に入るのは嫌。

 姉は先に入ったのか、顔は火照り、バスタオルを頭に巻いていた。


「聞かないの?」

「何を?」

「その私がどこ行ってたとか?」

「? 仕事でしょ。それでその後にメンバーとご飯を食べたって」

「あ、うん。そう」


 母には5期生メンバーと飯を食べて帰るから私の分はいらないとメッセージを送っていた。たぶん母経由で姉は知っているのだろう。


「気になる?」


 先に階段を下りる姉に尋ねる。


「ん? 別に?」


 前を向いたまま、本当にどうでもよさそうに姉は答える。


「お姉ちゃんも来たかった?」

「いやあー、私はいいや」


 そして姉はリビングに。そして私は脱衣所へ向かう。


 背中で姉が「佳奈、先に入るってー」という声をどこか遠くのことのように聞こえた。


 一応脱衣所で服を脱ぐ前に、風呂場を確認する。風呂場に父がいないことを確認すると脱衣所で服と下着を脱ぐ。


 シャワー温度を確認した後、私は頭からシャワーを浴びる。


「フーーー」


  ◯


 お風呂の後、リビングに入るとテレビを見ていた姉が、「アイスあるよ」と言う。


「そう」

「さて、やっとお父さん番か」


 父が私と替わって、リビングを出る。


「今日、お父さん早かったの?」


 私はダイニングで椅子に座っている母に聞く。


「そうよ。電話したら迎えに行ってたんじゃない?」

「いやよ。箱入り娘って言われるじゃない」


 私はまず冷蔵庫でコーラのペットボトルを取り出し、コップに注ぐ。

 そしてリビングのソファに座り、肘掛けに頬杖をつく。


「ドラマ録画してある?」

「してるよ。見る?」

「いい」


 私は見るというよりも内容を知るためにドラマを見ている。

 これは学校での会話についていくため。

 仕事で見れなかったなんて、嫌味に聞こえるらしい。


 だから、仕事があっても、つまらないドラマでも倍速で見る。

 そんな作業を家族には見られたくない。


 明日は休日だし、今見なくも問題はない。

 私はコーラを一杯飲んだ後、冷蔵庫に向かい、チョコのアイスバーを一つ取り出す。


「私の分もー」

「食べたんでしょ?」

「私、まだ食べてないよー」


 と姉が言うので私は真偽を確かめようと母に顔を向ける。


「千鶴は食べてないわよ」

「そう」


 私はもう一本アイスを取って、リビングでぐうたらしている姉に渡す。


「ありがと」


私はソファに座り、


「ねえ、5期生のメンバーに会いたい?」

「別にー」


本当にさっきと同じように、どうでもいいように答える。


「会わないとダメ系?」

「そうじゃないけどさ」

「もしかしてその同期のやつに『おいおい、テメエの姉は菓子折り持って挨拶にも来ねえのか?』なんて言われてるの?」

「違うよ。ただ誰とも繋がりを持とうとしないからさ」

「う〜ん。私は基本バイトみたいなものだからね。存在が薄まれば自然と消えるつもりだから」


私とは真逆の考えをもつ姉だった。

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