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VTuberをやっている妹のパソコンを勝手に使ったら、配信モードになっていて、視聴者からオルタ化と言われ、私もVTuberデビュー!?  作者: 赤城ハル
第4章

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第15話 ハリカーコラボ②

 私達はサンライトビーチコースの後、他のコースを3つ走った。

 そして今、ルームで。


『ん? みはリンゴって、おたくの星空みはりじゃない?』

「えっ!?」

『ほら、このピンクのレース服を着たアバター』


 ルームには私達以外にも視聴者のアバターがいて、その中にピンクのレース服を着たアバターがいる。


「みはリンゴだ」


 アバターのハンドルネームが『みはリンゴ』だった。

 みはリンゴはペイベックス0期生星空みはりが使うハンドルネーム。


『でしょ? 本人かな?』

「なりすましという線もあるかもしれませんね」


 Vの名前を使ったプレイヤーが世の中には多くいる。


「ん? コメント欄に本人から『私だよー。本人だよー』とみはり先輩本人からのコメントが書き込まれてます」

『ということは本人か』

「……先輩、なに参加しているんですか」

『ま、いいじゃん。コース選択スタート!』


 私達はコース選択画面に移動して、各々コースを選択する。


 私はアップルポッピンコースを選ぶ。


 そしてルームに戻って、皆が選んだコースを見る。

 みはり先輩はボルケーノコースを選んでいた。


『あらら。みはり、ボルケーノコース選んでるじゃん。このコースはハリカー大会のやつじゃん』

「先輩が『リベンジ』って言ってますね」

『面白いね。てか、他のプレイヤーもボルケーノコース選んでるじゃん』


 きっと星空みはりがボルケーノコースを選ぶと考えて、他のプレイヤーもボルケーノコースを選んでいた。みはり先輩含めると12人中5人が選んていた。


『さあて、どのコースが選ばれるか?』


 抽選が始まり選ばれたのは──。


「ボルケーノ!? ええっ!?」

『なんで嫌そうな声なの。十八番のコースでしょ?』

「十八番じゃないよ。これ絶対イニシャルカーブ求めているでしょ」

『見たい、見たーい』

「できるかな? あれ難しいからなー」

『頑張れ、頑張れ!』


 画面はレース画面になり、シグナルカウントが始まる。


 3……2……1……0。


『スタート!』


  ◯


 ボルケーノコースは噴火する山の合間を通り、降ってくる火の玉溶岩や噴き出るマグマや転がる岩などを躱しつつ、最後にループ橋を越えてゴールする一周のみのコース。


『どうしたの? ずいぶん、後方にいるけど。もしかしてイニシャルカーブでごぼう抜きする気?』

「ち、違います! めちゃくちゃマークされているんですよ!」


 最初は順調だったけど、2つ目のアイテムボックスのあたりから、狙われて順位を落とした。さらにブロックされ、抜かしにくい状態。いやなところにガムやオイル、まきびしを撒かれる。


『あらら、それは大変だ』

「むう! キセキさん今はどこですか?」

『私は6位。みはりは2位かな?』


 今の私は9位で先頭からかなり離れている。


「追いついてみせますよ!」

『楽しみにしてるよ!』


 キセキは心底楽しみにしているように告げる。


 その後、羽虫の音が聞こえ、私はミニターボで追尾ロケットを回避する。


 皆はイニシャルカーブばかり言うけど、これも私の能力の一つ。


 ここはカーブが多いため、私はチャフがないときはミニターボで追尾ロケットを回避する。


(それにしても追尾ロケット多くない?)


  ◯


 私はミスをせずに進み、少しずつ順位を上げた。レースはもう終盤のループ橋が見えてくるところまできている。


 ループ橋はバネのよう螺旋カーブ。


 先頭集団はすでにそのループ橋に入っているようだ。


 ハリカーは他のカートゲームと違い、ドリフトをすることでほぼ減速なしでカーブすることが特徴的である。


 しかし、このループ橋だけはブレーキで減速しないとまわれないカーブとなっている。


『おっと! ここまで順位を上げてきたか!』

「もう目と鼻の先ですよ! 見せてあげますよ。イニシャルカーブを!」


 私はループ橋の内側にある溝に前輪を嵌める。そうすることでドリフトだけでループ橋をまわり続けることができる。

 そして次々と私はプレイヤーを抜かしていく。


『おお! 生のイニシャルカーブ!』

「生? 結局、映像だから生とは違うのでは?」

『それもそうか。ならこの場合はリアタイかな? ま、それはそれとして、私の追尾ロケットは回避できるかな?』


 後ろからキセキが追尾ロケットを放つ。


「残念ですけど当たりませんよ!」


 追尾ロケットも急なカーブには対応が出来ず、狙いが逸れて外側のガードレールにぶつかる。


『えー、うそー、外れたー!』

「残念でしたー」

『あっ!? オ、オルタ! 後ろ!』

「えっ!? なんです?」

『オルタの後ろに同じ様にイニシャルカーブしてる猛者がいるよ!』

「ええっ!?」


 私の画面からは見えないが、どうやら私と同じ様にイニシャルカーブをしているプレイヤーがいるようだ。


『ど、どっちが勝つ?』

「負けません!」


 そして2位のみはり先輩を抜かし、1位に肉薄する。

 ループ橋が終わる頃、私は1位を抜き、ミニターボでゴールへ向かう。


  ◯


「お疲れ様です」


 レースが終了し、私は労いの言葉をかける。


『いやあ、まじすごかった。イニシャルカーブすごかったよ』

「私の後ろにいた人はどうなりましたか?」

『なんか失敗したらしいよ』


 キセキが笑いながら答える。


「その人、残念でしたね」


 コメント欄ではみはり先輩が『クソー! いっぱい練習したのに負けた! くやちい!』とコメントを残していた。


  ◯


 この時、私達はある一つのことに気づいていなかった。


 星空みはり、ボルケーノコース、イニシャルカーブ。

 それらに目が向いていて気づかなかったのだ。


 まさかそれがのちに大きな騒ぎの原因になるとは。

 いや、ここで気づいていたとして、結局は同じだったのかもしれない。

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