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第79話 ワラビアナ終了

 代議士の部屋を出た主人公は2街へ行き、自分の荷物を取りに部屋に入る。


 けれど部屋には主人公の荷物は何一つなかった。


『あれー? 荷物がない?』

『置き引きかな? 襖とか隣の部屋は?』


 あちこち探してみるがやはり荷物はどこにもない。


 その時、隣の部屋から物音がしたのでヤクモは主人公を操作して、中本さんが使用していた部屋に向かう。


 するとそこには女将がいた。


 女将は主人公に気づくと、奇声を発して大理石の灰皿を手にして襲ってきた。


『うおぉー! これはどうすればいいの?』


 ローテーブルの周りをぐるぐると逃げ惑いつつ、ヤクモはカロに尋ねる。


『何かを手にして戦うんじゃない?』

『な、何を?』

『そのへんのものかな?』


 ヤクモはポットを調べると『使う』、『使わない』の選択が出た。


 それで『使う』を選ぶと主人公はポットを掴んで灰皿を持つ女将と闘う。


 だが、ポットが潰れて、主人公はまた逃げ始める。


『駄目だ。大理石には勝てない! 何? 何が正解なの?』


 他に掴んで凶器となる物を探しては闘うがどれも駄目だった。


『ああ! お盆が!』

『お盆はさすがに弱いね』

『もうないよ!』

『ヤクモ、隣の部屋だ!』

『そ、そうか』


 ヤクモは主人公を操作して隣の部屋に入る。

 そこにあったのは──。


『ええと、掴めるのは枕に……え? 何? このチ……え?』


 隣は寝室で布団に枕、そしてローションの入ったボトル、黒い男性のアレを模したものが。


『何に使うんだよ!』

『ナニとして使うんだよ。中本さん、昨晩はお楽しみだったね』


 カロが面白そうに言う。


『ヤクモ、とりあえずそれで闘ってみな』


 そう言われてヤクモはとりあえず黒いアレを手にして女将に立ち向かう。


 負けるだろうなと思って見ていたら、なんと勝った!


『か、勝った! なんで?』

『コメントを見るとなんでも灰皿の耐久値が減ってたからだって』

『耐久値!?』

『ちなみに正解は洗面所の髭剃りで殺すんだって』

『殺すの! ということは女将死んだの?』

『それはわからないけど、とりあえず女将を調べてみては?』


 ヤクモは女将を調べる。すると東館のマスターキーを手に入れた。


 それから廊下に出て、次に南館へと向かう。

 南館は大地主を騙して土地と屋敷を手に入れた資産家である道枝家の者が新たに建てた館である。


 けれど、その後に道枝家が没落して名士が手入れた。

 なんと、その名士が実は大地主の血を引くもので、さらに道枝家が没落したのも名士と村が関わっていた。


 しかも屋敷や土地は資産家である道枝家を呼び寄せるための罠だった。


 何も知らない道枝家は肥やしとなり、良いところで刈り取られた。

 道枝家の当主である道枝春右衛門は亡くなる直前にそれを知り、ノートにその悔しさを書きつづった。


『ま、どっちも悪いよね。ただ村の者が一枚上手だったというだけ』

『カロはずいぶんとドライですね』

『そうかな? 道枝家も騙されたとはいえ、美味しい蜜をすすった悪人なんだから別に情けをかける必要はないじゃん』

『そうですね』


 そして南館を出て外に。車に乗ろうとしたところで赤鬼が空から降ってきた。車のボンネットの上に着地して、ボンネットを大きく凹ませる。


『ぎゃあぁぁぁ!』

『ちょっ! ヤクモ、叫びすぎだよ。鼓膜が潰れる!』

『あわわっ、ごめんなさい。きゅ、急に現れたので』


 ヤクモは主人公を操り、その場からすぐに離れる。


『外に出たけど、どうすればいいの?』

『ヤクモ、とにかく逃げよう!』

『だからどこに?』

『まっすぐ道を進むんだ!』


 真夜中、星明かりの下、うっすらと道が続いていた。

 主人公は一生懸命走る。

 すると後ろから鬼が追いかけてくる音が聞こえてきた。


『ぎぃやぁぁぁ!』

『ヤクモ! shiftでダッシュだよ。ほら、画面にshiftでダッシュ可能と書いてるよ』

『わ、わ、わかった!』


 そして丁字路に差し掛かる。そこで選択肢が現れた。『村へ行く』、『祭会場へ行く』と。


『どっち?』

『祭会場だね?』

『なんで? また捕まるよ?』

『鬼の足止めにするんだよ。ほら、早く! 鬼の足音が近づいてきたよ』

『ああ! もー!』


 ヤクモは悩んだ末に──。


  ◯


 ムービーパートが始まった。


 神殿前では村人が輪になり、踊っている。

 松明たいまつがパチパチと鳴り、辺りをほのかに明るくさせている。

 村人の輪の中心には櫓があり、男がバチを持ち、太鼓を叩く。

 腹に響く太鼓の音がリズムよく鳴る。


 そこへ主人公が草むらから現れた。そして村人の輪を横切って、奥へ去る。


 村人は生贄として捕まった主人公が現れたことに驚いたが、すぐに村長が村人に捕まえろと命じようとするのだが、主人公の後に草むらから現れた3体の鬼により、村長は食い殺されてしまった。


 村人達は悲鳴を上げて一目散に逃げる。その村人達を3体の鬼は襲いかかる。


 神主と数人の村人が祝詞のりとを詠み、鬼を鎮めようとする。

 けれど鬼を鎮めることが出来ずに神主と村人達は食い殺されていく。


  ◯


 ムービーパートは終わり、アドベンチャーパートと変わった。主人公はあちこちへと逃げ惑う村人達を掻い潜り、走って逃げる。


『私、ホラーやパニック映画とか見てて、いつも思うんだけどさ、どうして危ない方向に逃げる人がいるんだろう』


 カロはふとそんなことを呟いた。


『分かりません。演出では?』


 ヤクモは一生懸命に主人公を操作して逃げる。


 そしてまた選択肢が現れた。『村人と一緒に逃げる』、『駅の方へ逃げる』と。


『どっちが良いんですか?』

『うーん? 目的は果たしたし、ここは独りになるべきかな?』

『それじゃあ、駅へ行きますよ』


 ヤクモは『駅の方へ逃げる』を選んだのだが。


『こんな時間に駅に行っても意味ないかな? 電車も走ってなさそうだし』

『ちょっとーーー!』

『とにかくshiftでダッシュだ!』


  ◯


『お疲れ様。大変だったね』

『つ、疲れました』


 ヤクモが心底疲れた声を出す。


『まさか駅に向かうのが正解だったとはね』


 主人公はあの後、無事、駅に辿り着き、終電に乗って逃げ延びた。


 そしてエンディングへ。


 政府はこの件をひた隠しにして、ダムを建設。そしてすべてを水の底へと隠した。


 10年後、久々に主人公はダムへやってくる。

 山の展望台から水に沈んだ村を黙って見下ろす。

 その瞳は生気なくよどんでいる。


 それを反対の山から3体の鬼が主人公を見つめていた。

 主人公は鬼に気づかず、ダムにきびすを返して家に帰る。


『鬼は生きてたけど、あの後、どうなったんですかね?』

『さあ? 主人公を見つめていたし、追いかけたとか?』

『ええっ!?』

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