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第70話 感染経路【福原岬】

 VTuberは陰キャで仕事は自宅配信。そして出不精というイメージのためかコロナについては無関係と思われる方が多いだろうが、VTuberだってスタジオ配信をするし、歌やダンスレッスン、打ち合わせも行う。


 だからコロナ感染がないわけではない。

 そして今、ペイベックスVTuber内でコロナ感染が増えていて、私達マネージャーら感染経路を調べているところだった。


 初めはトビ、そしてサラサ、カロ、アメージャ、メテオと続いている。


 そこへオルタこと宮下千鶴さんから連絡があり、新たにコロナ感染者にオルタの名が連なった。


「コロナに。そうですか。ここ最近、オフであったのはヤクモくらいでしょうか?」

『いえ、カロと卍の2人は大学で。アメージャさんとメテオさんとはこの前、喫茶店でお会いしました』


 カロとアメージャ、メテオの3人はコロナ感染でカロ経由と分かっている。


「つまりカロから感染したと?」

『正確には分かりません』

「株は何でしたか?」

『それが……コロナに感染したことしか分からず』

「医者は何と?」

『それが──』


 千鶴さんは病院内でのことをかいつまんで説明してくれた。


「なんとまあ、変わった医者ですね」


 ろくに説明もしないなんて、医者の風上にも置けませんね。


「まあ、とりあえずカロ経由としておきます」

『私は軽症ですので、その……カロが悪いとかは……ないので』

「大丈夫ですよ。誰が悪いとかそういうことはないですから。あくまで感染経路を調べているだけですので」


 と、自分で言っておきながら、感染の原因となった者からしたら自責の念に駆られるだろう。


 カロは意外と平気そうだけど。


『そうですか。それとヤクモとの配信の件ですが』

「そういえば、泊まり込みで配信でしたよね」


 猫泉ヤクモと公式チャンネルを使ったコラボ配信があった。

 まあ、休むというのも致し方ないが……。


『卍が代打のあてがあると言っていたんです』

「代打ですか?」


 代打という案も悪くはない。


「誰ですか?」

『それがまだ聞いてないんです。あとで教えてくれるみたいで』

「分かりました。……でしたら明日の夕方までにはご連絡ください」


 そして通話は終わった。


 私は課長席に向かい、赤羽メメ・オルタがコロナ感染した旨を雪見課長に報告する。


 VTuber課の課長は雪見直子という名で、元タレント課にいた人。人気タレントだろう話題沸騰中であろうが問題を起こせば、容赦のなく怒る人であり、竹を割ったような性格の人。


 雪見課長は同期の鈴木を呼ぶ。彼は4期生銀羊カロのマネージャーを務めている。


「またカロ経由らいわよ」


 まだはっきりとはカロ経由とは決まっていない。それでも雪見課長はカロ経由と判断した。


「すみません」

「流行ってるんだから仕方ない……と言いたが、感染させたのは問題ね」

「なるべく他のライバーと接触がないように……」

「今更何言ってんのよ。カロは治ったのでしょ?」

「あ、はい」

「なら接触云々を言っても終わったことでしょ?」

「……そうですね」


 では、何が言いたいのだと鈴木は困った顔をする。


「空いた分の仕事はしっかりしてもらうように」


 要は倍以上働けということだろう。


  ◯


 帰宅時、廊下で鈴木に会った。いや、待ち伏せをされていた。


「すまなかった。うちのが」

「そうね」


 私はそう一言だけ告げた。


「カロに悪気はないんだよ。あいつもマスクとかソーシャルディスタンスとか心がけていたし」

「そう」

「怒ってる?」

「いいえ。コロナ感染したのはオルタだし」

 オルタは5期生ではない。あくまでメメの別側面で、時折配信をする()()()

 なぜか人気が出て、他のVTuberともコラボしている。特に私見だが星空みはりはオルタに対して心を開いているように見られる。

「そっか」

「そっかじゃないわよ。オルタとヤクモがコラボする予定なのに壊れたじゃない」


 白紙ではなく壊れた。


 白紙ならまだ楽だ。またいつかやればいいだけ。

 しかし、壊れたは違う。


 前もって準備をし、リスナーにはやると事前報告していた。

 関わった全てを台無しにするのだから大変だ。

 しかもペイベックス公式チャンネルを使ってのコラボ。


「ごめんって。なんならカロを代打に送るよ」

「出来るの? コラボ相手は6期生だよ?」


 カロは夏のデマの件で6期生を嫌っている。本気で嫌ってわけではないが溝がある。


「……難しいな」


 鈴木はそう言って額を揉む。


「別にいいから。カロだって好きでコロナ感染したわけではないんだし。それにオルタにも非はある」

「いや、なんとかしてみるよ」

「そう」


 特に期待はしていない。今はそれより卍が代打のあてがあると言っていたことが気になる。一体誰だろう。

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