表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/307

第35話 0期生【豆田夢加】

 夕方、私は用があるとのことで千鶴達とは別れ、スマホで美菜を大学食堂前に呼び出した。


「ど、どうも」


 美菜はおどおどしながら現れた。


「こんばんわ。急に呼び出してごめんね」

「いえいえ」

「ちょっと今後の話がしたくてね」


 そして私達は食堂には入らず、近くのベンチに腰かけた。


「千鶴から紹介された時はびっくりしたわ」


 実際にびっくりしたのは土曜日なんだけどね。


「本当ですね。まさか同じ大学とは」

「しかも銀羊カロもいたとは驚き」

「あの、夢加は千鶴さんが、その……」

「オルタのこと?」

「知ってるんですね。でも、千鶴は夢加が星空みはりというのは知らないのですよね?」

「ええ。言ってない」

「どうして?」

「今は言いたくないから」


 私は即答した。


「だから貴女も私のことを言わないこと。それと夢加でなくて豆田ね。皆、豆田って言ってるから」

「分かりました」

「カロにも。私のことは秘密」

「はい」


 これで話は終わりと席を立とうとしたら、


「あの、秘密を守る代わりといってはなんですが、今後ともよろしくお願いします」

「……大学のことね。わかったわ。てか、あんた、友達いないの?」

「前はいたんです。でも、その子、大学辞めちゃって」

「他の子に話しかけるとかさ?」

「しました。しましたよ。色々。でも、仲良くなれなかったんです」


 美菜は悔しそうな顔をして俯く。


 その顔から本当に色々と頑張ったんだろうなと分かる。


「ま、V同士仲良くしましょう」

「助かりますぅ」


 私も人見知りする方だし、美菜の気持ちも分からなくもない。


「ありがとうございます。急に輪に入るようなかたちで」

「輪には入ってないわよ。あんた、フランス文学科なんでしょ?」

「ええ!?」

「ま、少しずつ皆と打ち解け合えばいいじゃない」

「はい」

「でも、どうしてカロ……涼子とは仲良くなれたの?」


 涼子は工学部の人間でキャンパスが違う。ならここで会うことはないはず。


 オフの時に大学の話をしたという線もあるけど、人見知りのこの子がオフで会うことも、配信きっかけで仲良くなることもないだろうし。


「友達がいたと言いましたよね。その子が工学部の子と仲良くて、それである時……去年の秋くらいかな? 文化祭関係だったし」


 美菜は顎に手を当て、小首を傾げる。


「時期は詳しくなくていいから」

「あ、はい。で、秋に理系キャンパスに行った時、涼子と出会ったんです。いやあ、あの時はびっくりしましたね」

「なるほどね」

「それから涼子とは仲良くなって、Vでもよくコラボとかもするようになったんです」

「ならカロ経由でもっと他のVと仲良くしなさいよ」


 私は溜め息交じりに言う。


「してますぅー。それは夢……豆田に言われたくありませーん」

「失礼ね。私は他のVとも仲良くしてるわよ」

「でもオフはしてないでしょ?」

「それは面割れしたくないからよ」

「別にいいじゃない面割れしても」

「私達はワケアリの0期生よ」

「ワケアリねえ」


 そう言って美菜は空を見上げる。つられて私も空を見上げる。


 夕方の空はもう暗くなり始めていた。


 まだ一番星は見えない。

 いや、都会では光が多すぎて、星の光は届かない。たとえ、そこにあったとしても誰も見つけることは出来ない。


 唯一、空の上で瞬くのは人工衛星の光。


「そりゃあ私は面倒な前世があって、ぶっちゃけ縁故採用みたいなとこもあるけど、豆田はニパニパでしょ? 問題なくない? たぶん皆、ニパ主だと気づかないよ。てか、身内ならバレてもよくない?」

「……そういう問題ではないのよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ