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第29話 まさかの!?【豆田夢加】

 土曜日の昼。

 私は千鶴をけていた。


 というのも千鶴がペイベックスVTuber4期生銀羊カロこと島村涼子と会う約束をしたからだ。


 なんでも島村から相談があるとかで。


 同じ穴の狢ゆえ疑う気はないが……多少面倒なことに巻き込まれる可能性はなくはない……だろう。VTuber関連ならなんとか私も0期生という立場で陰から守ることはできるが、大学関連となるとどうしようもない。


 大学は決して安全というわけではない。最近はモラルが低下しているから気をつけなければいけない。


 だから私は心配で先に駅に着き、電柱の影から千鶴が出てくるのを待っていた。


 大学で待っていればと思うが、大学のどこで待ち合わせかは聞いてなかったのだ。大学の正門は広くて隠れる場所がない。それに正門以外にも出入り口はある。


 それで普段から使っている最寄り駅の外から千鶴が出てくるのを見張っている。


 しばらくして駅から千鶴が出てきた。それから私はずっと千鶴を尾けているが、無頓着なのか千鶴はまったく私に気付いていない。


 まあ、いい。それは僥倖ぎょうこうである。


 大学は土曜であっても、多少の学生がいた。


 土曜は資格系の講義が詰められているので、資格を取るために頑張っている学生達なのだろう。


 やはり卒業後の進路を考えているのか、ここにいる学生達は勤勉家で真面目そうである。


 普段からもこういう学生で溢れていればいいのにと私は考えてしまう。


 特に華の金曜日こと華金はやばい。


 合コンやクラブのことで頭がいっぱいの学生達で溢れている。まるで大学を待ち合わせ場所かなんかと考えているようだ。


 そして千鶴は食堂に入る。どうやらここが待ち合わせ場所のようだ。

 千鶴は食堂を見渡して、島村を見つける。


 私は離れた席に座り、様子を見守る。

 すると私の隣に誰かが座った。


(ん?)


 誰だと振り向くと、種咲だった。


「おま──」

「静かに。バレるよ」


 種咲が口に人差し指を立てて言う。


「どうしてここに?」


 私は声を小さくして種咲に問う。


「たまたま見かけて」


 種咲はニッヒヒと笑う。


(絶対嘘だ)


 私が来ると分かってて、面白半分でやって来たのだろう。


「ほら、誰か来たよ」


 種咲が千鶴達の席を指す。

 茶髪のショートカットの小さい女性が島村の隣に座る。


(あれは!?)


「ん? 豆田の知り合い?」

「い、いえ。知らない人」


 嘘である。本当は知っている。

 けど、ここは嘘をつくべきだと思った。


 しかし、どうして彼女がここに?


 彼女はペイベックスVTuber0期生の勝浦卍で本名は松任谷美菜。私は他のペーメンとは違い、オフコラボを極力しない。でも同じ0期生ということで勝浦卍とはオフで会ったことがある。


「本当?」

「……本当よ。あんたこそあれが誰なのか分かる?」

「どこかで……見たことある?」

「え?」


 意外な答えが返ってきた。

 まさか種咲もVTuber?


「どこだっけ? ううん? ……どこかで見かけたんだよね」


 種咲は眉間に皺を寄せて考え込む。


「思い出しなさいよ」


 見かけたというのはたぶん大学のどこかでってことだろう。

 一瞬、種咲もVTuberかと思ってしまったよ。


「いや、そう言われてもさ」


 種咲は目を瞑り、腕を組みながら思い出そうと頑張っている。


「………駄目だ。思い出せない」

「もういいわよ」

「で、最初からいたもう1人の子は?」

「工学部知的財産研究学科の島村涼子だって」

「理系キャンパスの子か」

「あっ! 動き出した」


 千鶴達は席を立ち、食堂を出る。


「豆田、どうする?」

「とりあえず追いかけるわよ」


 私達は3人の後を追う。

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