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8.迷子にならないよう、気を付けます

「そもそも、だ。どうしてそんな結論に達したのか」

『他の方には見えない聞こえない!これほど隠密に特化した存在は、いないのではありませんか?』

「いやむしろ、普通は幽霊は見えないものじゃないか?」

『リヒト様には見えているではありませんか!』

「……そうなんだよな。どうして私にだけ、君の姿も声も認識できるのか。それが不思議で仕方がない」


 それはそうなのですが、今それを考えてもきっと答えは出ませんもの。

 誰も答えを持たない問いかけに時間を使うよりも、もっと有意義なことに使うべきなのですわ。生きている方にとって時間は有限なのですから。


『そんなことよりも、もっとできることに目を向けるべきです』

「そんなこと……私の疑問は"そんなこと"扱いか……」


 仕方がないのです。だって誰にも分からないのですから。


『ですので!わたくし少し、色々と見て回って来ようかと思っておりますの』

「城内を、か?どうやって?」

『もちろんこうして飛びながら、ですわ!』

「いや、方法ではなく。壁が意味をなさない存在である君が、知らない場所をどうやって覚えながら進むのか、と」

『あ……』


 確かに、そうですわね。

 先ほどのように勢いあまってどこかの壁に向かっていって、そのまま何枚の壁をすり抜けたのかも分からなくなってしまったら。

 確実に、迷子決定ですわ。


「城内図は簡単に見せられるようなものではない上に、この部屋には存在していない」

『それは……困りましたわね』


 けれどここにいても、執務のお邪魔になってしまうだけですし。

 何よりわたくし、今ここにいても出来ることは何一つありませんもの。


「壁をすり抜けられるのであって、壁の向こう側が見えるわけではないんだろう?」

『はい』

「それなら、そうだなぁ……」


 サラリ、と。肩に届くか届かないかくらいの長さの金の髪が、リヒト様の動きに合わせて揺れて。

 顎に手を添えて考え事をなさるのは、もしかしたら癖なのかしら?


「たとえば、この部屋だけでも覚えておけばどうだろうか?窓の外へ出れば、ある程度の位置は把握できるだろう?」

『な、なるほど!確かにそうですわね!』

「それと、そこから真上に向かって城全体を見下ろしておくといいんじゃないか?最悪そこからこの場所へ戻ってくることが出来るかもしれないだろう?」


 なんと!!リヒト様はとても頭脳明晰でいらっしゃるのですね!!

 わたくし、どうやって壁をすり抜けないようにするかを考えておりましたわ。


『さすがですわ!!では、早速行ってまいります!!』

「夕方までには戻ること。それと、迷子にだけはならないように。誰も存在を知らない上に、まず見えないことを考えると、最悪見つけられないだろうから」

『は、はい!』


 迷子にならないよう、気を付けます。


「あぁ、それと。もしも誰か他に君を視認できる存在がいたら、その時は教えて欲しい」

『承知いたしましたわ。では、窓から失礼いたしますわね』

「あぁ。行っておいで」


 不思議なほど優しい声で見送られたわたくしは、リヒト様の提案通り窓から一度外に出てみて。そこからまっすぐに上空へと向かうのでした。

 目指すはこのお城の最上部よりもさらに上。本来であればできることではない、上空からの眺めを堪能……いえ、確認するために。



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