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53.それぞれへの断罪

 驚くほどの速さで、ジェロシーア様とアプリストス侯爵が罪人として捕縛され。さらには罪人の子として、フォンセ様が城内の一室に軟禁されてから僅か一週間で、ジェロシーア様とアプリストス侯爵一家の処刑が決定されました。

 フォンセ様はリヒト様への直接的な攻撃はされていらっしゃらなかったので処刑だけは免れたのですが、それでも貴族たちへの様々な仕打ちの数々は到底許されるものではなく。身分を剥奪の上国外追放という、ご本人にとってはかなりつらい罰が下されたのです。



 そうして、それぞれへの断罪がついに本日、施行されることになっているのですが――



『地方から次々にお戻りになっている貴族の皆様方は、本当にお仕事が早い方々ばかりですわね』


 まず最初にリヒト様の執務室の変更とお引越し、それから正式な後継者としての発表、さらには民への重い課税の軽減など。驚くほどの速さで全てが同時進行で行われていたのです。

 その上で刑の執行の準備に、国中へ事の顛末の伝達。


『これで民の怒りの矛先は全て、アプリストス家の一族に向けられましたし。貴族だけではなく王族まで被害者として伝えるあたり、やり手ばかりで恐ろしいですわね』


 これでまだ地方からお戻りになった方は半分ほどだというのですから、確かにこれでは色々と回らなくなるはずです。

 特に今回は前触れもなく突然地方に飛ばされた前回とは違い、常に連絡を取り合い連携を取っていたとの事ですから。勢力図はあっという間に逆転してしまいましたもの。

 今や第二王妃派や第二王子派だった貴族たちは、随分と肩身の狭い思いをしているようですが。その分今まで民を苦しめ甘い汁を吸って来たのですし、報いは受けて当然ですわね。


『それにしても、斬首刑だからわたくしだけお留守番、なんて。あんまりですわ、リヒト様』


 いえ、確かに人様の首が落ちるところなど、直接この目で見たいとは思いませんけれども。

 あぁちなみに、物凄く暴れたそうですわ。お三方とも。

 フォンセ様は軟禁でしたけれど、今までとは全く違う生活ですものね。今後はさらに酷くなることでしょうし。


『耐えられるのでしょうか?あの我儘な王族育ちのお方が』


 ただ今日の母親と祖父母の刑の執行には、立ち会わせるのだとか。ご自分たちがして来たことの責任の重さを、その現実をその目でしっかりと確認させるためらしいのですが……。

 正直、泣き喚くだけで終わると思いますわ。自覚の有無以前に、そういった育て方をされていないのでしょうし。

 しかもそのまま馬車に乗せて、国境を越えた辺りで放り出してくるのだとか。

 そのお話を聞いた時に、今までどれだけ皆様がつらい思いを耐えながら日々を過ごされてきたのかと、つい遠い目をしてしまいましたもの。

 重犯罪者の血縁とはいえ、まさか元王族を放り出す、なんて。そんなお言葉が当たり前のように皆様の口から出てきたのですもの。遠い目もしたくなりますわ。


『けれど……まだバッタール宮中伯は軟禁中なのですよね。今日の処刑には立ち会う予定との事でしたが……』


 リヒト様暗殺計画に関わった貴族たちのリストが、バッタール宮中伯の仕事場から見つかったとの事で。本当に関係がなかったのかを、現在も取り調べ中なのです。

 ご本人曰く、怪しいと思われる人物と明らかに問題を起こした人物をリストアップしていただけの代物、との事なのですけれど。

 それよりもわたくしとしては、そんなものをバッタール宮中伯がしかも仕事場に残していたことの方に違和感を覚えますわ。


『あのバッタール宮中伯が、そんなミスを犯すでしょうか?』


 むしろどなたかが、捨てられたはずのリストを拾って来たのではないかと。わたくしはそう予想しているのですが、果たして真実は如何なるものなのでしょうね?

 そんな風に一人、部屋の中で様々なことを考えていると。


『リヒト様……』


 突然外から聞こえて来た大歓声に、まさに今刑が執行されたのだと理解は致しましたが。果たしてあの方の胸中は、晴れやかなものになっていらっしゃるのでしょうか?

 それに……。


『本来の正しい在り方だと、分かってはいるのです。けれどやはり、寂しいものですわね』


 唯一の王位継承権を持つ王族であり、第一王子として正しい人数の従者を連れていらっしゃるリヒト様は、それはそれは大変ご立派なのですが。

 代わりに気軽にわたくしが話しかけることが出来なくなってしまったのです。


『やはり、幽霊では駄目ですね。生身の人間ではないと……』


 朝と夜のリヒト様の私室で二人きりの時だけが、わたくしがリヒト様とお話出来る数少ない時間なのです。

 それがわたくしには、とても……


『とーっても寂しいですわ、リヒト様』


 もしかしたらもう、わたくしの役目はそろそろ終わりなのかもしれない、と。最近ではそう、思い始めていたりするのです。



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