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49.見つけましたわ!!動かぬ証拠!!

「それで?」

「ジェロシーア様より、機密文書が届いておりました」

「内容は?」

「リヒト王子の暗殺計画について」

『いきなりですわね!?』


 書斎の扉を家令が閉めるのを確認してバッタール宮中伯が問いかけた途端、まさかの内容が飛び出すのですもの。

 確かにこれは、玄関ホールや食堂で話すような内容ではありませんわね。


「まったく……。あの第二王妃は相当頭がおかしいな。文書で残してどうする」

「その通りでございますね」

『同感ですわ!』


 普通そういった物は、残さない形で伝えるべきではありませんかね?

 書斎の机の上に置かれた手紙を手に取って、その文字をバッタール宮中伯が目で追っておりますけれど……。

 ……ん?あら?

 今、バッタール宮中伯……ジェロシーア様の事を、馬鹿にしておられませんでしたか?


「俺が本当に味方だとでも思っているのか?馬鹿馬鹿しい」

『え……』


 えええぇぇ!?!?

 バッタール宮中伯、今ご自身のことを「俺」と仰いました!?それにまさかの、味方ではない宣言!?

 い、一体どういうことなのでしょう??


「けれどこれでまた一つ、アプリストス家を破滅へと追いやるための材料が揃いました」

「実行している時点で、第二王妃は実刑を与えられるが……第二王子に関しては臆病者過ぎて、貴族への仕打ちでしか刑を言い渡せない」

「おや、それは困りましたね。それでは第一王子へは何も?」

「嫌がらせ程度だ。厄介なことに、本気で命を奪おうとしたことは一度もない」

「それは、まぁ……本当に憶病な王子ですねぇ……」


 あ、あら……?一体今、何が起こっているのかしら??


「折角第一王子を生かしてやっているというのに、第二王妃たちを蹴落とせないようなら、意味がない」

「第一王子へ肩入れする貴族たちを、第二王妃たちが地方に飛ばし過ぎたせいでしょう」

「いっそ計画の順序を逆にするか?」

「それは難しいかと。正式にアプリストス家を断罪できる存在がいなくなってしまっては、それこそ意味がありませんから」


 これは、つまり……。バッタール宮中伯にとっては、アプリストス侯爵が敵、だということでしょうか?

 けれどそうなると、リヒト様を害そうとする黒幕とはまた別?


「どちらにしても王家は全員厄介だな。やはりいっそ、庶民や貴族を煽って反乱でも起こさせるか?」


 そんなことありませんでしたわぁ!!!!

 この方が黒幕です!!明らかに黒幕ですわ!!リヒト様!!


「現在王都に残っている貴族たちでは、まずもって成功いたしません。旦那様も、そのことはよくご存じではありませんか?」

「……そうだな。確かに、この間も(・・・・)そうだった」

『この間?』


 それも疑問ではありますが、なぜかお二人が同じ書斎机の後ろの本棚を見つめていることの方が気になりますわね。

 その本棚に、何かあるのですか?


『特に変わったタイトルがあるわけでもありませんし……まさかこの後ろに隠し部屋でもあるのですか?』


 貴族のお屋敷だからといって、そこまであるとは限りませんものね。

 でもほら、ちょっとだけ。万が一、なんてことがあるかもしれませんもの。

 それに壁をすり抜けて隣の部屋に行ってしまったとしても、幽霊ですもの。仕方ありませんわ。


 だからちょっとだけ、お邪魔いたしま――…………


『本当に隠し部屋があるんですの!?』


 覗いた先には、明らかな隠し部屋。しかも窓がない徹底ぶり。

 しかも……。


『あれは、まさかっ……!!』


 隣の部屋から漏れる僅かな明かりを反射しているのは、あの会合の日に見た金の仮面と銀の仮面。


『見つけましたわ!!動かぬ証拠!!』


 つまり金仮面の君はバッタール宮中伯で、銀仮面の君はその家令だったということですわね!

 そしてこれを理由に貴族たちを揺さぶれば、きっと問題なくバッタール宮中伯を捕まえることも出来るでしょう。


「どういたしますか?」

「どうもこうも……折角あちらから提供してくれた材料だ。これを持って、告発しに行く」

「よろしいのですか?」

「逆にあの頭の軽い女は、このことをどこかで口にするはず。その前に報告しなければ、今度はこちらが疑われる」

『疑うどころか、わたくしは確信してしまいましたけれどね?』


 そしてそれを今から、リヒト様に報告してしまうのですけれど。

 ただもう少しだけ。得られるだけの情報は持ち帰りたいので、立ち聞き……あ、いえ。浮き聞きをさせていただきますけれどね。



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