44.だっ!?む、無理です無理です!!だってわたくし、幽霊ですもの!!
「とにかく、だ。どちらにせよ、今すぐには無理だろう?」
『そうですわね。まずはバッタール宮中伯のお仕事内容も見てみたいですし、お屋敷の場所もこれから調べなければなりませんし』
「ならある程度準備が整ったら、教えてくれ」
『あら?わたくしてっきり、反対されているのかと思っておりましたわ』
「反対だ。反対だが、確かにトリアの言う通り今は誰も動かせない。そもそも人手も足りない」
なるほど。それで幽霊の手でも借りるしかないと、そう結論付けたわけですね。
流石リヒト様ですわ!合理的なご判断です!
「だからまずは、バッタール宮中伯を探りつつでいい。その中でもし彼以上に怪しい人物がいたら、その時はまた教えてくれればいい」
それにすぐさま頷いたわたくしに、リヒト様もどこか安心したようなお顔をして下さいましたけれど。
まさかそんなことを話した数日後。
『大変ですわ!!』
「……前にもあったな、こんなこと。で?一体今度は何なんだ?」
『私見てしまったんです!!賄賂が渡される場面を!!』
「……で?君はそれが誰なのか分かるのか?」
『お顔はバッチリと覚えております!!』
「話の内容は?」
『そちらも当然!!』
「……聞こうじゃないか」
などという会話が繰り広げられることになるなど、わたくしもリヒト様も予想しておりませんでしたわ。
あれは予想外でしたもの。バッタール宮中伯が通り過ぎた扉の前をわたくしも通ろうとしたら、なんだか怪しげな会話が聞こえてきてしまったのですもの。
そうなってしまったら、入らずにはいられないでしょう?
そんなこともありましたが、何はともあれ。
リヒト様から許可を得たわたくしは現在、バッタール宮中伯のお仕事ぶりを拝見させていただいているのですが……。
『むしろこの方、合理的かつ的確にお仕事を終わらせていらっしゃるのですね』
若干、お一人で抱える量を超えていらっしゃるような気もしますけれど。
といいますか、どこかこのお方、他人を信用していらっしゃらないような?
『部下に振れるお仕事も多いはずですのに、それもせず……』
かつ、昼食などはお一人でとられていたり、と。貴族として大切な社交の場に、一度も顔を出す気配がないのですもの。
宮中伯という地位にいらっしゃるにしては、他の貴族と関わり合いがなさすぎる気がいたしますわね。
『本来、大勢の方とのお付き合いが必要になるお立場のはずなのですけれど?』
確かにお仕事の量は多いのでしょう。ジェロシーア様やフォンセ様関連の問題事も、色々と処理しておられるようですし。
けれど全く時間がないかといえば、そうでもなく。ただどなたとも関わらないのがほとんどだというだけですが。
それもそれで、おかしな話なのですよ。
『お屋敷にも、最低限の人数しか配置されていないようにも見えましたし、ね』
どうにも、立場と振る舞いや在り方がかみ合っていないような。そんな違和感が日に日に強くなっていくのです。
ここはやはり、リヒト様に一言告げて調査すべきなのでしょうね。外から見える範囲でしか、わたくしはまだ判断できていないのですもの。
と、いうわけで。
『しばらくバッタール宮中伯のお屋敷に行ってまいりますわ』
「君のその唐突さは……どうにかならないのか?」
あら、おかしいですわね?ついこの間お話ししたばかりですのに。
もうお忘れですか?リヒト様。
『わたくししか自由に動けないのですから、使ってくださいませ』
王族として、第一王子として、人の上に立つ者として、最善の選択を。
幸いなことにわたくしは、誰にも害される事の無い存在ですもの。見えない、なんて。最強じゃありませんこと?
「はぁ……。どうせ、行くなと言っても無意味なんだろう?」
『当然ですわ!』
「断定した言い方をしていたもんな、そうだよな。君はそういう女性だ」
あら、よくお分かりですわね。
はじめから決定したことをお伝えしただけですもの。いくらリヒト様といえども、わたくしを止めることは出来ませんわ。
「じゃあせめて、行く前に抱きしめさせてくれ」
『だっ!?む、無理です無理です!!だってわたくし、幽霊ですもの!!』
それ以前に!!幽霊とはいえ異性であろう相手に向かって、なんてことを仰るのですか!!
リヒト様一体どうなさったのですか!?この間から少し様子が変ですわよ!?
5万PVを突破しておりました!!
いつもお読みいただき、本当に本当にありがとうございます!!m(>_<*m))ペコペコッ
ちなみに年末年始も普段通りに更新していく予定ですので。
明日以降は、もしかしたら普段よりかなり早く更新するかもしれませんが……。
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