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43.少し気になる事があるのです

「トリア。バッタール宮中伯は、登城後は毎日真面目に仕事をしてくれている。むしろ彼がいるおかげで、第二王妃陣営がまともに機能できていると言っても過言ではない」


 でしょうね。事実、あの方はどう見ても苦労人でしたもの。

 けれど。


「だからこそ、ほんの僅かにでも隙を見せないようにしているのだとすれば、かなりの切れ者だ」

『そうですわね。わたくしも、確実に怪しいと思えるような証拠はありませんもの。ただ……』

「ただ?」

『少し気になる事があるのです』


 僅かに。そう、ほんの僅かに。アプリストス侯爵とバッタール宮中伯がお話をされている時に覚えた、違和感が。わたくしの中から、消えてはくれないのです。

 そして、同時に。


『金仮面の君はバッタール宮中伯と同じくらいの瘦せ型で、やはり同じくらい背の高いお方でしたの』

「な!?」

『お声はその仮面のせいでハッキリとは分かりませんでしたが、もしもバッタール宮中伯のお屋敷からあの仮面が見つかれば……』


 それこそ、動かぬ証拠になるのではないでしょうか。


「どうしてそれを早く言わなかったんだ!!」

『アプリストス侯爵と並んでいらっしゃる姿を後から思い出して、そう思っただけなのですもの。確証はありませんわ』

「だがっ……!!」

『何より。バッタール宮中伯が本当に黒幕なのだとすれば、ですよ?疑いを持ったことが知られた時点で、リヒト様の身の安全は保障されない可能性が高くなります』

「それ、はっ……」


 どこから関わっていらっしゃったのかは分かりませんが、少なくとも金仮面の君にとってリヒト様が邪魔な存在であることに変わりはないのです。

 これ以上の危険を冒す必要など、ありませんでしょう?


『それにまだ、バッタール宮中伯が黒幕だと決まったわけではありませんわ。たとえ違ったとしても、黒幕の存在を確信している上に探しているなどと、他の方に知られたら……』

「……それこそ終わり、か」


 今はまだ反抗する意思を見せず大人しくているからこそ、強硬手段には出られずに済んでいるのだと。そう以前おっしゃったのはリヒト様ご自身ですもの。

 であれば、最後の最後まで気取られてはならないのです。必要なのは、最後に全ての罪を詳らかにするその瞬間まで、今以上に害があると思わせないこと。


「だが、どうする気だ?城の中で怪しい動きをしたことなど、一度もない相手だ」

『だからこそ、わたくしなのですよ!わたくしならどこへでも気付かれずについて行けますもの!』

「まさか……バッタール宮中伯の屋敷にまでついていくつもりか!?」

『その通りですわ!!』


 むしろそこからが本番ではありませんか!!

 幽霊であるからこそ、肉体を持たないからこそ、わたくしはどこへでも難なく侵入することが可能なのですから。


『たとえ隠し部屋があろうとも、必ず見つけてみせますわ!!』

「君は思い切りが良すぎる!!」


 はぁ~~~~と、これまた今まで以上に大きなため息をついておいでですけれど。

 リヒト様?これは危険な任務でも何でもないのですよ?

 むしろわたくしにとってみれば、散歩感覚と変わらないのです。お城の中から別の方のお屋敷へと、場所を移しただけなのですから。

 そもそもわたくし、リヒト様以外の方に見えない存在ですし。


『わたくしが幽霊としてリヒト様とお会いしたのも、このためだったのかもしれませんわよ?』

「そんなわけあるか。都合が良すぎる」

『あら。でしたら余計、わたくしを使っていただかなくては。それにそもそも、わたくし以外のどなたにできるというのですか?』

「それは……そうなんだがな?そういうことじゃなくて、だな」


 はぁ、と。もう一度今度は小さくため息。しかも片手で頭まで抱えられてますけれども。

 リヒト様リヒト様、これはチャンスなのですよ?しかも、一世一代の。

 それともわたくしは、そんなに信用がないのですか?ちょっと悲しくなってきましたわよ?幽霊ですけれど、泣きたい気分ですわ。


 むしろ、本当に泣いてやろうかしら?



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