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33.謁見(仮)、ですわね!!

「トリア」

『はい、なんでしょうか?』


 会合での内容をお伝えした夜から、しばらく経ったある日のことでした。

 それは唐突に。えぇもう本当に、唐突にリヒト様はおっしゃられたのです。


「陛下への謁見の日程が決まったから、君はいつも通り私についてきてくれ」

『は……はい!?陛下への謁見ですか!?!?』


 確かに。確かにリヒト様にとって陛下は身近な存在でしょう。えぇ、えぇ。

 何と言っても、御父上ですものね。分かりますわよ。分かります、けれども……。


『あまりにも突然の告知ですわね!?』

「そうか?前に言っただろう?やるべき事ができた、と」

『やるべき事がそれですの!?』


 いきなり陛下への謁見まで話が飛びますの!?そういった類のものでしたの!?


「まぁ、形だけだ。実際にはどこにでも第二王妃派(あちらがわ)の人間がいるだろうから、直接的なやり取りはできないさ」

『なるほど。つまり謁見(仮)、ですわね!!』

「ははっ、なんだそれは」


 あらリヒト様。笑っていらっしゃいますけれど、重要なんですのよ?特に、わたくしにとっては。

 だって幽霊が陛下への謁見についていく、なんて。前代未聞ではありませんか!

 そもそも幽霊を認識できる方が、今までどれ程いらっしゃったのかは存じ上げませんけれども。


「幽霊は自由にどこへでも行き来できるんだろう?だったら今も謁見の間には、他の幽霊がいるかもしれないじゃないか」

『まぁ!それはそれで大問題ですわね!』


 常に幽霊が浮いている謁見の間というのは、あまり考えたくないものですわ。しかも機密事項が聞き放題ではありませんか。それではきっと大勢の方が困ってしまわれますわね。

 それに、リヒト様?自由に行き来できるのはわたくしだからであって、全ての幽霊がそうとは限りませんわよ?

 とはいえわたくしも、他の幽霊の方にお会いしてお話をお聞きしたことはありませんけれども。

 実際のところ、どうなのでしょうね?


「どうせたいしたことは話してない場所だ。聞かれて困るような内容なら、もっと別の場所でするだろう?」

『以前の会合のように、ですか?』

「そうだ。そしてその会合の内容が問題だった、と。私だけではなく、両陛下もそう判断を下されたんだ」

『けれど、それでしたらなおさら謁見という形にしてしまうのは……』

「逆だトリア。だからこそ、だ。下手に親子水入らずなどと言って三人だけで話せば、いらぬ勘繰りをされる可能性が高い」


 実際ジェロシーア様たちにとっては、お三方が揃ってお話をされるのは避けたいところなのでしょうね。

 なにせあの方たちが積極的にリヒト様の暗殺を企てていることは、皆さまご存じでしょうから。


『ですがどちらにせよ率直に意見できない状況なのであれば、同じことではありませんか?』

「そうでもないぞ?私は父上の性格も母上の性格も、よーっく知っているからな」


 ん……?両陛下方の、ではなく?リヒト様、今、父上・母上という言い方をされましたよね?

 つまり、そこに何らかの意味がある、ということなのでしょうか?


「まぁ、行けばわかるさ。私たち親子が、どうやって今まで情報を交換してきたのかが、な」


 不敵に笑うリヒト様に、どこか安心感を覚える一方で。

 一抹の不安を感じてしまうのは、なぜなのでしょうね?


(いえ、それ以前に。どうして王族とはいえ親子であるにも関わらず、普通に情報の共有や交換ができないのか、と)


 そこを疑問に思うべきなのでしょうが。

 残念ながら城内の状況を、よーーーっく知ってしまったわたくしとしては。もはや仕方がないことなのでしょうねと、他人事ながら諦めしか残っておりませんでしたわ。



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