32.そもそもの目的は何でしょうか?
「だがまぁ、今までその会合とやらでその話が出てこなかったのも妙だな」
『わたくしもただ会合としか聞いておりませんでしたが、そもそもの目的は何でしょうか?』
「さぁなぁ?そればっかりは、主催者に聞いてみないと分からん。ちなみに当然だが、第二王妃と第二王子はいなかったんだろう?」
『お見かけしておりませんわね。金仮面の君ならばいらっしゃいましたけれど』
「金仮面?なんだそれは?」
『聞いて下さいませリヒト様!銀の仮面を被った方が進行をされておりまして、金の仮面を被った方が到着されると同時に会合が始まりましたの!』
「なるほど?つまりは、その金の仮面の男が主催者なのだろうと」
あら?仮面の色については触れませんのね?
なかなかに面白い状況だと思うのですけれど。金の仮面と銀の仮面が揃った先に、黒い仮面を被った大勢の男性貴族たち。
やはりあの場を実際に目で見ていただかなければ、面白さは伝わらないのでしょうか?残念ですわ。
「普通に考えれば、アプリストス侯爵なんだが……。その金の仮面の男は、でっぷりと太っていたか?」
『金仮面の君ですか?いいえ。むしろどちらかと言えば、痩せておられたと思います』
「背は?」
『高い方、でしょうか?けれど仮面で声がくぐもっておりましたので、聞き覚えがあるかどうかは分かりませんでしたわ』
「そうか」
それっきり、リヒト様は考え込んでしまわれましたけれども。
わたくしとしては、もう少し情報が欲しかったところではありますわね。いっそ、金仮面の君の後をつけてみればよかったかもしれませんわ。
わたくしとしたことが、とんだ失態ですわね。
「ちなみに、次の会合の予定は?」
『また同じ期間の後に、とだけ。気になるようでしたら、また情報を集めてきますわ!』
「いや、いい。それよりも先にやるべき事ができた」
『やるべき事、ですか?』
「あぁ。だがまぁ先に、今日はいい加減休むことにする」
ハッ!!そうでしたわ!!
そもそもこんな遅くまでリヒト様にお付き合いいただくなんて、わたくしったらなんて失礼なことを。
気が利かない幽霊なんて、駄目ですわね。
「あぁ、そうだ。トリア」
『はい、なんでしょう?』
「次に出かける時は、必ず私に一言告げてからにしてくれ。目が覚めた時に急にいなくなっていたのでは、驚くだろ?」
今回は特に、ご心配をおかけしてしまったようですし、ね。
『えぇ、そうですわね。次回からは必ずお伝えしますわ』
「そうしてくれ。それじゃあ、お休み」
『はい。お休みなさいませ、リヒト様』
結局彼らの最終的な目的は分からないままでしたが、おそらく今まではリヒト様をどう毒殺するのかなどが話し合われていたのでしょうね。
正直なところ、リヒト様暗殺だけが本当の目的のようには思えなかったのです。なんとなくの勘ですが。
なにせ暗殺だけならば、彼らがわざわざ集まってまで話す必要はないのですから。しかもおそらくは第二王妃と第二王子にすら知られないようにしてまで。
(リヒト様が仰った通り、普通であれば主催者はアプリストス侯爵になるはずなのですが……)
そうではなかったという所にも、疑問を覚える所ではありますわね。
本当に、リヒト様暗殺だけが目的なのか。それとももっと、別の目的があるのか。
リヒト様に関する事柄は全て、何かしらの足掛かりでしかない可能性もありますもの。そちらの線も考えてみた方がよろしいのではないかと考えてしまうのは、流石に邪推しすぎでしょうか?
(いずれにせよ、モートゥ侯爵の今後の動向には要注意、ですわね)
味方のふりをして近づいてくる計画のようですし、そうなるとリヒト様も断りづらい状況に追い込まれてしまうかもしれませんもの。
それだけは、阻止しなければいけませんわ!!