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30.ただいま戻りまし――……あら?

「今、何と?」

「敵対するのが問題なのであれば、数少ない味方だと思い込ませてどこかへ閉じ込めてしまえばいい。ついでに執務も全てこなしていただけばいいさ」

「な!?執務まで!?」

「だが確かに有効かもしれないぞ!?それならジェロシーア様にもフォンセ様にも、自由にお過ごしいただける!」

「お二人から不満が出さえしなければ、我々も好きにできるんだ。単純に始末するよりも、使い倒してしまえばいい」

「だがどこに監禁するんだ?」

「この間さる侯爵様が、お屋敷の一室をお貸しくださると話してくださった。その方に頼んでみたらどうだろうか?」


 あらあらまぁまぁ。これはまた、一石を投じるどころではありませんわねぇ。

 侯爵様の一言から徐々に徐々に広がっていく波は、部屋全体を飲み込みそうな勢いで圧倒的賛成多数になっていくのですもの。


『不満が溜まっていたからなのか、それとも侯爵様の計算なのか。どちらにしても、本当に恐ろしい方ですわね』


 上から見えるその口元がかすかに弧を描いている様子からも、ご自分の思い通りに事が進んでいらっしゃるのでしょうし。

 単純にリヒト様を排除するだけではなく、今後の執務についても今まで通り押し付けられれば良い、というところなのでしょうね。


『確かにあの(・・)お二人ならば、一生執務から解放されるというだけで納得しそうですわね』


 しかも誘拐ではなく、味方を装うなど。発想が恐ろしいですわ。

 リヒト様を取り巻く現状をよくご存じだからこそ、出てきた発言なのでしょうし。


「だがあの警戒心だけは強い第一王子を、どうやって連れ出すかが問題だな」

「第一王子付きの筆頭執事たちも問題だろう?」

「あれらは自分の仕事に自信があるだけの、ただの小間使いだ。陛下と第一王妃の推薦という後ろ盾がなくなれば、どうとでもなる」


 なるほど。それで身近な方々の中には、まだ多くの味方が残っていらっしゃるのですね。

 確かに陛下の意向であれば、いくら第二王妃といえども従わざるを得ませんからね。考えましたわね。


「お静かに!!金仮面の君が到着なされました!!本日の会合を始めます!!」

『金仮面の君!!』


 なんて面白いお名前なんでしょうか!!一体どこのどなたがお考えになったんですの!?

 はっ!!もしや先ほどから壇上にいらっしゃる方は、銀仮面の君とおっしゃるのでは!?


『何ですのこの会合!お名前だけならば、この国一の面白さなのではありませんか!?』


 内容はさておき、そこだけならば国中に笑いの渦を巻き起こせますわ!!金仮面の君と銀仮面の君が仕切る会合、だなんて!!

 あぁおかしい!!


「先ほど、面白い話題が聞こえてきたようだが?」

「単純に第一王子を始末するのではなく、どこかへ監禁して執務を死ぬまで続けさせようということらしいですよ」


 あらあらまぁまぁ。先ほどよりも過激になりましたわねぇ。笑っている場合ではありませんでしたわ。

 それに。


「……」

『だんまり、ですわね』


 話題を提供した侯爵様は、まるで我関せず。

 恐ろしいことに、あれから会合が終わるまで一言も発言されませんでしたの。

 それなのに、去り際。馬車に乗る寸前。


「扱いやすい」


 なんて!!

 ボソッと!!ぽろっとそんなことをおっしゃったのですよ!?!?

 本当に、恐ろしい方!!


『けれど、収穫はありましたわね』


 会場から真っ直ぐに王城を目指して、リヒト様の私室へと向かう途中で内容を思い出しながら、やはり思うのです。

 侯爵様は、何が目的なのでしょう、と。


『もう少し、探ってみたい所ではありますわね』


 どうにもあの方の言動が、怪しいのに不自然に思えてしまうのです。ただのわたくしの勘なのですけれどね。

 なので今後も侯爵様には注意すべきと、一人心に刻みつつ。既に夢の中に旅立たれているであろうリヒト様を、起こさないようにそっと……


『ただいま戻りまし――……あら?』


 お部屋に戻ってきたはずのわたくしの目の前に。


「どこに行っていたんだ、トリア」


 なぜか、ジト目で見上げてくるリヒト様がいらっしゃったのですが。



 なにゆえ??



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