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目覚めたら森の中だった。

ありえない状況に、一気に覚醒し上体を起こす。


「……は?」


状況を整理してみよう。

まず名前は椎名優斗。

ごくごく平凡な18才の高校生で、昨晩は実家のベッドでスマホを見ながら寝落ちした。

そして起きたら森に寝巻きがわりのジャージで横たわっている。


「いや、意味わからん」


幸いスマホだけは手元にあった。寝落ちしたままずっと握っていたんだな。

誰かと連絡取ろうとロック画面を開く。


「うそだろ、圏外かよ」


森の中だからか、電波が全く飛んでいない。それどころか、位置情報もなにも分からなかった。

こんなことってあるのか。

夢かと思ったが、後ろ髪に張り付く落ち葉、硬い地面など、全ての感覚がリアルすぎる。

夢じゃない。

そう思うと、急に焦りと不安が込み上げてくる。

その時だった。


「ゲギャギャ」

「なんの声……?」


振りえると、小柄で緑色の肌の怪物がいた。

アニメや小説で見たことがある、まごうことなきゴブリンだった。

俺も唖然としていたが、ゴブリンは一瞬止まっただけで直ぐにこちらに向かってきた。

どう見ても友好的ではなく、右手には棍棒を持っている。

殴られたら痛いでは済まなさそうだった。


「ギャギャ!」

「う、うわぁーッ!」


俺は飛び上がるように立ち上がり、走る。

一応、現役のスプリンターで脚には自信がある。

ただ今ばかりは思うように脚が回らず、何度も転げそうになりながら必死に走った。



◆◆◆



「はぁ、はぁ……嘘だろ、なんだよさっきの」


10分は走っただろうか。

必死に逃げて、振り返るともうゴブリンの姿はなかった。

信じたくはないが、森の中にいることもさっきのゴブリンも、全て現実の出来事のようだ。

こういう状況は、創作物の中でよく出てくる。

この状況はーー


「異世界に迷い込んだ……?」


あり得ない。

そう思うが、だったら今この現実はなんなんだ。

あり得ないことが、起こってしまっている。


異世界物といえば、聖女に召喚されたり、神様に何かをお願いされたり、殆どの場合は理由や目的がはっきりしているものだろう。

だが自分の場合は全く何にも無い。

わかっているのは、どこまでも続く深い森にいることと、この森にはゴブリンが住んでいるってことだけ。

人間のいない世界かもしれないし、ゴブリン達と俺しかいない可能性だってある。


考える限り、最悪の異世界転移だ。


「とりあえず、いまやるべきことはなんだ」


不安からか、独り言が多くなる。

優先度が高いのは食料と水の確保、そして安全な寝床の確保か。あとは武器になりそうなものを探して。人探しとかはまずこの1日を生き残ってからだろう。

ただ、ここが本当に異世界なら絶対に試したいことが一つ。


「ステータスオープン、おおっ」


ーーーーーーーーーーーー

椎名優斗 異世界人

職業:召喚士★☆☆☆☆☆

【召喚獣】

ファング(ウルフ種)

【スキル】

鑑定

召喚獣強化Lv.1

ーーーーーーーーーーーー


脳内にステータスが表示された。

どうみていいのかよく分からないが、いろいろ能力を持っているみたいだ。これがいわゆるチート能力だったらいいが。

兎に角いろいろ試してみよう。


「ファング、ファング!……ファング召喚!おおっ」


召喚、と付け足したら、前方の地面にうっすら光る魔法陣が出現した。召喚の条件はまた検証しないと。

今はそれよりも目の前の魔法陣だ。

数秒かけて現れたのは、真っ白な小型犬だった。


「ワン」

「かわいい……けど、ちっちゃいな……」

「ワ、ワンッ!」


こちらの考えが分かるのか、抗議するように吠える召喚獣。こんなのでさっきのゴブリンどどう戦うんだろうか。まあ、勝てないまでも番犬になってくれれば少しは休む時間もできるかもしれないな。

幸い、走れば逃げ切れる事はわかってる。


「よろしくファング」

「ワン!」


任せろ、というように吠えるファング。

そして俺はため息をついた。

こんな状況でも、それほど取り乱さない自分が不思議だ。


でも、本当にこれからどうしよう。


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