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不可能だ。出来るわけがない。

 必要な人間?

 異形狩り風情が? 会社を立ち上がげている私よりも? 多くのミュータントを従えているにもかかわらず? あんな邪魔者が?


「――ふざけるな」


 彼女の顔は怯えたまま。

 だが、なんだその目は。

 まるで大罪人を見るような目つきは。親の仇を見つけたかのような視線は。

 腹立たしい。鬱陶しい。煩わしい。忌々しい。

 所詮色眼鏡で見ているだけのくせに何を偉そうに。

 もういい。暇潰しになると思って口まで塞がなかったが、誡斗の死が確定した今ではもう必要ない。


「おいお前ら。この女、犯していいぞ」

「え……?」

「マジっすか⁉ へへ、実はずっと我慢してたんすよね」


 花莉奈を連れてきた少年が嬉々として声を上げる。


「でもいいんすか? 売るなら手垢は少ない方が良いと思うんすけど」

「どうせ異形狩りに抱かれているだろう。構わんさ」


 モニターの中の誡斗は、虫の息ながらも未だに生きている。


「それに、どうせなら見せつけてやるのも面白い。冥土の良い土産になる」

「へへへ、それじゃあ遠慮なく!」

「い、いや! 止めて!」


 ただでさえ細い腕が拘束されては抵抗もままならない。

 花莉奈は少年に組み伏せられ、他の男達が服を剥いで行く。

 安物のブラウスは力任せに引き裂かれ、強引に股を広げられ下着をあらわにする。

 暴れたところで、純粋な暴力には無意味なものだ。


「準備が出来たら言え。カメラに映す」

「はいっす!」


 返事は良いのだがまともな敬語も使えないのか。

 晶が自宅に他人を入れる場合、花莉奈のような例外を除けば、他より優れた能力を持っている者に限る。

 そういった意味ではこの少年も優秀なのだが、剛己が見繕ったミュータントはどうも口が悪い。マナーも知らず、正直連れて歩きたくない人種だ。

 どうやら強姦の才能もあったらしく、順調に衣服が引き剥がされていく。

 そんな中、再び音がなる。


 部下達もとっさにモニターを見やる。

 轟くような破壊音。恐らくまた誡斗が壁に埋まったのだろう。

 煙幕の残滓と破壊によって散った破片や埃で映像は少し見づらいが、先程と似た光景が映し出されている。


「今度こそ死んだか? やれやれ、相変わらず愚弟は空気が読めない」


 もう少しで誡斗の面白い表情が見られたかもしれないというのに。

 まあいい。元々異形狩りの始末が本来の仕事だ。達成出来れば問題ない。

 花莉奈については、そのまま犯させていいだろう。一度は許可したのだ。どうせ裏で多くの男を相手して貰うことになるし、部下達にゴネられても面倒だ。


 ……カーペットは新しくするか。


 煙が晴れていく。そこには想像通り――ではない景色が広がっていた。


「なっ……剛己⁉」


 先程と似た光景ではあった。しかし、壁に埋まっていたのは紛れもなく我が弟。

 ありえない。剛己は優れた体格と同時に能力の副産物として高密度の筋肉を得ている。耐える、支える、攻撃の為の筋肉は常人とは比較するのが馬鹿らしい。その証拠に体重は自分の身長以上という規格外の存在だ。

 それがなぜ、こんな無様な目に?

 カメラを動かし部屋全体を見渡す。

 誡斗ではない。不可能だ。いくら身体能力が優れていてもただの人間に、ましてや死に掛けの人間に出来るわけがない。

 応援か? いつの間に?

 探す。そして見つけた。唯一立っているその人物を。


 ――誡斗だった。


 相変わらず血だらけでありながらも、幽鬼が如く立ち上がっていた。

 何故? いったいどうして?

 理解出来なかった。だが無理矢理思考を冷静にする。

『どうやってやったか』はどうでもいい。こちらには彼の抵抗を奪う切り札がある。

 マイクのスイッチを入れる。


「黒川誡斗! こっちには人質がいるのを忘れたか⁉」


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