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私が振った幼馴染の式典行ってきました

作者: 守護霊

処女作です

私はフローラ。王の妾。9人いる中の一人。

今日はS級冒険者式典に行ってきた。

昔、私が振った幼馴染の冒険者を見に。



————————————————————————————————————————————————————————————



少し昔の話をしようか。

五年前、私は幼馴染のクロちゃんと冒険者をしていた。

因みにクロちゃんの職業はどこにでもいるただの剣士。

それに比べて私は貴重な聖魔法が使える魔法使いだった。

それでも私は彼に上と下がない同格を要求した。




冒険者というのは大変だ。

私がクロちゃんと旅をしていたころはお互いC級。

報酬はそこそこ。

宿は小さいし、ベッドはちょっと固い。

食事は毎回美味しいものが食べられるとは限らない。

依頼が終わらなかった時は野宿もした。




だからクロちゃんと夢を語り合ったときに言った。

私は絶対に幸せになるって。いつか大きい家に住んで、毎日美味しいもの食べて、毎日ふかふかのふとんで寝る。そして優しくてかっこいい王子様と結婚するって。

クロちゃん、いつもこの夢を聞いて鼻で笑ったよね。

自分だってS級冒険者になるのが夢だって言ってたのに。

私も笑ってやったよ、クロちゃんの夢。




ある日私達は国を襲ってきた災害級の魔物と戦った。

国の全勢力で戦った。

とても強かったけど、私の聖魔法で辛うじて退治できた。





その後、私に国の王子から縁談の話が来た。

聖魔法を持つ美しい君が欲しいと言われた。

これで古い宿に泊まることも野宿も美味しくない料理を食べることも固いベッドで寝ることもない。

かっこよくて優しい王子様が愛してくれる。

嬉しかった。夢が叶ったんだ。




でもクロちゃんは喜んでくれなかった。

それどころか私に行くなと言った。

顔を真っ赤にして、私を阻めた。

なんで?クロちゃんなら一緒に喜んでくれると思ったのに。

祝福してくれると思ったのに。

私は怒った。




そしたらクロちゃんは私にこう言った。




「お前の事が好きだからだよ!」




びっくりした。いままで知らなかったもん。

でも、クロちゃんには悪いけど、私は夢を叶えたい。

だからクロちゃんに私は言った。




「ごめん」




そう言って私はその場を去った。

去り際、彼の泣き声だけが響いた。



————————————————————————————————————————————————————————————



王宮に入った後、私の人生は変わった。

何もしなくても部屋がきれいで、

何もしなくても可愛いお洋服やアクセサリーが増えて、

何もしなくても美味しい料理が食べられて、

何もしなくてもふかふかのベッドで寝れて安全に過ごせる。




これを望んでいたはずなのに、私は虚無感を感じていた。

妃になるための知識や、礼儀の勉強は苦じゃなかった。

でも特別楽しくもなかった。




王様の事は嫌いじゃないけど好きでもない。

向こうもただそれなりに好きってだけだと思う。

それはそうだよね。9人いる内の一人。

私、こんなに人に愛されたかったって初めて知った。




昔冒険した自分を思い出す。

あの頃は楽しかった。

毎日冒険して新しい料理をして野宿して夢を語り合って。

新しい何かを発見するときも、やったことを再度やることも全部全部好きだった。

あの日々が私の幸せだと王宮に入った後でようやく気付いた。




私の今の日々は王宮の事を少し手伝って、

侍女に淹れてもらったお茶を飲み、

王宮のお庭で散歩して、

たまにお茶会に呼ばれて、

たまに王に抱いてもらって、

たまに夜に一人で泣く。




私、いつからこんな弱くなっちゃったのかな。




それとようやくわかったよクロちゃん。あなたへの気持ち。

遅かったけど、私もあなたへの気持ちに気づいたよ。

今更気づいちゃった。

私も別れたくなかったんだね。

寂しかったよね。辛かったよね。

フっちゃってごめんね。

せっかく引き留めてくれたのにごめんね。



————————————————————————————————————————————————————————————



式典の日。

五年ぶりにクロちゃんを見て胸が高鳴った。

連れ出してほしいのかな?いやいやそんな馬鹿なと自分で思う。

私は王妃。そんな我儘はできない。

こんなことを考えてる時点で既に私は自分勝手だと思う。




それとクロちゃんの隣に女の子がいたのを見て肩の荷が落ちちゃった。

元奴隷でクロちゃんがシロって命名したらしい。

この世に五人しかいない精霊使いだって。

あの子にも王宮入りの話がいったみたいだけど、断ったみたい。

生涯ご主人様を支えるんだって。





あーあ、クロちゃんの隣はもう空いてないんだな。





私がいなくても幸せそうだな。





クロちゃん、あの後声掛けてくれてありがとうね。

なんで今まで遊びに来てくれなかったのって聞いたら、

今はシロがいるからようやく自分に自信が出来たのかもしれない。だから来れた。だって。

あの時は必死に涙が出るのを抑えたよ。



クロちゃん、これからシロちゃんと世界を回って冒険するんだって。

お屋敷買ってのんびり過ごすのは性に合わないらしい。






いいなあ。






(もし、私があの時クロちゃんに着いていってたら、今もクロちゃんの隣に居られたのかな・・・)

なんてたらればはいらない。

私の恋はここで終わり。

ようやく失恋できたよ。クロちゃん。

また会えたら嬉しいけど、あなたはもう二度と来ないだろうから、

「さよなら、クロちゃん」

とても小さな声で、私はぽそりと言った。




「どうかしましたか、フローラ様。」

「・・・ううん、なんでもないよ。アルカ。」

私の侍女で親友のアルカ。

二人きりの時は上下関係なしにしてって言ったのに断られちゃった。












わたしの王宮での暮らしはこれからも続いてく。




私も前を向いて歩かなくちゃ。




手始めに王宮でできる好きなものを探すのはどうかな?



























その前に、少しだけ泣かせてね。




日本人ではないので言葉が不自由だったら申し訳ありません。

ここまで読んでくださった方ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1つのイベントに焦点を当てて、主人公の心情や思い出が淡々と語られていてとても良かったです。
2020/07/16 11:06 退会済み
管理
[一言] 切ないね。 面白いよ、こういうカタルシス系の物語を量産してくれたら嬉しいです。 新作を期待します。
[一言] なんでもほしがる王宮が嫌だ
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