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いい加減ベッドから出て出かける準備をした。
あっという間にお昼の時間だ。
二人でいると時間の流れが早すぎる。
それだけ楽しいってことなのかな、そう思うとまた嬉しさが込み上げてくる。
テーブルに置いてある瞬くんのスマホが鳴り出し、私は洗面所にいる瞬くんを呼ぶ。
「瞬くーん、電話鳴ってるよー。」
呼びかけに、瞬くんは急いでスマホを取った。
「もしもし?」
もしかして仕事の電話かもと思って、私は邪魔にならないように静かに待つ。
「…え?うん、あるけど。わかった。送るよ。」
わりと短い会話で電話を切ったかと思うと、瞬くんは不思議そうな顔をして私を見つめた。
よくわからなくて私は首を傾げる。
「母が、今月の冊子を何冊か送ってほしいって。」
瞬くんは、リビングのテーブルの上に乱雑に置かれているタウン誌を手に取った。それは私も毎月欠かさずにチェックしている冊子だ。
「瞬くんが作ってる冊子だね。」
「うん。」
詳しいことはわからないけど、瞬くんは心なしか嬉しそうに見える。
そうだよね、自分が作っている冊子をほしいって言われたら、やっぱり嬉しいよね。それに、瞬くんのお母さんはちゃんと瞬くんが作っている冊子をチェックしているじゃないの。バカになんてしてないよ。
「よかったね。」
「結衣、ありがとね。」
「うん?」
瞬くんは私を引き寄せると、頬にキスをした。
触れた部分がまた熱を持ってしまう。
「さ、行こうか。」
私の動揺などお構いなしに、瞬くんは私の手を取ると優しく握った。
私も躊躇うことなく握り返す。
お互いの体温が交ざりあって心までポカポカだ。
そんな甘い時間に終わりはない。
ずっと大切にしていこう。
外は寒かったけれど、それを感じさせないくらいに幸せに満ちていた。
【END】