メタモル少女
「ねえ、加奈子、あの二人について何か知らない?」
教室の中で、ある女子高生が加奈子に語りかける。
「あの二人って、だーれー?」
「君の親友のあの貧乏くさい一花とあの金持ちお嬢様の風楽のことよ!」
加奈子が何秒間固くなって、そしてあっと何か思いついた。
「一花がどうしたのー?あっ!そういえば前回一花が風邪引いた時、あたしが看病してたの!可愛かったなあの時の一花ーーってどうしたの?」
呆れた女子高生はため息した後、話を続いた。
「あの風邪の日以来よ、あの日から、あの二人、全く一緒に現れないのよ!」
「へぇ?」
「一花がいると風楽が絶対にいないのよ!同じクラスなのにさ!変と思わない?だから聞いてんのよ」
女子高生のちょっと怒った顔を見て、加奈子は慌てて変な鳴き声を出した。
「うーー!知らない!あ!一花を貧乏くさいと言わないー!」
「あんたのようなバカに聞くのが間違いだったわ」
席に戻る女子高生を引き止めようとしても、加奈子は何をすべきかわからなかったので、何もしなかった。
「バカじゃないもん……」
小さい独り言だった。
その時、教室の扉が開いた。
入ったのは、加奈子のよく知っている女の子だ。
「一花!おはよー!」
親友の姿を見た加奈子は、まるで先のことがなかったのように喜んだ。
「今日は一花だったのかよ!」「私、風楽に賭けちゃったよ!」「はい、百円ゲッっー!」
どうやら、クラスメートたちがどっちが来るのか賭けていたようだ……
それに気付かずに、加奈子が飼い犬のように一花を歓迎していた。
その時、加奈子が思ったのはーー
(そういえば、一花と風楽って同じ鞄使っていたね)
放課後のベルが鳴ると、加奈子は眠りから覚めた。
「一花!一緒にかえー……ん?」
一花はもう物を片付けて、ドアから外へと歩いた。
「まってー!」
慌てて、加奈子は机の上にある物を見もせずに鞄に詰め込んだ。
「一花ーー!」
一花に追い付いた時は、もう学校を出て、人のない小道に入った時だった。
「避けないでよ!」
泣きながら、加奈子は思わず一花に飛びついた。
「ちょ、加奈子っ」
当然、そんなことしたら……
二人は地面にぶつかった。
「いたた……もう加奈子ったら危ない……あ!」
一花の鞄が飛んで、中身が出てしまった。
そう……出てしまった……
「うえ?」
加奈子の目に映ったのは……一花の鞄から出てたのは……
いつも綺麗で、学校で人気者の金持ちお嬢様……
風楽がいつも制服を着ず着ていた……
あの綺麗なドレスだった。
そして、服の周りに、化粧品や、風楽の身元証明書すらあった。
「ほえ?」
加奈子がボーッとして、動きが止まった。
「動き止まらないで!私の上から離れて!」
「でも……」
「でもなし!」
力強く、一花は立ち上がって、加奈子を優しく置いた。
そして、光のように、散らしたそれらの物を拾って鞄に入れた。
「えー!何なのそれは!」
思い出したかのように、加奈子はリアクションした。
「……風楽変身セットよ」
「へ?」
「見てしまったら仕方ない、本当のことを言うわ、風楽は死んだのよ」
「ぼえ?」
「そしてあの子は私の夢に入り込んで、自分の死体と死の真相を明らかにしてほしいって言った、あの子親戚もいないし、一人で住んでいるから、自分の死に気付く人いないかもしれないって」
「そ……それな!」
「何が?とりあえず、私が目を覚ましたら……」
加奈子は唾を飲み込もうとして、唾がないことに気付いた。
「風楽変身セットと彼女のキャッシュカードが私の上に置いたのよ!」
「わかった!」
「わかってないね!」
加奈子が慌てて変な鳴き声を出した。
「つまり一花は風楽だったんだ!」
「合ってる!」
「うそー!」
加奈子の目が回り始めた。
「つまり一花が風楽で……あたしは風楽で……え?」
「わかんない!」
加奈子は理解するのを諦めた。
「いい!誰にもこのこと言わないでよ!」
「あたしも手伝う!」
「断る!」
「手伝うもん!」
「……ジャキーン!」
無言になって、一花は口でコインがぶつかる音を真似した。
「わかった、そこまで言うなら、加奈子、じゃ今から私とデートね」
「……?」
ボーッとする加奈子が反応したのは、数分後のことだった。
「はい……」
「顔染めるんじゃない!からかってるの気付いて!」
店の中に、たくさんのフィギュアが置いてある。
「一花ー、何探しているの?」
「フィギュアよ、とっておきのやつ」
たくさんの怪獣のフィギュアを見比べている一花を見ると、加奈子は思い出す。
(そういえば一花って、物を見ると何故か値段がわかるんだね)
「でももう何間も探したんだよーー、安いの見つからないの?」
「違う違う、今はとっておきの高いのを探しているの!」
「えー!でも一花って金ない……ごめんね!一花は貧乏くさいって意味じゃないよ!」
「貧乏だよ、私は!でも風楽はそうじゃないよ」
「ほえ?」
ボーッとする加奈子に対して、一花は目を光らせた。
「ジャキーン!見つけた!」
ある怪獣の王のフィギュアを指して、店長を呼んだ。
「これください!」
鞄の中から、一花は札束を取り出した。
「いや、その金は多すぎる……」
「これはこの値段の物よ!」
強引にお金を渡してフィギュアを受け取った後、一花は加奈子を店から連れ出した。
その時やっと加奈子が反応した。
「風楽のお金でおもちゃ買うのは良くないよ!」
「これは風楽のために買った物だから」
ボーッとする加奈子を置いて、一花は楽しそうに帰った。
「あれ……もしかして、デートじゃない……」
加奈子が気付いたのはその日の夜だった。
次の日、加奈子は昨日のショックでちょっと遅刻した。
教室に着いたとき、奇妙な光景を見ていた。
(あれは、いつもいじめられる咲という女の子といじめっ子の真澄と友梨、そしてその真ん中に立っているのは……)
「一花……じゃなくて……風楽!」
まるで違う人のように、完璧に風楽に変身した一花だった。
「てめぇらまた咲いじめるとブッ殺すぞおら!」
(風楽はそんな感じじゃない気がする!)
しかし、加奈子は元の風楽をあんまり覚えてなかった。
(もしかして風楽はそんな感じかも?!)
加奈子の風楽へのイメージが変わった。
「お、おう」
何故か微妙な表情を浮かんでいるいじめっ子の真澄と友梨は一花に押されていた。
「わっわかったよ、友梨、行こう」
逃げていくように、二人は消えた。
「咲、怪我なかった?保健室に行こう」
「は、はい、ありがとうございました……」
一花は咲を連れて、外へ行った。
加奈子は何も考えずに付いて行った。
保健室で、一花と咲と加奈子の3人だけいた。
「もう大丈夫です、ありがとうございました、風楽さん」
ボーッとする加奈子と変に凛々しい一花に、咲は何故か体がちょっと震えている。
「最近真澄さんが親の結婚指輪をなくしたからいじめが増えて……友梨さんは僕を殴った時に使った木刀が壊れたから苛立ってたそうです……本当に辛くて……でも、良かったですね、風楽さんも無事で……」
「私がなんだって?」
咲の言葉に、一花は反応する。
「私が無事ってどういうこと?」
「……」
何故か黙る咲に、加奈子は何か話そうとするが、何を話すのかわからないので変な鳴き声しか出なかった。
「まあそれいいとして、そういえば、咲って怪獣好きだったっけ?」
「はい、そうです、それがバレてからいつもいじめられて……」
「私も怪獣好きだよ、昨日これ買ったし」
鞄の中から、一花は昨日買ったフィギュアを取り出した。
「それは!まさか!いやでも!そんな伝説のフィギュアが何故ここに!いや存在自体しているとは?!」
急に、スイッチが入ったように、咲は語り出した。
伝説だの、限定だの、失踪したはずだの、加奈子は一文字も理解できなかった。
「私は咲と仲良くなりたいだけだよ、これ欲しいなら、ちょっとの間借りてもいいよ」
「本当ですか!やったーー!」
「その代わりに、教えてくれる?無事って何を知ってるの?」
フィギュアを自分の服の中に隠して、咲は深呼吸した後、小さい声で語り出した。
「はい、見てしまったのです……私が見たということは誰にも言わないでください!」
「見たって……何を?」
外に人がいないのを確認した後、咲は言う。
「風楽さんが真澄と友梨に放課後の空の教室に連れて行かれるのを見たのです……風楽さんにとって嫌な思い出かと思ってるから黙ったのです……か……怪獣好きがバレていじめられたの……?いや!言わなくて結構です!それじゃ!」
逃げ出したかのように、咲は走り去った。
「えっ……えーー!」
ボーッとした加奈子が変な声を出すと、一花は加奈子の口を塞ぎ、強引に加奈子を学校から連れ去った。
二人は学校をサボった。
見ればわかるほどの高級レストランで、加奈子は名前の知らない飲み物を吸いながら頬を赤く染めている。
「一花……これってデデデデート………」
「ごきげんよう」
その時、加奈子の言葉を断ち切るように、謎のスーツのイケメンが現れた。
「ぼえ?」
「やっと来た、なんでこんな高いレストランで待たなきゃなんないのよ」
文句を言う一花に対して、イケメンは微笑んで小さい箱を取り出した。
「これは自信作なんで適当な場所で渡したくないのです、それにご両親の頃もここでお渡したのです」
「わかったよ、よしっしょ」
椅子の下から、一花はでかい鞄を持ち出した。
鞄の隙間から、加奈子は中身の札が見えた。
「それにしても結構はやかったですね、ご相手は?」
「私のために買ったものじゃないよ、適当でもいいけど他の店は値段の割に質が低すぎてムカつくのよ」
そう文句いいながら、一花はその鞄とその小さい箱と交換した。
「では、失礼します」
「中身確認しなくていいの?」
「相手は信用できる人なので、そちらこそ確認は?」
「箱見ればわかるっしょ」
「さすが……では」
謎のイケメンは鞄を持って消えた。
「一花……」
加奈子は何か言いたいけど、一花の名前しか出なかった。
「加奈子、いい物買ったよ、ちょっと勿体無いけど」
「先の男と……どんな関係なの?」
悩み果てた結果、加奈子は一番気になったところを聞く。
「父さんの知り合いよ、それよりこれ見て」
一花は小さい箱を加奈子の前に置いて、開いた。
「ジャキーン!」
中身にダイヤモンドの結婚指輪が置いてあった。
「結婚してくれる?」
意地悪な笑顔を浮かんで、一花は加奈子に言った。
「…………………………………」
加奈子の頭が溶岩のように赤くなって、それから……
ショートした。
「冗談よ」
「…………………」
「ん?」
「……………………………………いっいいいいいいいよ?……いっいいいいい一花なら…………っっっっ………」
「冗談!冗談だよ!はやく冗談だと気付いて!加奈子ーーーー!」
明日、加奈子は恥ずかしすぎるので、学校をやめようかと思ったら、いつの間にか学校に着いていた。
(一花のバカ……)
そう思った時、風楽になった一花が見えた。
「一……風楽!おはよー!」
昨日のことは今忘れたようだ。
そして、一花がいじめっ子の一人の真澄を連れて行くのが見えた。
「うえ?」
加奈子に挨拶せず、一花は真澄を教室の外に連れて行くのを見て、加奈子はなんとなく付いて行った。
学校の屋上で、真澄は焦った顔している。
「わ、わたしは何もしてねぇ!」
「まだこっちは何も話してないのよ」
一花は落ち着いた表情で鞄から何かを握った。
「聞いたよ、親の結婚指輪をなくしただって?」
「うっ!」
「これで親に許してもらえるかはわからないけど……」
真澄に近付いて、一花は手のひらにある輝かしいものを見せた。
「どう?欲しい?」
「うわああああああああああああー!」
その指輪を見た途端、真澄は狂ったように叫んだ。
「ん?」
「やっぱりその時に落ち……やめてください!わたしじゃねぇ!やったのはわたしじゃねぇ!」
体が震えて、真澄は一花を見でもしない。
「だからよー!やったのはあいつ……っ……友梨だから!だからよー!もう成仏してよ!」
狂ったように真澄は走り去った。
「……見えてきたね」
「ほ……ほえ?」
加奈子は口を開けて、ただボーッとしている。
「行くよ、加奈子」
そのまま一花に連れられ、学校をサボった。
大きい道場の真ん中、加奈子と一花は正座している。
二人の向こうに老人が居て、刀を持っている。
「確かに、わしにはもう不用な物ではあるじゃが……」
「お願いします、友達のためです」
(一花の敬語だ!)
加奈子は静かに喜んでいる。
「じゃが……」
「これを見ても……ですか?」
一花は後ろにある凄まじく大きい箱を前に出し、開けた。
「ふむ……わしが譲ったと漏らすんじゃないぞ」
老人は腰の刀を前に出し、一花に渡した。
「もちろん……」
学校の屋上で、もう一人のいじめっ子の友梨と風楽になった一花が対峙していた。
扉の後ろに、加奈子は覗き見していた。
「で?話って何?告白?」
「犯人はあんたなの?」
(一花ーー!)
心の中で、加奈子は叫んでいた。
友梨はそのまま黙っている。
一花は手を上げると、加奈子が扉を開けて、長い箱を持ってきた。
「等価交換って知ってる?」
箱を加奈子から取って、一花は箱を開けた。
綺麗な日本刀が置いてあった。
「最近刀が壊れたと聞いたの、どう?」
「……本物なら、犯人が誰かわかってるでしょう」
「あいにく生前の記憶は曖昧でね……」
「そっか……そうなの……犯人は……」
友梨は興奮して、刀へと近づく。
「もちろん真澄よ、ワタシじゃないわ」
箱から刀を取って、友梨は興奮のあまりに踊りだした。
「いい……これがいい……」
「行こう」「え?」
一花は加奈子の腕を掴んで、強引に場を離れようとする。
それを見た友梨は近付いて刀を抜こうとすると……
「お止まり」
友梨の動きが完全に止まった。
あれを……一花がスカートの中から引き抜いた拳銃を見たから……
「その刀は家以外のところで抜くんじゃない、いいね?」
「も、もちろんだよ」
刀を箱に戻して、友梨は逃げて行った。
「いっ……一花……」
「モデルガンよ、本物なんて金あったところで手に入らないし手に入ったらいけないのよ」
「……え?一花!おかしいよ!」
加奈子は何かを思い出した。
「二人とも犯人が相手だと言っている!じゃ犯人はいったい誰?」
「……二人とも……」
モデルガンを隠して、一花は珍しく顔に困惑が浮かんだ。
「犯人らしくないね……」
レストランの中、一花と加奈子が座っている。
「たぶん、明日が最後の勝負になる」
「ぼえっ?!」
加奈子は変な声出して、そしてボーッとなる。
「でも明日、学校休みだよ」
「そうだね、人がいないからいいかもしれない……その逆かもしれない……」
「へえ?」
「危ないから明日来なくてもいいよ」
「わかった!付いて行く!」
「わかってないね」
「ところで、今日買い物してないからこれはやはり……デ、デート」
「いや違う」
次の日、暗い教室の中に、真澄と友梨が話している。
「なんで休みの日まで学校へ来なきゃならないのよ」
友梨が気楽に文句を吐くと、真澄は震えて止めようとする。
「殺されるからやめてよ」
普段のいじめっ子の様子が全く見えず、ただただ怯えている。
その時、扉が開いた。
風楽姿の一花が入ってきた。
「いい加減本当のこと言ったら?」
一花は二人に近づくと……
「やめて!来ないで!犯人はわたしじゃない!わたしは殺してない!」
真澄は体を丸めて叫び出した。
「ちょっと!それじゃまるでワタシが殺したことになるんじゃないの!」
友梨は真澄ほど動揺していないけど、明らかに顔色が悪い。
「ふざけるな!もうやめてよ!わたしを巻き込まないでよ!」
「やめるべきなのはそっちでしょう!ワタシはただ……」
「二人ともやめてください!」
一花は驚いた。
二人は喧嘩するのは予測詰みだけど、この声の持ち主は予測できなかった。
現れたのは、いじめられっ子の咲だった。
咲を見ると、二人とも黙った。
「二人でやったことでしょう、もう罪は認めましょうよ!」
咲が一歩進むと、二人が一歩下がる。
「二人で、風楽を殺したのですよね……?」
その声は、まるで魔力があったように……
二人は首を縦に振り、認めた。
「そ……う……、わたしたちが……殺した……風楽を……」
一花は信じられないような目で二人を見ている……?
「さあ、はやく二人を捕まってください!……風楽さん!」
「そんな……まさか……」
一花は2歩下がって、警戒している。
「まさか……そういうこと?殺したのは……風楽を殺したのは……」
「……?」
「あんたなのね、咲」
一花は身を構えて、いつでも動けるようにしている。
「……なんで?」
「二人は嘘をついてなかった、それに、二人は何かを恐れている……それは風楽の幽霊ではなく……咲、あんただ!あんたに二人は恐れている!何故?いつも強気の二人は今はうさぎのように恐れている?何故……
何故今あんたはそんな目をしている?!」
咲の目が大きく開いて、血が充満している。
「二人のいじめをいつも止めなかった理由もそう、二人は本気でいじめてないし、あんたはどこか楽しんでるのように思えた……まさかその原因は……!」
「………………………………………………ふ」
咲の髪はビリビリと音鳴って動き出し、ライオンのように膨らむ。
目に血潮が充満し、悪魔のように睨む。
……そして、体に筋肉が浮き出し、まるで……
違う人間……いや、人間というより……
悪魔じみている!
「バレた?」
次の瞬間、それが起きた。
それと言っても、一体何が起きたのか、一花にはわからなかった。
何が起きた?
というより、一体何が起こったらこうなれるんだ?!
咲の回りの机と椅子が、壁までぶっ飛ばされ粉々になって、そして一花は……
窓辺にぶっ飛ばされ、落ちかけていた。
(何が……起きたの?)
わからない、わからないが……
(めちゃくちゃまずい!)
体がまだ動けることを一花は確認し、目の前にいる咲……いや、咲なのか?
どう見ても、悪魔にしか見えないそれが……
そこにいる!
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
真澄はおろか、友梨すら跪いて、ただただ謝っている。
「うるせぇ、てめぇらが使えないからこうなっただろうがよ!」
咲は手を床に突っ込んで、地面を剥き出す。
「風楽、てめぇは邪魔だ、オレに歯向かってくたばったのによう!」
まるで卵の皮を剥くように、地面が剥けていく。
「生き返りやがって!くそが!オレの真の姿を知ってなお、下につかねぇやつはよう!
生き返ったところで!もう一度殺して埋めてやるぜ!」
剝けた床をブーメランのように、咲は投げ出す。
一花はかろうじて避けたが、掠られたところに血が流れ出す。
(それは!)
剝けた地面の下に、一花は見た。
一つの結婚指輪の隣に、少女の手がそこに埋まっていた。
その位置がちょうど一花の席だった。
(あんなところに……いるの……風楽……)
(だから私に……知らせて……)
「二人とも!あいつを捕まれ!」
咲の声を聞いた途端、二人はロボットのように動き始めた。
一花を捕まえるために、飛びついて行く!
「勝った!これでてめえが生き返ることは……は?」
咲は口を開いて、驚いた。
一花のやることが、理解できなかったから。
二人が飛びついて行く前に……捉えられるまえる……
一花は振り向いて、窓を突き破って外へとジャンプした。
「自……殺?」
窓辺へと歩いて、咲が見たのは……
下のすでに貼られてたクッションに飛びついた一花であった。
「あいつ……予想できたのか?それとも……ただの安全装置か……?」
クッションの上にいる一花は、ポケットからスマホを取り出した、スマホの画面に、録音のアプリが開かれていた。
「ジャキーン……私の勝ち!」
一花は微笑んで、ガッツポーズをした。
「くそが!下に降りてブッ殺す………………ああ?」
咲は想像もできなかった。
こんな週日に、学校には……
「なんでこんなに人がいるのよ!」
たくさんの人が集まって、学校を見上げていた。
警察すらそこにいる。
「風楽のやつめ……何を……は!おいてめぇら!ユーチューブを開け!」
真澄と友梨はスマホを取り出し、ユーチューブを開くと……
「急上昇ランキングだ!もしかしたら……」
そこには、加奈子が配信していた。
タイトルは自殺配信と言って、そして学校の屋上に加奈子が生配信していた。
「ほ、本当に自殺するからね!ほ、本当だよ!」
自殺すると叫ぶ加奈子に、止めに来た警察と人たち……
「一花ーー!」
何かに気付いたようで、加奈子は叫ぶ。
「何で下に落ちてるの!一花!死なないで!」
泣き叫ぶ加奈子の配信画面を見ながら、咲は地面に座った。
悪魔のような外見は消え、元の咲に戻っている。
「終わり……か」
しばらくしたら、警察が突入した。
レストランの中で、加奈子がアイスを食べながら顔を膨らんだ。
「ひどいよ!一花!」
「ごめんよー!アイスも食べたから元気になろうよ!」
加奈子が一花のもし訳なさそうな顔を見て、表情が少し緩んだ。
「……アイスを奢られたぐらいでは怖い思いは消えないけどね」
とはいえ、加奈子はもう笑顔になった。
「いや?奢らないよ?」
「ほえ?」
加奈子はボーッとした。
「事件は解決したから、私は元の貧乏人に戻ったよ……ほら、私、先から水しか飲んでないでしょう」
「…………………もう!一花のバカ!」
その後、加奈子の機嫌が戻るのは3時間かかったという。