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残酷な賭け事

サブタイトルと本文の情報量が一致しないのはいつものことなので気にしない気にしない……

投稿時間を一時間間違えていたことも気にしない気にしない(完全にこちらのミスです申し訳ありません)

「よし、撃ち方やめーッ!」

 摩耶が声を張り上げる。爆風と爆煙の中心に位置する少女の姿を捉えるために一旦銃撃を止める。

 予想通りであれば少女は既に木端微塵となって跡形も残らないか黒焦げた身体の一部がその辺に落ち、周囲に弾かれた血と肉片が飛散しているほどに残酷なものが見えるはずだった。

 しかし……彼女達の予想は大きく外れ、少女は左腕を犠牲にしてまでその場に立っていた。彼女のなくなった所から灰のようなものが見える。

 確かに多少の損壊は見て取れるが予想していたような状況には至らなかった。

「うそ……だろ……」

「伏せて!!!」

 ただ茫然と眺めていた摩耶に突然比叡が飛びかかった。二人が倒れ込んだその頭上すれすれを超高速で何かが飛び退った。

 飛んできたそれは明らかに先程とは違く熱を帯びていた。そしてなにより途轍もなく明確な殺気を放っていた。

「射撃再開!とにかく弾幕で動きを止めろ!」

 再度制圧射撃を行い少女の動きを封じる。吹雪が二発目を装填し終え発射体制に入る。しかし今度の少女の動きは今までとは違った。

「う、撃てないねぇ……こっちをしっかり見られてるよぉ」

「一旦それしまえばいいんじゃないかな」

「うーん。とりあえずその辺にある銃でも撃ってごまかそうかなぁ」

 これ以上の損害はもらうまいと完全に狙われた二人の方へ何度攻撃が飛んでくる。二人は慌てて掩体の中に身を隠すほかなかった。

「これは……失敗かなぁ」

 掩体に身を隠しながら少女は誰にも聞こえないほど小さな声で苦笑した。


「失敗……したのか?」

「ええ。失敗よ」

 激しい銃撃戦を繰り広げている中、最後方では新たな作戦案を構築しようと必死になって考えている。

「クソッ、逆に攻撃が激しくなっている。これじゃいつまでも持たないよ」

「ええ、ええ。だから今どうするか考えているけど……もう一度撃つことは不可能よね」

 背中を預けている壁から少し顔を出して戦場の様子を確認した摩耶は首を横にふる。

「無理だね。完全に狙われているよ」

「あと二、三発撃てれば勝機は見えてくるのだけれども……」

「確かにそれが現状最も確実な方法だけど、最も損害が大きい方法だよね。敵も知能を失っている訳ではないからそれなりの対策はしてきているし」

「どうするの?」

「え?」

 急に質問され、少し困惑した様子で振り返る。しかし彼女はいたって真剣で、そして万策尽きようとしていることが顔にはっきりと出ていた。

「どうするって……」

「二択よ。多少の損害を被ってでも、今度のは当たるかも分からない攻撃を続行するのか。来るかどうかなんて分からない援軍によって彼女が倒されるのをこのまま待つか。どちらにせよ時間が過ぎれば残っているのは死だけよ」

「それはっ」

「貴女が決めて。貴女が今の最高指揮官なのよ、摩耶」

 もの凄い剣幕で二択を迫ってくる比叡を見ながら摩耶は第三の選択肢を考える。他に、誰もいなくなることのなく、敵を排除できるだけの何かがないのかと。

 しかしそんな姿を見た彼女は静かに息を吐いて言葉を続けた。

「いい?今の状況は、何もかもを自分たちの都合の良いように解決してくれる彼はいないの。どんな困難にも理不尽にも打ち勝って、必ず生還する彼は今この場にいないの。ここは戦場よ。誰もが無傷で帰ってこれるような場所じゃないことくらい、貴女なら分かっているでしょう?」

「でも、誰かに死んで来いと命令するのはっ」

「あまりに酷ですって?では貴女が行くの?どうやって?それで貴女が死んで敵が残っていたらどうすればいいのよ!指揮官のいない軍隊が、守ってくれる盾を失った私達はどうしようもなくなるのよ!?」

 摩耶が必死に何かを考えだそうとしている後ろで、何かが掩体を破壊した。振り返る余裕もない。

「さあ、急いで摩耶!このままここにいてももう死ぬしかないのよ!」

 あまりにも無残な現実。逃避不可能と分かっていてもそこから目を背け、なにかもっとマシなものがあると根拠もなく彷徨ってしまう。そうしているうちに仲間達の掩体は限界を迎え、漏れ出した破片に傷つき刻一刻と死へのカウントダウンを知らされる。

 少しの思考のあと真っ直ぐ、比叡をただ真っ直ぐ見つめた摩耶は口を開く。

「……分かった。賭けに出よう」

「……」

「ここで遅滞戦闘を行う。一秒でも長くここを維持し続けるんだ」

 表情を一切崩すことなく、摩耶の発言を聞いた比叡は言葉を紡ぎ出す。

「それはつまり、来ることのない増援を期待しているということね……摩耶、最後に待っているのは、死よ」

「分かっているよ。けど、必ず来る」

「……一応聞いておくけれども、根拠は?」

「だって、あたしの弟だから」

「こういうところだけは全く根拠に欠けるわね」

 比叡が溜息をつくと摩耶は少し大げさにはにかんだ。

「そう?」

「いいえ、そうでもないかもね」

 そして腹を括った摩耶は自分の隠れている場所から全員にはっきり聞こえるように割れんばかりに声を張り上げる。

「みんないいかい!必ず助けはやってくる!だからそれまで耐えてくれ!!!」

 彼女の激励に返答の声はなかったがその代わり弾幕が更に分厚くなった。少し少女を押し返し元の位置より後ろに持っていくことに成功したのだ。

 そして、摩耶の賭けは意外にも早く当たった。ある銃声を境に、少女からの攻撃が止んだのだ。

「なんだ?」

 違和感を覚えた全員は何か強力な攻撃の前触れかと一瞬にして銃撃を中断して身を隠した。しかしそのようなことは起きなかったのだ。

 マルカが隠れている部屋から少しだけ顔を覗かせると、燃え盛っている輸送機の、ちょうど少女がいるところは爆発の影響かぽっかりと人一人が通れそうな穴が開いていることに気づいた。

 そして少女は首だけを反対方向に回しながら誰かを見ているのだ。しかし、彼女の首が回転し終わるより先に銃声が轟いた。

 二発、胸部と側頭部に銃弾を受けた少女はそのまま地面へと倒れ込んだ。その時にマルカは見たのだ。

「タヴァーリッシ!」

 ゆっくりと灰になってゆく彼女の後ろには赤軍中将、赤の銀華の二つ名を持つ少女、ローザ=カウロフが拳銃を握っていたのだ。

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