通路、帰り路
ええ、戦闘シーンは何時になるのかまだ未定です。いいえ、入れるつもりではありますので。はい。
数時間前に彼が歩いた道を四人は引き返す。そこら中に白軍と戦ったのであろう機械達の残骸がボロボロと転がり落ちている。極限まで人間に似せられた彼らは通常の弾丸でも容易に死に至る。
そして当然のように白軍人の中にいる人間はローザ一人を除いて誰もいない。骨格金属の変形具合や破壊された四肢、銃弾や激突によって穴が開いた通路で無残だが安静な致死性がここら一帯の激戦ぶりを物語るようにこちらに見えない視線を送っている。相当な数が死んだ。しかし一切の死者はいない。
「誰もいない……」
「全員、死んでますね」
「ローザ、赤軍兵はいないのか?」
「いえ……同行したはずですが」
マルカ達の同志の姿も見えないが、一体どうしたことだろうか疑問に思うのも当然のことだ。ここに人間がいた形跡が一切ない。
空中歩道に移ると窓の外から滑走路がのぞく。先程にはなかった大量の輸送機や輸送ヘリが駐機しているが誰も見当たらない。
また滑走路は見えなくなったが辺りには更なる魂のない死体が転がっている。こちらの方が施設への影響は弾痕くらいだが。
無音の世界にあった音とすればそれは機械の駆動音だった。無機質な、それでいて唯一の音が細かく顔を動かしながら一体の機械がこちらを向いてくる。
「ッ!まだ生きている!」
死んだと思ったはずの――いや、人間的に見れば何発もの銃弾を受けた両足を投げ出し霧散した頭の大部分がバチバチと音を立てて今にも動き出そうとしているが、機械の左上半身は丸ごとひしゃげて左目の辺りなんかは原形を留めているのがやっとという状態なのだから動けるはずもない――モノが動いている光景はまるでゾンビ映画のような恐ろしさがある。
それは無機物の眼をこちらに向けてくる。まるで何かを確認するかのごとくしばらく目を動かした後、じっとこちらを見つめている。
「……」
少年は何かを言ったわけでも、表情を変えたわけでもないがその真意に気付いた。そしてその眼を、全く容赦なく撃ち抜いたのだ。
分裂、破壊を繰り返しているR.I.P弾、露出した回路が粉々に破壊されている様があまりに脳みそがぐちゃぐちゃに潰される感覚と似通りすぎていて思わず、吐き気のような、一種の生理的嫌悪感を抱く。
しかしそれこそが合図だった。一度動き出した爆弾を停止させるのは簡単ではない。ではどうするか、それは爆破させることだった。あの機械は何らかの手段を通してもう死んだはずの少佐に情報を伝達し、爆弾を起爆させた。
轟音が空気を振動させる。それと同時に襲ってきた爆風と衝撃波で、あるいは別の何かによって先程まで激戦を繰り広げていたあの場所も、滑走路を眺めていた道も破壊された。
「こっ、これは!?」
「あの少佐が爆発したというの?」
「とにかく伏せましょう!」
爆風に煽られて尻もちをついた三人は機械の身体を盾に姿勢を低くする。しかし彼だけは知っていた。この爆発がここまで影響しない事を分かっていた。
風にすら動じずに佇む彼の背中を三人はただ見ていた。それがどう見えていたのかは分からないがただ一つ、少し、もの悲しそうな気がするのは何も間違いではなかったのかもしれない。
「行こうか」
風も収まり崩壊した建物から火が立ち上り始めた頃、少年はゆっくりと振り返る。しかしその顔には何かしらの感情を見て取る術はない。ただ何事もなかったかのように足を進めた。また、来た道を戻る。
そこら中にあった残骸をかき分けた先には大量の兵士がいた。その全員が機械であり一切無駄のない動きと共に銃口を向けるが、その時にはすでに彼女達の銃弾によって重要な機関を破壊されてしまっているほどに機械というものに慣れてしまった。一切の感情がない。ただ殺されてゆく機械達を見て、何かを想う事すらありはしないのだ。初めからなかったように、そもそもがモノであったように、彼らを盾にして銃弾を避けつつ投げつけた彼らごと銃で撃ち抜く。弾が切れれば彼らから銃を奪い、それも空になれば捨てる。
その間に一言も交わすことはなかった。ただ心が通じ合っているかのようにシンクロされた動きは機械を遥かに凌駕するものだったといえよう。
しかしまだ分かってないことが多すぎる。これから起ころうと画策している様々な思惑が軍人を動かし、殺し、死に追いやっている。
「これで、全部か」
「ええ。恐らくは」
「……なんとも言えない光景ですね」
「何かが言える立場にはないがな」
「そうですね。今はとにかく向かいましょう」
肌に感じる独特な緊張感に包まれた中、少年達は銃を手に足を前に進めることにした。




