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人間と、怪物と、戦争と、死

前回、書いていて思ったんですよね。刀がチートアイテム過ぎる。まあ、現代戦で軍刀を振り回すことなんてそうそうないと思いますがね()

 金属と樹脂がぶつかり合い、勢いのあまり引き金を引かれた銃声が辺りに鳴り響く。直後に金属が甲高い音を立てて破壊されていく感触がした。斬り上げられてトリガーガードから薬室にかけて破壊された拳銃から手を放し、左手に持ったナイフを振り上げの姿勢で空いている脇腹に突き刺そうとする。それに対し常人には無理のある体の動きを能力で制御しながら山なりの軌道を描いた三式軍刀が相手の首めがけて振り下ろされる。

 お互いの獲物が急所を突かんとする時、同時に回避しようと後ろに跳んだ。どちらも相手に損害を負わせていない。

「素晴らしい。やはり貴方は人間ではない……」

 挑発なのか、それとも単に独り言なのかは分からないがまるで、自分はまだ人間であるかのように話す少佐に突きを繰り出す。刀の素材である玉鋼なら鉄を斬ること自体は可能だろうがこの男がただの鉄塊であるわけがない。

「中々に斬りづらい」

 お互いに隙を窺っているが一向に見せないし見せる気配もない。そんな中いきなり少佐がこんなことを言い始めた。

「ふむ。貴方は以前、我々と同等の存在と戦闘したことがおありですか?」

「多分、ないが」

「という事はつまり、今回が初めてこのような機械達と戦闘を行ったということですかな」

「ああ」

 集中力を切らすのが目的なのか、それともよほど機械の体に自身があるのかこの男は話を続ける。

「なるほど。貴方はあの一瞬で眼が弱点だと理解し、集団相手では銃が効かないことを悟りカタナを取り出し可動部を精密に破砕した。それも再起不能になるように。それは極東のものですね。いやはや素晴らしい、恐らくは業物。それも銃身を斬れるだけの物となると相当なものでしょうね。同盟の象徴」

「知っていたのか」

「逆ですよ。貴方のことを知らない人間はこの世に何人いるのか数えた方が早いくらいなものです。世界のどんな富豪や映画スターより地位も名声も栄誉もある超有名人、一部では神格化されているとか」

 もう、彼は戦闘する気があるのか話がしたいのか良く分からなくなってくる。

「なぜそんなことを話す?集中力を乱しているつもりなのか」

「いいえ、生まれてくる道が違ったならばこのように楽しく談笑することもできただろうと考えていただけです。私は夢想家でね。ですが私は貴方と一つだけ決定的に違っているものがあるのですよ。貴方は優しすぎた。私相手にふと思ったでしょう?こんなことはやめてゆっくり話し合えばいいと。ええ、正論ですよ。その通りですとも」

 少し間があく。戦意が未だ冷めない眼をまるで覆い隠すように眼鏡を元の位置に戻す。それに合わせて少年も軍刀を鞘に引っ掛けて居合の姿勢をとる。後ろ腰に付けた銃剣が少しずれた。

「ですがね。止めるわけにはいかないのですよ。この日のために犠牲になった者の無念を背負っているとか、なにか壮大な計画のためとか。そういったことではないのですよ。私が知り得ているのは我々は殺し合わなければならないという事。ただ、理由も分からないままお互いに死の舞踏を踊らなくてはならないという訳です。そして結果は見えています。私が今まで生きてきた意味はKGBの完全復活などではないッ!!!身体を機械に置き換えたところで私は人間だッ!奴らの思い通りになんて動かない、これこそが立派な人間の証明だッ!私は今、目の前に対峙する彼と、死と隣り合わせの戦闘を行い、この場で果てるために生きてきたのだッ!私はここで死に、彼も少しの猶予を残してここで果てることとなるだろうッ!」

 そう言うと少佐は眼鏡を煌めかせまさに死ぬための特攻をあろうことか笑顔で始めたのだ。

 それに呼応するように少年は刀を斬り上げて持ち替えられたナイフごと少佐の右手を手首から切断した。傷口から鮮血があふれ出るが気にしない。

「まだだッ!」

 男はそのままこちらに突進してくる。恐らく自身に爆弾でも仕掛けているのだろう抱き着くような姿勢をとってやって来る。もう刀では彼の首を切断できる程の力を出せない。

 しかしこれは想定されていた出来事の一つでしかない。そのまま刀を振りぬいた状態で手を離す。先程の振りで腰から完全に抜け出た銃剣を鞘を投げ捨てた左手で掴みそのままの回転力を利用しながら後ろに倒れる。右手、右肘と着地の衝撃を和らげながら左手はその首を捉える。

 銃剣が半ばまで達した時、強い力によって抵抗され動かなくなったのを利用して左膝を振り上げて相手の腰を蹴り、一気に少佐を右に突き飛ばした。作用で自分も転げ馬乗りの状態に至る。

 首から抜かなかった銃剣から血が滴り落ちる。彼はせめてものとどめとして右腕を掲げる。その手が掴んだのは彼が投げた軍刀だった。

「なるほど、そこまで読んでいたのですね」

 首を斬られていても平然と話す彼に刀を引き抜きながら答える。

「刀が飛んで行った方にわざわざ蹴っただけだ」

「そうですか……やはり貴方は素晴らしい。さあ、早く殺しなさい。私の内臓爆弾は私を殺せば停止します。あまり時間はありませんよ」

「……ああ」

 首に軍刀を突き立てる。柄を左手で握り右手の向きを変えてから上に挙げる。

「来世では、仲良くなれるといいですね」

「それに期待しよう」

「では」

 そう言って少佐は命を絶った。


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