真実、怒り
サブタイトルに悩みに悩んで挙句の果てに飛んでもないくらいに某新世紀になってしまってるのですがそれは作者が一番自覚しておりますのでご容赦願います
「これほどまでにどうしようもない戦争は見たことがない」
「そう、でしょうね」
鳥海は口を開く。少しもいらだった様子は見せずに脇からG18Cを取り出す。それに呼応するように赤の銀華はスチェッキンマシンピストルを、白の銀華――もうそれは普通の銀華でいいような気もするが見分けがつくようにと完全に対称なのでそんな意味も込めてみたりする――はMP-443を、マルカは先程からマカロフPMを装備する。
そして示し合わせたわけでもなく、恐らくは彼らの歴史が築き上げた本能的なものに近い行動で少年を先頭にして一斉に飛び出した。
部屋の外にいたのは純白の戦車搭乗服を身にまとい、全く同じ色のフードと布で顔を覆っているがそれを見ても良くわかるくらいに機械だ。金属でできた骨格に二つの赤い眼、筋肉など存在しない腕がAN-94を握っている。
こちらの存在に気づいて銃口を向けた瞬間には容赦なく眼にR.I.P弾を叩き込む。するとものすごい音と共に機械の頭が膨張し、それは地面に膝をついた。血なんて流れ出ない。
「これはっ、ベーラヤ・スメルチ!?」
「ダー。お前らの話を聞いていると違和感しか感じられなかったんだ。まず白軍と赤軍が戦争を起こす理由がない。互いの戦力低下はそれこそ国家の一大事だろう。そして、俺達をウラジオストクではなくペトロパブロフスク・カムチャツキーに連れていく所までは理解できてもそこにFSBが絡んで来たことだ」
「つまりこれは」
「どちらかと言えば奴らは時代に乗っ取って旧軍事組織を消滅させたかったんだろうな」
「もう一つございます。我々はKGBの復活を望んでいるのですよ。それも完全な形で」
動かなくなった機械人形の後ろに一人の将校が立っていた。金髪に眼鏡を掛けた明らかにそこそこな歳はいっているであろう男性。しかしなにより気になったのはその金色の眼から溢れんばかりの興奮と熱意を感じる。明らかに指揮官だ。
「誰だお前は」
相手の階級は少佐、赤の銀華は階級を確認してから質問する。当然警戒を緩めるつもりはない。
「名乗るほどのものではありません。どうぞ、少佐と」
不気味な笑みを浮かべつつ彼は話を続ける。まるで夢でも見ている様にこちらの様子など気にしない。
「先程も申しましたがね、ええ。我々はKGBの完全復活を望んでいるのですよ。そしてその過程で邪魔となったものは全てッ!破壊して通らなければならないッ!ああ、そうですね。結論から言えばどちらでもよかったのですよ、白でも赤でも。お互いが疲弊してくれればあの忌々しきGRUの連中が動き出す。奴らに奪われたものを返してもらう丁度良いタイミングだと我々は確信したッ!しかし、残念ながらそこに新たな邪魔が入ってしまいましてねぇ、貴方ですよ貴方、どうしてこうも間が悪いのでしょうか。世界が変わってようやく、我々の理想を実現できると思い立った矢先にッ!」
少佐の後ろからぞろぞろと機械達がやって来る。ここの警備は一体どうなっているんだ。全滅でもしたのだろうか。
「……おや、ここまで我々が到達したことがそんなに不審なものなのですか大佐。いや無理もない。貴女だけは彼等のネットワークから切り離されているのですから」
「なにを、言っている」
「ふむ、簡単にお話ししますと貴女は特別なのです。私は大抵の人形兵士に命令を与えられる権限を持っていますので、ああご安心を。この基地の所属は全員、彼の部下達がいる部屋を取り囲んで侵入を防がせていますので」
なるほど即ち鳥海と共に来た十二人は物理的に軟禁され、ここの所属兵士も電気的に軟禁されている状態にあるのだ。
「貴官のどこにそんな権限があるんだ」
「それは私が、初めからここを終着点にするために用意していたからです。いつか来る真実の使者を迎え入れるために」
「馬鹿げてる」
「今ではそれで構いませんよ。ですが貴女がたの持っている銃では彼らを倒せない。彼のように眼を撃ち抜かなければ。勿論、私は対策済みですがね。我々を倒すには人間では少々、持ち運べる口径が足りないようだ」
「……」
つまりはこいつはサイボーグとなったという訳だ。そこまでして成し遂げたいものも確かに壮大だ。
「それで、本題に移りましょう。我々は見事、真実の使者をこの場にとらえることに成功しました。では次にやるべきことは?殲滅だ。殲滅を開始するんだッ!!!」
少佐の号令と共に、機械達が持っていた小銃が真っ二つに斬れる。目の前の少年は既に振りぬいた刀を持っている。彼が話をしている間に異次元から刀だけをばれずに回収して彼等の時間にして一瞬、少年からすれば十分程度の時間を停止させおおよそ二十の銃を切り裂いて回ったのだ。
「素晴らしいッ!!!」
少佐は眼鏡を煌めかせながら大仰な動作で注目を集める。
「次はどうする?」
「銃が無ければ剣で、それもなくなれば己で相手を必殺するのみッ!」
少年は居合の態勢に入る。この狭い通路なら十分に刀は届く。ナイフを構えこちらに突撃してくる機械兵の弱点である関節、特に上半身と下半身を二分しまた接続する役割を持った人間でいう背骨に当たるところを正確に斬った。
痛みを感じない機械はそれでもなお地面に這いつくばってこちらに攻撃しようと試みるも背骨を破壊し、返す刃で今度は首を切断する――つまり、人間でいう腰髄を斬り、そのまま反転させて頸髄を吹き飛ばしているのだ――人間では再現することは出来ないが彼が本気を出せばそれを二十回繰り返すことすらも容易に出来てしまうのだ。
「なんと……なんということだ。実に面白い、面白いではないかッ」
全く意味の分からない興奮をしている少佐に対し外の極寒と大差ない程に冷めきった少年は刀を仕舞う。いつでも切れるように口金は引っ掛けない。
「後は、お前だけだ」
「ハッハッハッッッ!!!いいだろう!本来ならば銀華と一戦交えたかったがそれよりも素晴らしいものを私は今目の前に見ているのだッ!その真の姿を目に焼き付けてやろう!」
「ああ」
明らかに怒っている彼の眼は、深紅に染まっていた。
※某吸血鬼漫画(色々混ざっているので割愛)に登場するあの少佐ではありません。確かにあの人の演説はかっこいいけど。




