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同族嫌悪

前書きすること……最近音楽を聴きながら執筆しています。

うん。話すこともなくなってきたや

 はてさて、このゆったりとした時間をどう使おうか。状況は優雅そのもので大変に暇なものであった訳だが。

 そもそもこの部屋に案内された理由は彼女達の休息の為であり少年が昼寝していいわけではない。当然、分かっているので彼が眼を瞑ることはないがまどろんだ空気に曝されて少し気が緩む。

「同志、気が緩むのは分かりますがほどほどにしてくださいね?」

 向くと少し頬を膨らましたマルカが裾を引っ張っていた。どこかで見たことあるような光景にちょっとドキッとしてしまったが一瞬のうちに自分を取り戻す。

「……分かってる」

 とは言ったものの、一体いつこの場を離れれば良いのやら。少なくとも身内に怪しまれるわけにはいかないのでかなり慎重に動かなくてはいけない。特に相手の心を読めるミアには注意しなければならない。

「なにやら楽しそうなことをしようとしていますね?」

 遅かった。彼女はこういうことには目聡く反応する事をすっかり忘れていた。知らない間に後ろに回っていた少女は恋人に甘えるように彼の首に腕を回し、少し身を乗り出しながら耳元で優しく囁く。

「ダメですよ?私に隠し事なんて通用しませんからね」

 まだ少し冷えている耳に暖かい空気が送られる。甘くとろけそうな吐息と彼女の少し高い体温――実際は彼の平均体温が低いだけなのだが――に包まれた彼はふと、寒気を感じた。

 もちろん寒いわけではない。そしてその正体は自分の周りにあった。少女達がこちらを見ているのだ、しかもかなり好戦的な殺気立った目で。

「あら、意外と人気があるのですね。同志」

 少し楽しそうに笑みを浮かべながらこちらを見ている少女に構っている暇もないくらいに不味い。冷静に物事を見ているようだがかなり困ったことになった。これでは彼女達の目に入らずにここから出ることが難しくなってしまった。いやそもそもミアに身体を掴まれているのだから動けないのだが。というか、初めの方の従者になるという話はどこへ行った、少しは助けてくれ。

「普段は助けてるではありませんか。そのほんの少しのお返しを頂こうとしているだけですよ。それもダメですか?」

 確かに言っていることは事実だから反論出来ないが、今まさに助けて欲しい場面なのだ。いや待て、今回の元凶は彼女ではないのか?

「そんなに助けて欲しいのでしたら、こちらを向いてください」

 嫌な予感がする。それくらいは彼でもわかるだろう。少女の甘い言葉に惑わされれば間違いなくこの部屋から出ていくどころの話ではなくなる。

 というか熱い。そりゃあ、二人が暖かい部屋で密着していたらどう考えても熱いだろうがそれにしても暑すぎる。

「熱いんだが」

 とりあえず苦言を呈す。この状況を打破する術として最も有効なものだろう。さてそれを実践してみる事にした。

 まず彼女の拘束を解く。そして立ち上がり少し面倒くさそうにしながら部屋を後にする。

「あら、どこへ向かわれるのですか?」

 振りほどかれた手を持て余しながら従者が問いかけてくるが、ちょっと涼んでくると断って外へ出る。そうすれば誰もついてこない。

「行ってしまわれましたね」

 マルカが同じソファで少し残念そうにしている少女に話しかける。恐らく分かってはいると思うが一応、話を合わせておいた方が良いと判断した。

「貴女のこと、嫌いになりそうですわ」

 少しふてくされてそのままソファに寄りかかる。マルカによって自分のペースを崩され続けている彼女からしてみれば全く自分と同じ部類の少女を嫌悪するのも当たり前だろう。

「お互い苦労しますね」

「はぁ」

 澄ました顔でそんなことを言われるとちょっと言い返したくなってしまう自分が、今は少し残念なものだと思ってしまった。

「似た者同士、なのでしょうね」

「そうかもしれませんね」

 もうどっちが話しているのかは分からない。お互いがお互いのことを知らないはずなのに全て知っているのである。それがお互いに相手の心を読んだり利用したりする策士で、一人で行動することの多い人間なら同じ考えを持つ相手を嫌いになるのは当然といえば当然の事である。

「もうご存じだとは思いますが、私は貴女のことが嫌いです」

「奇遇ですね。私もです。ですが私は彼が好きですよ?」

「まるで私がマスターのことを嫌ってるような言い方をしますね」

「あら、違うのですか?」

「……」

 少し考える。どうして彼にあんなことが出来るのだろうか。もしかすればその答えは目の前の軍人が既に知っているのかもしれない……


 少年は部屋を出てすぐに左へ向かった。理由としては扉のすぐ横に先程の給仕が待っていたからだ。

「どのくらい経った?」

「二十三分十二秒経ちました」

 これほどにまで正確に時間を知っているのも彼女が時計を見たからではない。彼女の中にある何かが教えているのだ。

 彼もその正体には気づいているが、無表情を貫く給仕にかまけている暇などなかった。

「それで、カウロフ大佐の執務室とは」

「大佐の命令に従い貴方を執務室までご案内します。付いてきてください」

 あまりに無機質な言い方をしている彼女に大した反応も示さないで後ろをついていく、彼女に会いに。


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