最高の組み合わせ
一番初めから計画していたことが一番最後に登場することになるとはあの時は思ってもいませんでした。
まあ、何時かは知りませんが
「で、どうすればいい?」
「んまあ、来週でいいんじゃね」
「俺もそれでいいと思うっス」
会話の内のほとんどが彼らが笑い続けるだけだったような気がするがとりあえず来週に行くことで決定した。
「全く、お前が珍しく相談に来たかと思えばそんなもんかよ」
「悪いか」
「いや、成長したなぁって思っただけだ」
そう言いながら弟分の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「おい、よせって」
「いいじゃねぇかよ。姐さん公認の兄貴なんだから」
ひとしきり頭を撫でて満足そうな兄貴分を見た弟は少々呆れた様子で従者が控えているところに戻った。
「すまないな、ミア」
「これが私の仕事ですので」
主が軽く礼を言うと少し嬉しそうにしながら答える。どうやら時雨と話をしていたようだ。
「あ、あのっ、」
「どうした?」
何か意を決した様子で彼女はこちらを向く。
「その、陛下のことを、ですね。と、殿様とお呼びしても宜しいでしょうか」
「別に、いいが」
やはり人――特に異性と仲良くするのは嬉しいのか、少し戸惑いながら承諾した彼を見てほんのりと頬を染める彼女は榛名とはまた違った可愛らしさがあった。
「やった……こほん。ええとでは、殿様は先ほど何を話されていたんですか?」
「そのことをこれから話そうと思うんだが、まだユリが帰ってきてないみたいだし、あいつも持ってくるものがあるからその後に話そう」
「わかりました、殿様っ」
華が咲いたように笑う彼女の姿は他の誰でもなく彼女のままだった。
ユリアが帰って来るまでにはそこまでの時間は必要とされなかった。
「隊長!持ってきたよ!」
「使えるようになったのかそれ。もう二度と使えないと思ってたんだが」
「それはまずくなあい?」
彼女が持ってきたものの見た目は一般的な自動拳銃、彼が使えなくなったとしても大した問題はない代物の様に見えるがそもそも彼自身が使用している武器は外交的な要素が強いものが多いので壊したりすれば――軍人として使ってもらえるという点では好感が持てるのだろうが政府として折角送ったものを壊されるとどうなのだろうか――国際関係はほんの少し悪くなるかもしれない。
そして大抵そのような銃火器には特別なエンブレムがあしらわれているが、それには特別なものは何もなかった。
「それでマスター、この銃は?」
疑問に思った従者が問いかける。
「ああ、これは俺が最初に手にした自分の拳銃だ」
「うわ、今もまだ持ってたのかそれ」
これを見た秀明は驚いたような声を上げた。
「相当に思い入れのあるものなのでしょう」
「それはそうなんだけどよ、アイツあの頃は戦い方も全く分かってなくて毎日衛生兵に怒られるわ整備兵に怒鳴られるわで大変だったぜ」
大して前の話でもないのにまるで何十年も前の事をしみじみと語る老人の様に毎度毎度話す相棒にほんの少し嫌気がさしながらも話を続ける。
「それで、そいつを右脇に仕舞ってたんだが……まあ、幸運というか悪運というか、とにかくこいつの薬室に銃弾が当たってな」
それを聞いたメイドは目を白黒させる。無理もない、普通銃弾が入った薬室に弾丸が直撃すれば暴発しかねない。脇に差していると最悪の場合その爆発に巻き込まれて体が吹き飛んでもおかしくはない。拳銃とはそれほど危険なものであり実際、実包が詰まれば自分の手は吹き飛ぶと言われている。
「よくご無事で」
「偶然というものはやはりあるのだろうな。丁度銃弾を切らして装填する暇もなかったからそこに指しておいたんだ」
簡単に言うと、からの銃本体だけを撃ち抜かれた。つまり銃だけが壊れたという状態にあったのだ。
「ですが、別にその後に修理すればよろしかったのでは?」
ミアの疑問も最もだった。
「出来たらやってたんだが、こいつはかなり珍しいもので部品が皇国では手に入らなかったんだ。この銃は共和国中央部の国家憲兵、今でいう連邦憲兵の為に造られたものだったからな」
「それを鑑みても素晴らしい性能、という事ですね」
「そうだ」
そして彼はナイロン製のショルダーホルスターに入った特殊拳銃、グロック18Cを受け取った。
グロック18C、全長186mm、重量703gのセミ/フルオートマチックの自動拳銃でスライド左に付いているセレクタレバーを上にあげるとセミオートマチック、下にさげるとフルオートマチックに切り替わる。
目安として上には点が一つ、下には二つ付いている。
「それにはさっきの弾が入ってるよ」
ユリアもこの銃弾を実際に撃ったことはないのかウキウキしながら何故かレンガブロックをほんの数m先にこちらに面が向くように縦に置いた。
「これを撃ってみて!」
「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」
全員が啞然とする。普通に考えて拳銃実包で破壊するには運動エネルギーが足りない。
「これを撃つのか?」
「そう!」
満面の笑みを浮かべてそう言うのだからとりあえずセレクタレバーを上にして一発撃つと、バンッという音と共にレンガが弾けた様な気がした。
「なんだ、これ」
銃を撃った張本人が驚いているのを完全に無視して彼女は興奮の渦の中にいた。
「すごい!動画でやってたことは本当だったんだ!これを連射できるとなるとどうなるのかなぁ!ねえねえ、やってみて!」
最早彼女に言われるがままにセレクタレバーを下げ新しく用意されたレンガに乱射するとあっという間に粉々に砕け散った。
「うっそぉ」
興奮のし過ぎで語彙力まで飛ばしたユリアを除いてまさかの光景に全員が言葉を失う。
まあしかし、使えるので採用することは決定になりそうだが。
グロック18Cは今後G18Cの略称で表記します。
因みに裏話
元々この銃はオーストラリア国家憲兵隊の対テロ部隊であるEKOコブラの要請で作成され、犯罪利用を避けるため法執行機関に限定して取引を行っているものです。
なぜ彼が持っているのかは後々分かるかも、分かるかな、分かるといいな。




