状況報告
大量に銃火器の名前が出てきますが全てあとがきに書いておきますのでご安心を。
次回ですが、コロナウイルスが少し厄介なことになったのでお休みさせていただきます。
別にウイルス感染したわけではないので再来週には再開できるかなと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
もし今週のやることがなくなったら一話から見直しておいてください。何も変えてませんが
「まぁなんにせよしっかり準備していかないとダメだってわけだね」
摩耶がそう締めくくるとユリアが仕切り直して話が再開する。
「最近みんな話がそれていくよねぇ。で、ここにいる間は私が全員の武器を点検できるよ。それともしもこの旅をしている間に武器の整備が必要になったらここに送ってくれれば整備して、軍事施設経由になるけど送り返してくれるよ」
時雨と宗一郎は興味深そうに話を聞いていたり頻りに質問をしている。
「弾薬の補給はどうする予定ですかな。想定通りに事が運びますと、少なくとも陛下の軽便拳銃弾、時雨殿の銃弾が足りなくなりますが。別の銃を持って行った方が宜しいでしょうか」
「ええっと、時雨ちゃんのセカンダリは何?」
銃はいくつかの部類に分けて状況に応じて使い分け、その武器をそれぞれプライマリウエポン、セカンダリウエポンと呼んでいる。各国において装備品の用途や支給できる量が違う為に統一はされていないが、基本的な軍隊における一般兵はプライマリに自動小銃を装備しセカンダリには拳銃、そして予備の拳銃も携帯している。
その一般が当てはまるのならばユリアは時雨に拳銃は何を使っているのかと聞いたのだ。
しかし残念ながら彼女はその一般に入らない。
「セカンダリは二式小銃よ」
「にしき……なにそれ?というよりかそもそも時雨ちゃんのプライマリは?」
「プライマリ?それは一〇〇式機関短銃よ」
こちらからすれば当たり前なのだが根本的に皇国製銃火器のほとんどが骨董品レベルで珍しい代物なのだ。ましてや時雨が持っている二挺の銃は現在は生産は一つの政府直属兵器工廠でしか作成されておらず皇国国内でも滅多にお目に係れないわけである。
「きかんたんじゅう?」
なによりも聞きなれない単語が出てきた。
通常は短機関銃、即ちサブマシンガンと言うがこれは機関短銃、即ちマシンライフルなのである。因みにこの二つに違いはない。
単純に呼び方が違うだけなのだが言語を変更すると意味が違って聞こえてしまう事がある。特に軍隊における用語の違いは顕著でニュアンスの違いが全く違う兵器を用意する羽目になりかねないのだ。
「それ、見せてくれない」
気になって仕方ない少女がおねだりする。
「ええ、全然いいわよ」
優しく微笑みながら承諾する。そして着物の下から二挺の銃を取り出した。
初めて皇国製の武器をみた武器マニアは興奮した様子で次々に感激と質問を持ち主にぶつけた。
「なにこれ!すごいすごい!これが一〇〇式?横から弾倉を差し込むところとかステンみたいだね。これはフルオートしかないんだったら同じなのかな。それでこれが二式小銃!テイクダウンライフルなんだ、どうやって取り付けるの?構造は独特だね。この照準器に取り付けられているのは何?対空用の表尺?じゃあじゃあ、銃口についているこれは何!ライフルグレネードなの?へぇ、元々は空挺団用のなんだ。そうなるとこれの元はKar98kなのかな?銃弾は何ミリ?他にも何か持ってない?見せて見せて、そして貸して!」
珍しく興奮するユリアにまるで妹が出来たかのように嬉しそうに話をしている時雨を見ていると自然と笑みがこぼれてくる……のが普通なのだが鳥海と摩耶、宗一郎だけは全く違う反応をしている。
「おい、どうして制圧戦闘装備一式全て余すことなく持ってきているんだ?」
見せてはいけない物を見せてしまった時雨を止めることもできずに困っていた所を、後ろから急に声を掛けられて動揺が広がる。
「さ、さあ、どうして持っているのかは小官にも分かりかねますが」
「いや、弾薬全部運んできただろ。知ってるよな絶対に」
「まあ、持ってきてしまったものに関しては仕方ないとして、一体どれだけの弾薬を持ってきたんだい」
「ええとですな。二式擲弾50発、7.7mm木弾も同数あります。九九式普通実包を500発、8mm南部弾が一〇〇式用の弾倉に詰めて3,000発、それと二式拳銃用の弾倉に詰めて80発、予備の南部弾が200発。総数して木偶二体分になります」
これを一人で運用するというのだ。補給もないしいつまでかかるか分からない状況だったとはいえ弾薬の消費が多いことがよくわかる。
「じゃあ、そんなに大量には持ってきてないんだね」
世界最大の大陸を横断するのだからこれだけあっても足りないくらいのものである。
「それはもちろん」
「それで、俺の持ってるこいつの予備弾薬はどのくらいあるんだ?」
「陛下の軽便拳銃弾は.32ACP弾になりますので300発ほどにございまする」
一回に六発しか入らない上に一般的に入手可能な弾薬に対して予備が多すぎる。
「そんなにあるのか。で、一応聞いておくがお前のはどうなんだよ」
「小官のでございますか。まずプライマリとしてMk48機関銃に使用します7.62mmNATO弾を4,000発、セカンダリには9mm機関けん銃を持ってきておりますので9mmパラベラム弾が弾倉に詰めて1,000発、それとSFP9用の弾倉に詰めて100発、予備のパラ弾が100発となります。これで確実に陛下の安全を守れますぞ」
「ソウ、いくらカイの為だといったってやりすぎじゃないか」
異常なまでの高火力防衛兵器を持った過保護な保護者に呆れを隠せない姉弟が揃って溜息をついた。その時に思い出した事が一つある。彼女達が話している理由もその為だ。
「ちょっと待て、これだけ用意して足りなくなるってどういうことだ?」
一体ここに来るまでに何があったんだ。
ステン:正式名ステンMk.Ⅱ 全長760mm、重量3,180gのフルオートマチック短機関銃。一〇〇式と同じく銃床から見て左手側に弾倉を装填できる
二式小銃:全長1,118mm、重量4,035gのボルトアクション特殊小銃。九九式普通実包を使用。銃身を含む前部と機関部を含む後部に分解が可能
二式擲弾器:40mm対戦車擲弾を使用する二式小銃に取り付けるライフルグレネード。取り付けた銃から特別製の空砲、もしくは木弾(弾丸が木製)を使用する
Kar98k:全長1,100mm、重量4,200gのボルトアクションライフル。これの空挺団仕様を元に二式小銃は開発された
9mm機関けん銃:全長339mm、重量2,800gのセミ/フルオートマチックの短機関銃
SFP9:全長186.5mm、重量710gの自動拳銃
表記は全て正式名で表しています




