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スーパー言い訳タイム

言い訳の基準って何なんでしょうね。

私には言い訳だと言っている人ほど何か遭った時に言い訳をするものだと思います。

別に悪いことしてませんし良いとは思いますがね。言い訳

「発砲したのは俺だ。撃った銃はこいつで足元に弾痕がある」

 そう言いつつ彼は腰に下げたリボルバーを指した。

「は、はあ……」

 全くどうして床に穴をあける羽目になったのか検討がつかない新人憲兵の少年は困惑以外何かする余裕はない。

「えっと、どうしてそこに発砲なさったのですか」

 本当のことを伝えればそれこそしょうもないにも程がある理由なのだがここは摩耶がフォローに入った。

「うん、あれだ、例のヤツが出たんだ」

「ヤツ、ですか」

 意味不明な会話が始まる。

「そうそう、ヤツ。キュッヒェンシャーベ」

 それを聞いた瞬間に少年の顔が青ざめる。よほど嫌いなのかそれは。

 それに対してそれを言った本人以外に鳥海、比叡、ユリアだけが理解できてしまった。後は全員がポカンとしている。

 うまいことを言ったものだ。そのうえ理解できる人には理解できる単語で言うのだから彼女の博識には恐れ入る。

「そ、そういう事でしたか」

「ああ、それで彼女達が騒いでね。それを落ち着かせようとウチの隊長がかっこよくバキューンさ」

「な、なるほど。心中お察しします」

 報告は自分がしておきます、と言い残し彼はこの場を去っていった。

 彼が帰っていくのを見届けてから摩耶は一息ついた。

「はあ、まったく。どうして引き金なんか引いたんだい?」

 別段、咎められているわけではないのだが聞かれた少年はばつが悪そうに答える。

「まあ、持たなそうだったから」

「持たないって身体がか?にしても撃つこたぁなかっただろ」

 呆れたように秀明がツッコミを入れる。確かにその通りなのだが実際に揺さぶられてみれば彼女がどれほどの力だったのかよく分かるだろう。

 そもそも訓練はしっかり受けている軍人なので一般女性が通常時に出せる力よりかは強いのだが、それにしても普段の彼女より圧倒的に強い力だったのだ。

「問題ないだろ」

 そもそも悪いことをしたとも思わないし全く反省する気なんてないのだからこんな発言が出るのだ。根本的に小隊内では疎かになりがちだが軍人同士なのである程度、小隊ではない部下が見ているところでは規律を保たなくてはいけないという考えもあるのだろう。

 そんな隊長としての思いは誰にも理解できるものだった。反省した模様の榛名が顔だけ後ろを向いている彼の袖口をちょこっと引っ張る。

「ん、どうした」

 振り向いた彼にまるで捨てられた子犬の様にしょんぼりとして謝った。

「ごめんね。悪気があったわけじゃないのよ」

 そういうと彼は困ったような笑みを浮かべてほんの少し低い彼女の頭を昔にやったように撫でながら落ち着いた口調で言った。

「誰も怪我してないし、大丈夫だ」

 そういうと彼女は少し、笑ったような気がした。

 ……というところで終わる訳もなく、いつの間にか後ろにいたユリアがつついてきた。

「隊長、この床どうするの?」

「知らん。施設科兵が治してくれるだろ」

 なんともまあ他人に投げやりにするあたり彼である。

「まあ、あたしがああ言っといたし大丈夫じゃないか」

 摩耶がそういうとリーが思い出したように聞いた。

「そういえば摩耶殿、さっき申しておったのはなんじゃ?」

「さっきの?」

「そうじゃ、なんと言ったかのう、きゅっひぇん……なんちゃらとやらじゃ」

「ああ、キュッヒェンシャーベね」

「それじゃそれじゃ。それは何なのじゃ?先ほどの憲兵が顔を青くしておったが」

 それがなにか分かる人は少し困ったような顔をしながら少し目を逸らす。

「ん、どうして目を逸らすのじゃ?」

 あまり中身を言いたくない摩耶が言葉を濁そうとする。

「まあ、ほら、あれだよ」

 しかし気になるリーは続きを求める。

「どれなんじゃ?」

 摩耶が気まずそうに答えるのを渋っているとリーは絶対に知っていると睨んだ鳥海を問い詰め始める。

「殿、絶対知っておるじゃろ。教えてくれんかの」

「え、知ってるが」

 ちらと姉の方を見る。頷きが帰ってくる。

「えっと、なんつったらいいんだ?その、昆虫の名前だったはずだ」

 教えてくれそうなので上目遣いでおねだりしてみる。

「なんという昆虫じゃ?教えてくりゃれ」

 押し切られてついその名前を言いそうになるのだが何とか堪えつつ答える。

「あの、なんていうかな。六本足の黒いアイツだよ」

 何かを察したリーだがそれが合っているという確信を持つ為に答えをせがむ。

「六本足の黒いアイツ……もしや」

 全くまんまと少女の策略にはめられたものだ。

「そうだな、ゴキ……」

「カイ、そこまでだ。それ以上はやばい」

 言いそうになった彼の口を親友が塞いだ。

「んー、んーんー」

 彼はこんな状態になっても冷静に何事か言おうとしているのだが周りにいるほとんどには通じない。

「あぁはいはい、分かったからもう余計なこと喋んな。だから天然野郎なんて言われんだよ」

「ん?」

 聞いたことのないあだ名が相棒の口から飛び出したことに驚いているのか困惑しているのか分からない声を上げている。

「ヒデくん、もう放してあげて」

「あ、ああすまん。覚えてなかった」

 思い出したように口を離された鳥海はあまり機嫌が良さそうには見えない。

 彼が珍しくじとーっと親友に嫌な目線を送っているとやはりこの場所の主でもあるユリアが話しかけてきた。

「ところで、ここには言い争うために来たの?それともキュッヒェンシャーベのお話をしに来たの?会議しに来たんじゃなかったっけ」

 ここで全員がそういえばそうだったなと思い出したのは、絶対に彼女には内緒のままなのである。


え?キュッヒェンシャーベが何なのか判らなかった?

キュッヒェンシャーベ(独語:Küchenschabe)要はゴキブリ

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