作戦準備
サブタイトルに特に細かい意味はありません
会議後、キャンプ・ラムシュタイン内統合軍長執務室
「いつにも増して乗り気じゃねえなぁ。どうした、カイ」
秀明が部隊長席に座り資料を眺めている鳥海に聞いた。
「そりゃあ面倒だろ、情報も少ない中で潜入とか」
そう答えるがどこか上の空だ。
「カイの言う通りだ。あまりにも情報が少ない。さっきは勢いでああ言ったが……」
熱の冷めた摩耶が疲れたように言った。
「摩耶さんが怒るのもよく分かるけど、私は人質がいる可能性がある以上、確かめには行きたいの。弥生ちゃんも同じよね?」
「もちろんだよ榛名ちゃん!タカもそう思うよね?」
「ウッス、自分としても同意見っス。師匠、行きましょう」
「そうだな……そうだな、準備を始めてくれ」
鳥海の言葉を聞いて安心したのか、榛名を除いて皆準備をしに行った。
「?ハルは準備に行かないのか?」
「カイくん、本当に大丈夫?」
「大丈夫って?」
「だってあの戦場は、」
あの場所は、
「ああ、分かってるさ。けど今更後悔したってしょうが無いんだ。まだ生きてるかも知れない。参謀本部はまだ生きていると想定しているらしい。何もかも、俺の責任だ。俺が置いてきたから、こんなことになったんだ」
思いつめた様子で語る鳥海に榛名は優しく言った。
「カイくんは悪くないよ、何度も言ってるけどカイくんはあの時に間違った事はしていないよ。じゃなきゃ今この席は摩耶さんが座っている筈なんだから」
榛名は励ましたつもりだったが、鳥海は空を仰ぎ自分の目を手で覆い力なく言った。
「ハハハ……ハル、俺は怖いんだ。また、繰り返すんじゃないかって。また誰かを失うのが怖いんだよ。俺は、とても弱いから」
鳥海は椅子に深く座り込み、笑いながらそう言った。だが彼は落ち着きがなく、その乾いた笑みからですら分かるほど彼は恐怖しているのだろう。
榛名は突然鳥海に抱きついた。こんな事をしても意味はないと分かっていた。彼の顔を自分の胸の中にうずめさせた。恐怖におびえる彼の悲しみが見えないように。
これ以上彼の哀しむ顔を見たくない、彼に笑っていて欲しい、そう想いながら少女は大好きな幼馴染みの少年を抱きしめたのだ――
数時間後、統合軍長執務室
1人になった鳥海は受話器を取り上げいくつかのボタンを押し、やがて出てきた通話相手に話し始めた。
「準備の方は?」
「はっ、閣下以下アルファ小隊全員の小銃の弾薬は確保出来ました」
今回要請した武器は共和国製では無い。旧連邦製のもので、現在はゲリラやテロリスト達に良く使われているものだ。
わざわざこんな銃を用意したのも、最悪の場合敵から弾薬を奪って使えるようにするのと、敵に余計な刺激を与えない為である。
「上出来だ。他は?」
「はっ、非常に申し上げにくいのですが……閣下の大口径拳銃と鹿島大尉の対物ライフルの弾薬の確保が未だ十分に無い状況でして……」
「どうしてだ?いつも使っているからある筈だろ?何かあったのか?」
「それが、同盟の合衆国からの物資が届いていないらしく、そこに同包されている弾薬も無いとの事です」
「そうか、間に合うのか?」
「はっ、必ず間に合わせます!それが私達武装調達班の仕事ですから!」
「任せた」
電話の向こう側では何やら不穏な会話が始まっているが鳥海は聞かなかったことにして受話器を下ろした。




