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目の前に見えているもの 5

5です。この謎の閑話も一区切り付きます。

次回の内容を一切考えていないという計画性のなさに頭を抱える日々から脱却したい

 今回から一部文字にルビを振っていますが、読めない文字や難しい単語、軍事用語を使う際は入れたほうが良いのではと考えた次第です。

質問、ご意見等あれば気軽に書き込んでください。というか教えてください。ルビ入れたほうがいいですか?

 この場所に来た理由は他でもない。ここにいるべきではない『彼女』がいたのだ。

 暗示を受けたようにこの場所にやって来た彼の目の前には何もない、だだっ広い空間が広がっているだけである。

 場所的には入口から真っ直ぐ進んだ突き当り、見通しの良い空間にいるのだが内装はない施設なので照明がない。明かりといえば窓から差す光のみ。と言っても、窓は他の棟の待機室に当たる場所にしかない為こちら側は真っ暗だ。

 その暗闇の先に彼は銃を向ける。何かを問いかけるわけでもなく、誰かが見えているわけではなく。

「お久しぶりですわぁ、陛下。お元気そうで何よりですぅ」

 独特の間延びした声に闇の中でもはっきり判るほどに妖しい瞳が2つ。妖艶(ようえん)な笑みを浮かべる女性。表情は笑顔だがその腹の底は分からない。

 そして『何か』が彼の周りを取り囲み、覆い隠した。

「これで邪魔は入りませんわぁ」

 嬉しそうに微笑む彼女を見ながら彼は銃を下し、問うた。

「どうして、よりにもよってお前がここにいるんだ?」

 少し、機嫌が悪い。会いたいとは思っていたがタイミングが悪かった。

 彼女は微笑みながらこちらに向かってくる。彼は銃をしまう。

 段々と容姿がはっきりしてきた。露出の少ない紅い着物に身を包み、微笑んでいるのに全く笑ってない彼女の血液を彷彿とさせる目。

 暗い焦げ茶に酸化した血を混ぜ合わせたような、何とも形容しがたい髪が彼女の腰よりも長く垂れている。

 そしてお互い手を伸ばせば触れられるほどの距離まで近づいた時、彼はその違和感に気づいた。

 彼女と顔の位置が同じなのだ。

 最後に会ったのは2年前、その時の背丈は鳥海の方が高かったはずだった。彼は成長期だから確実に背は伸びたはずであり、統計的に見て男性のほうが成長期は長い為、想像では榛名と同じくらいだと思っていた。しかし現実に背丈が同じという不可解な現象が起きている。

 そんな疑問を知るわけもない彼女は、自身の右手から妖しく光る狐火を出した。

 狐火はその場に留まり辺りを照らし続けているが、熱くはない。

 あくまで彼女の能力によって作られたものであり、『火』ではない。

 全体を覆い隠すこの黒い――が、しかし外は見える――物体も彼女の能力によって作られたものだ。

「どうですかぁ、『私たち』も陛下が出立(しゅつりつ)なさった後により厳しい訓練を積んでぇ、いつか陛下がお戻りになった際には必ずや守り抜けるだけの力を蓄えていましたわぁ……あら、少し、疲れました、わぁ」

 少し熱のこもった言い方をする彼女、鈴谷朧(すずやおぼろ)はそのまま鳥海にしなだれかかってきた。

 さして驚いた様子を見せず少年は彼女を抱きとめ、数十秒の後に話しかけた。

「おい起きろ、時間だ。『時雨(しぐれ)』」

 目の前の少女が目を覚ます。髪の色や雰囲気は変わらないが、背丈は想定通りになり目の色が空色に変わっていた。

「え、あっ、すみません!すぐにどきます」

 慌てて少年から離れる。

 どこどなく榛名に似ているが彼女は先程の女性なのである。

 簡単に説明すると、彼女は能力の副作用として多重人格を持ってしまったのだ――能力の発現が先か多重人格が先かは本人にも分からないらしい。

 彼女はリーにスカウトされるような形で神皇守備隊に入隊、副隊長まで登り詰めリーのいない平時は特に榛名と仲良くしながらその裏の人格によって『黒天使』の異名を持つ制圧戦闘、重火砲、爆発物のスペシャリストなのである。

 そして最も目を見張る彼女の能力は『光の屈折率(くっせつりつ)を変化させる』ことであり、先程述べたようにこの黒い物体もマジックミラーのようなもので中からは見えても外からは見えない。

 逆に彼女はこれを光学迷彩(こうがくめいさい)の様にまとい監視の目にも引っかかることなくこの場所まで来たのだろう。

 しかし、理由がわからない。なぜここに来たのか、もしや祖国に何か問題でも起きたのだろうか。

 疑問を口にすると予想だにしていなかった答えが返ってきた。

「それはもちろん、陛下に早く会いたくて……いえ、能力の訓練がてらこっちまで来てみたらたまたま陛下がいらっしゃる基地に着いたもので、自分の訓練の成果を見てもらいたくて……いえ、自分の能力がどこまで通用するのか試したくなってここに来た次第です」

 本音が駄々洩(だだも)れなのだが要するに重大事項は彼女がここにいることだけのようだ。ちなみに、祖国の方は関東方面軍の総司令に指揮を任せたらしい。

 しかし危険なことに彼女の能力の真価を発揮するのだ。

 特徴として目が紅く染まり、体力の消耗が激しくなる。彼女を含め一部には副作用が現れ、人格障害、幻覚幻聴、報告がある中で最悪の場合、自身の能力に引き込まれて還れなくなるらしい。

 さて、この家出娘をどうしたものか。能力を酷使したのは明白であり、ここから帰る手段もない。もしやこれも想定の内なのかもしれない。

 面倒ごとが増える予感しかしなかった。


鳥海の持っている拳銃は勿論のことM1911です。

実際はコルトM1911A1、45口径(11.43㎜)、弾数7+1(初弾)

余談ですが、コルトガバメントの呼び名は日本だけですので世界的には1911でしか通りません。

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