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作戦会議

切るタイミングが微妙になっている今日この頃

 10分後、キャンプ・ラムシュタイン内参謀室。作戦会議

「では、作戦を説明致します。まず、目標地域は中東にある廃棄された石油プラントです。ご存知の通りあの場所は現在敵対しているゲリラ組織『コブラ』によって占拠されています。この石油プラントからゲリラの車両用ガソリンを運んでいるのが確認されました。今回の任務は施設の破壊となります」

 鳥海が椅子に腰かけ配布された資料を見ながら呟いた。

「『コブラ』か。()()()以来だな」

 『あの時』、この単語を聞いた瞬間、辺りの空気が張り詰めた。

 それはついひと月前の出来事だった。

 彼らの構成員の一人が『コブラ』との戦闘の最中に行方が分からなくなったのだ。その兵士の名前は長門吹雪(ながとふぶき)。鳥海と同期だ。行方が分からなくなった当初、鳥海は撤退までの猶予がなかったことから置いていく決断を下したのだ。

 勿論誰も彼を責めなかった。寧ろ重傷者を救助出来たので英断だったとさえ評価したのだ。

 そのことがさらに彼に後悔を残す結果となってしまった。

 さらに共和国は現在ゲリラに悩まされている。急速に問題の解決が必要になったのだ。

 椅子に腰かけていた鳥海はおもむろに立ち上がり、

「共和国も焦っているわけか」

「その通りです。今回の作戦内容ですが、3個の石油タンクに石油が入っていることを確認しています。その全てを爆破、更にゲリラの裏で手を引いている組織に関する情報の入手を行ってください。情報を入手し次第撤退、その後は……まだ決まってはいませんが空軍か海兵隊の航空機で周辺を爆撃する予定です。実行は2週間後となります。何か質問は?」

「一ついいか?」

  170cmはありそうな金髪のツーブロックで茶色い目の、屈強で、何処か優しそうな青年が手を挙げた。彼は金剛秀明(こんごうひであき)、機関銃手で鳥海の面倒をよく見る。

「どうぞ、金剛三等陸佐」

 ――彼の正確な階級は大佐なのだが、アルファ小隊はこの数字を使った階級でお互いを呼ぶ。本当の階級をわざわざ二階級下げて隠すことによって、もし捕まったとしても情報を持たない兵士だと誤魔化しが効くからだ――

「本当にこれだけか?」

 彼は吹雪の、人質の捜索を出来るかどうか知りたかった。

 返事は

「ええ、一応は」

 要はそれ以外はないということだ。

「あたしからもいいかい?」

 これまた背の高い、胸のあたりで雑に切られた緋色の髪に同じ色の目をした美しいが男勝りなカッコ良さがある女性が手を挙げた。

「どうぞ、大井一等海佐」

 この女性、もとい大井摩耶(おおいまや)は鳥海の姉である。彼女は部隊副長として鳥海のサポートをしている。

 面倒見もよく、他の兵士達から慕われている。

「この資料には敵の数が正確に書かれていないが、どうしてなんだ?」

 配られた資料には建造物の構造や敵の配置が書いてあるが確かに敵の数の欄が概数で書かれている。

「分からないので、記載していません」

 これには摩耶も怒りをあらわにし、

「あ?分からない?それを調べるのがあんたらの仕事だろうが!」

「情報は参謀本部から送られてくるので、私に聞かれても分かりかねます」

 参謀長はいつも淡白だ。それ故に誤解を招きやすいが、彼女も確認段階で参謀総長に問い合わせているのだ。

「あのっ、私からもいいですか?」

 鳥海よりも少し背が低く参謀長と同じ髪色と目の色をし、背中に髪を垂らした胸の大きい少女が手を挙げた。彼女の名は霧島榛名(きりしまはるな)、参謀長の妹で、軍医である。

「ええ、構いませんよ、霧島二等空佐」

 公私混同は一切しない『鉄面参謀長』と名高い比叡はたとえ妹であっても()()()()他人と同じ扱いをする。

「捕虜の情報はありませんか?」

 ゲリラや過激派組織にとって捕虜は貴重な情報源であり国家との交渉の手札でもあるのだ。その重要性の高さから救出作戦まで組まれる程だ。

 参謀長は資料を確認して一瞬、鳥海を見てから答えた。

「確認はできていません」

「そうですか……」

 榛名がしょんぼりしたが参謀長は無視して続ける。

「他に何か」

「あ、じゃあ自分からも一つ」

 背丈は鳥海と同じくらいの、青みがかったスポーツ刈りの髪と黒目の、いわゆる『細マッチョ』というべきか。いかにもスポーツ系男子のような少年が手を挙げた。彼の名は鹿島隆盛(かしまたかもり)、狙撃兵の少年で鳥海を師として仰いでいる。

「どうぞ、鹿島二等陸尉」

「もし、人質を発見したら回収出来るっスか?」

「状況によりますが、善処致します」

 隆盛はそれを聞いて思わず唸ってしまった。

「じゃあさ、じゃあさ」

 少し食い気味にクリーム色のポニーテールと灰色の目をした小柄な少女が手を挙げながらぴょんぴょん跳ねた。この小動物のような少女は如月弥生(きさらぎやよい)、偵察担当だ。

「はい、何でしょうか、如月三等海尉」

「今はどれくらいの人を回収できるの?」

「上陸に使う短艇には12人が現段階での限界です。もし早めに要請が入れば追加出来るかも知れません」

 むむむ、と弥生は考え込んでしまった。皆何とかして吹雪を探したいのだ。この場にいる者全員が生存を信じているからだ。

 しかし鳥海は、

「もういい。これ以上は無駄話になりそうだ。終わらせよう」

 と、打ち切るよう言ってしまった。

「分かりました。終了とします。また何かありましたら私まで直接」

 微妙な空気だけが、この部屋に残った。



盛大に何も始まらない

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