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目の前に見えているもの 1

これもまた、長々と続きます。

実は第12部分で折り返し地点が設定されていましたが、第24部分で10%、2部分引き延ばしたと宣言しました。

嘘です。予想ですがこの第一章、第50部分まではあると思います。

文字数にして10万です。

どうぞゆっくりとお付き合いしていただければ幸いです。

 次の再集合までにはそこまでの時間を必要としなかった。

 あの一瞬でお互いが誰のために何をしようとしているのかを理解したようである。

 勿論、鳥海は全く知らないのだが、部隊としての仲は良くなったと思う。

 楽しそうに会話をしている彼女達を男性陣はただ黙って見ていることしかできない。

 タイミングが一切分からないのだ――お互い年頃の少年少女、相手が何を考えているのか探りたいけど一種の羞恥心に近いものなのだろうか、中々話を切り出せない状況が続いている。ただなぜか鳥海と榛名の間にはそこまでの遠慮はない。長年一緒に生活してきたことへの反動だろうか、それとも昔からの親友だからなのか。全く分からないがその榛名にすらも、声を掛けることができないでいる。

 長々と会話を続ける光景に最年長の比叡が手を叩いた。

「はいはい。それではこれから閣下が計画された特殊訓練を行います」

「特殊訓練?いつの間にそんなのを考えていたのかい?」

 摩耶は不思議そうに聞いてくる。

「ああ、作戦に行く前に施設の設営と大まかな内容は決めておいたもので、あとは誰がやるかだけなんだけど。やる人は事前に決めといたから」

 誰だろう、と全員が首をかしげているとリーが何か思い出したのか、頷いていた。

「あれじゃな、殿が先刻言っておった入隊試験じゃな」

「当たりだ。それで、2人一組のペアを作りたいんだが」

「お待ちください。マスターはここで待機なさって下さい。その体では無理です」

 ミアの提案に全員が賛成した。

「分かったよ。それじゃあ非戦闘員を除いた8人で行ってもらおうか」

 こうして鳥海、比叡、ユリアを除いて2人一組の編成がなされた。


 キャンプ内、統合訓練施設新棟、作戦司令室

「こんなものまで用意したのか。ここで解析と状況の変更まで出来るのか、多目的施設としても利用は出来そうだな」

「他にも全訓練棟のモニタリング、無線を使用した指示、施設の強制封鎖も可能です」

 全景は警察や消防の通信指令センターを縮小したような、10ほどのモニターがありそこには情報分析官が腰掛けている。

 前面にある大型モニターには訓練棟内各所に設置されているカメラを映し出している。

 3人は案内された席に座る。この席の前にはボタンがまるでパソコンのように付いており、それぞれどこの訓練棟、何階、どこの部屋かが書かれている。このボタンを押すとそこにあるカメラの映像が流れているようだ。

 さらにこのカメラ、集音器も付いているようで渡されたヘッドホンを繋げると何を話しているのかも分かる。

 …これも情報として必要なのかは微妙なところであるが、一応訓練棟との会話も出来るので必要なのかもしれない。

 興味津々なマリアが試しにA棟1階待機室と書かれたボタンを選択してみると、画面の向こう側ではメイドと緋色の髪が見えた――


 2人は訓練を行う全員に渡されるFN SCAR-H小銃を自分達が座っている椅子の横に立て掛け、真剣な眼差しで向かい合っていた。

 何か重要な意味があるわけでもなく、待機するのに椅子があったから座っている程度の話だったはずなのだが、いかんせん空気が重い。

 この重い空気から目を逸らすように摩耶は目の前のメイドに聞いた。

「なあミア、お前はカイのことどう思っているんだ?」

 突拍子もないことはじぶんでも理解しているつもりだったが意外にもその答えは早く返ってきた。

「そうですね、はっきり言うと好きですよ。マスターのこと」

 はっきり過ぎて逆に反応に困る。

「ど、どういうところに惹かれるんだ?」

「沢山ありますが一番はやはりお優しいところです。ご存知かと思いますが」

 彼女は即答した。

「ああ、まあ、知ってるが」

「マスターは私の命の恩人です。マスターになら、私は何でもしてあげられますよ」

 そう言ったメイドは少し、頬を染めながら微笑んでいた。

 いや、ちょっと待て。命の恩人?何でもしてあげられるって、もうそれメイドの言うことじゃないよな。関係図がもう分かんないぞこれ。

 何とも言えない空気の中、摩耶に新たな疑問が浮上しているのだった。


 全くもってそんな会話をしているとは想定していなかったユリアは慌ててB棟の待機室を選択した。

 訓練棟はA棟からG棟まであり、E棟までは全て同じ構造をしている。お互いの施設は円柱状のこの場所を起点としてまるで一輪の花のように一本の茎が通っており、左右交互に葉を付け、その終着にはまだ成長の余地はあると知らしめるため何も建てていない。

 起点に戻って反対側、根本を見てみると司令棟に繋がっており、そこからひげ根が伸びているようにいくつもの機能を有した棟がある。

 どうしてこんな形をしているのかというともしもキャンプが襲撃に遭った際、最低限必要な武器、弾薬、食糧、独立した通信設備を司令部が有しているからである。

 そしてその全く構造の変わらないB棟の待機室には短く整えられた金髪と猫耳のようにも見えるおさげにまとめられた水色の髪が見えた――


FN SCAR-H 7.62×51㎜NATO弾を使用する自動小銃。

共和国軍の標準装備の一つでほとんどの共和国軍人は所持している。

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