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真(チェンジ!!)ゲンゴーロボ 平成最後の日

作者: 飽田 雅治

今連載で書いてるラブコメの方のネタをこねくり回してる最中に、変な電波を受信してしまったので、勢いで書いた。反省はしている。後悔はしていない。


一発ネタな上に総構想時間二日弱なのであまり期待するな。

タイトルは…まあお察しの通りです。

(内容的にはオマージュとかはほとんど)ないです。


登場人物

・博士

研究所の現責任者。同じ話を何度もする。

・助手ちゃん

4月から研究所に雇われた短期バイト。仕事にやる気はないけどそこそこ有能。


では、どうぞ。

 平成31年4月30日。――そう、平成最後の日。

 ここはゲンゴー線研究所。

 日本のどこかにあるというこの謎の施設は今、緊迫した空気に包まれていた。

「……いよいよだな、助手ちゃん」

「……そっすね」

 ただ一人を除いて。



「君を採用してひと月、あっという間だったな」

「そっすか」

「君は……まあ態度はなんだが、当初の想像以上によく働いてくれた。感謝している」

「ふーん」

「おかげさまで改元は滞りなく終えられそうだ。この功績は君も誇りに思いたまえ」

「はぁ、じゃあそうします」

「前回は私の父が実行役となってな、私も立ち会ったのだが……当時は子供ながら、正に時代が変わる瞬間を目の当たりにした、と心躍ったものだよ」

「……博士、それもう十回は聞いたっす」

「あれから三十年余り。思えばいろいろあったものだ……」

 助手ちゃんの指摘を無視して博士は語り始める。

「チョベリグな日々を送るナウでヤングな若者だった私も、今やこれだけの大任を負う立場――」

「とりあえずそういう御託はいいんで、さっさとロボ起動しましょう。さあ早く」

「ああ。確かに、思い出話ならいつでもできるからな。まずはつつがなく改元を終えねばな」



「それでは助手ちゃん、ゲンゴーロボの起動を!」

「あいよーポチッとなー」

 円筒状の本体部分から、人の上半身を模したロボットが生えているような格好のゲンゴーロボ。

 これこそが古来より受け継がれてきた、元号の化身……らしい。

 助手ちゃんが本体部分のスイッチを押す。

「さあ、始まるぞ……!」

(ワクワク……)

 するとロボは色紙のような物を取り出し、両手を力強く掲げて止まった。

 そして目の部分が輝き始める。

「……終わり?」

「ゲンゴーロボが動く姿を見るのは、あの時以来だな……!」

(このロボ……思ってたよりショボいなー)

「さあいよいよだぞ助手ちゃん! 集中して!!」

(求人に大型ロボットの操作とか書いてあったから……もっと変形合体とか巨大化とか、物理法則も何もあったもんじゃないのを期待して、今日まで仕事してたのに)

「さあ……令和の、幕開けだ!」

(……ま、いっか。これでバイト終わりだし、とりあえずさっさと帰って――)

 ロボの目がひときわ強い輝きを放った。



「工事……完了デス……」

 自動音声によるガイダンスが流れた。

「……終わったな」

「……終わりっすか。んじゃ、あがりまーす。お疲れっしたー」

 感慨深げな博士とは対照的に、特に何も思うことは無さげにそそくさと帰り支度を始める助手ちゃん。

(連休の間にライト層カモって世界戦闘力上げなきゃ……)

「助手ちゃんちょっと待って」

 博士に呼び止められ振り向く助手ちゃん。

「何すか?」

「これ、どういうこと?」

 博士が稼働を終えたロボを指差す。

 そのロボが掲げている文字、それは。


 冷奴


 の二文字だった。



「…………」

「助手ちゃん、操作中になんか余計なこと考えてなかった?」

「いや、別に」

 やや間を開けてから、言い直す。

「……あ、帰って一杯やるかなーとかちょっと思ってたけど、それぐらいで――」

「そのせいだろ、これ! 完全におつまみじゃん!」

 博士が助手ちゃんに詰め寄る。

「どうしてくれんのこれ!? こじんまりした小料理屋のお品書きみたいになっちゃってるけど!?」

「こんなん修正ペンで左のちょんちょん消せばいいじゃないですか」

「すっごい適当に答えてるけど、これ結構大事なモノだからね!? 大事な書類で修正ペンとか普通使わないでしょ!?」

「えー別にいんじゃねーの、そのくらい……」

「もし仮に令がそれで良しとしても、和のほうはどうすんの、和は!?」

「……んー」

 頭をポリポリと掻きながら答える助手ちゃん。

「……この右の、下はみ出してるのをこう……ちょいちょいっと修正ペン」

「してもまず口にならないよね!?」

 どこか納得いかなそうな助手ちゃんに、博士がまくしたてる。

「まず四角くないし三角だし、めっちゃ左上開いてるし!」

「ちょっと達筆にしすぎましたーって言っときゃ大丈夫っしょ。見える見える口に」

「無理に決まってるでしょーが!」

「ほら、じゃあ修正ペンする前に、もののためしに手で隠してみましょう」

 机の上のメモに冷奴と大きく丁寧に書いて、両手で該当の部分を覆う。

「……やっぱここ開いてんじゃーん!?」

「あー確かに開いてんのは気になるな、ここだけちゃちゃっと繋げましょう」

 言うなり線を書き足して繋げる。

「んで、こっちの下の部分もちょっとグリグリっと、太線風味にして……」

 再び手で文字の一部を覆う。

 その結果浮かび上がった文字は。


 令如


 だった。



「……もういいんじゃね、れいにょで。こっちのが響きがかわいいじゃん?」

「そういう問題じゃないよね!?」

「……じゃあここ、左の上にちょびっと点付けて、あとはこう適当に書き足して……はいおしまい」

「どう贔屓目に見ても書き損じだよね!?」

「ちょっとくらいバレないでしょ。遠くから見たら大体一緒ですって」

「さっきまでのは百歩、いや一万歩譲ってまだわかるとして、これはダメでしょ!」

「ったく、ガタガタうっせーすね、博士は。はーつれーわー、マジつれーわー」

 散々毒づいてから、ハッとしたように続ける。

「……令和だけに、つれーわー、なんつって」

「もうだめだぁ……おしまいだぁ……」

 博士がその場に崩れ落ちる。

「……じゃ、お疲れっしたー」

「待てい!」

「何すか、まだなんか文句あるんすか?」

「いや文句しかないよ!?」

 何を言われても表情一つ変えない助手ちゃん。

「わかってる!? この罪の重さ!?」

「だっていろいろ意見出しても聞かねーじゃねーすか」

「じゃあせめてまともな案出して!?」

「もうなっちゃったもんはしょうがないじゃないっすか。諦めて博士も新しい時代『冷奴』を生きましょう」

「何だよ冷奴の時代って!? お前は大豆農家の回し者か!?」

「違います。そういうわけで、お疲れ……あ、給料はちゃんと口座に振り込んどいてくださいね」

「うるせー!!」

 日本の明日はどっちだ……!?



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