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同じ高さになるくらい  作者: 岡本晴
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高校2年生2学期初日

目が覚めてすぐに億劫に感じたのは久しぶりだった。


一月半ぶりの登校だから無理もない。


高校に入って二度目の夏休みの大半は自宅で過ごした。


俺は未だに夏休みの課題は疑問に思っている。


予習でもないければ復習にも大してならず、テストの範囲にもならない。


何のために存在するか。無くなれ課題。


学生の仕事は勉学だと、社会を真顔で歩く大人は声を高らかに言う。


俺はそうは思わない。


生徒の自主性を重んじて、何もしない学生生活も大いにありだと思う。


そもそも仕事という響きが好きではない。


この先訪れる社会人としての人生、仕事、そんな肩書きをどうにか逃れられないか考えている。


今のところ妙案は浮かばない。


無理やり体を起こした。時間は余裕があるとは言えないが、充分だった。


今日から2学期が始まる。


ベッドから出て支度をし、起きて10分も経たないうちに家を出た。


外の気温は確実に30度は超えている。


俺にはわかる。


そろそろ本気で春夏秋冬を決めなおした方がいいと思う。


ここ数年春は春らしく、秋は秋らしいと感じたことはない。


さして困る訳ではないから別にいいのだけど、秋ですと言われても首をかしげたくなるのに社会はそれでいいのだろうか。


人よりも汗をかきやすい俺は、心の底からこの時期が嫌いだ。


将来はどう夏を短くするか、そんな研究とか面白そう。


くだらないことを考えながら、そこしか見るところがないのに日差しを照り返すアスファルトを見つめたまま、重い歩を最寄り駅へ進めた。


担任がまだ来ていない教室は地獄だった。


生徒が冷房機器を操作してはいけないというルールはまだ分かる。


しかしそれならそれで、先生方は早めに来てスイッチを押してほしい。


俺たちは熱帯での過ごし方を学びに来ているわけではない。


更には突き出し窓のせいでほぼ風もない。


今日からこの生活が続くのだ。帰りたい。


幸いなのは時間ギリギリに登校したので、席に着いてから数分で担任がきた。


職員室では冷房が効いているのだろう。涼しい顔をしている。ひどい。


ようやく冷房が効き始めたと感じた頃には、ホームルームの時間もだいぶ進んでいた。


「さて、これで朝の連絡事項は終わるが、嬉しいニュースがある。」


聞きなれない担任の締め方に、少なからず好奇心を抱いて顔をあげた。


すぐにクラスメイトも周囲と話し始め喧騒に飲まれ始めた。


担任がドアを開けて入ってきたのは女子だった。


銀色の髪に濃い茶色の瞳。


そしてなぜか長袖である。


外国の血を受けているように見える。


教壇の中心まで歩きて来て、自己紹介を始めた。


「来瀬瑠璃です。父の仕事の都合で三ツ江高校から来ました。よろしくお願いします。」


すごく淡々として簡素なものだった。

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