9.冒険者初日!の朝。
こんにちは、やっとユイナが冒険者になりました!
次から戦闘とかいろいろあります!
1/28 少し訂正、書き出ししました
ピチチチ......と、鳥の鳴き声が聞こえる。寝返りを打ってみると眩しっ!窓から日差しが射し込んでいる。
低血糖ではないけど、私は朝が苦手だ。布団から出たくない。これが冬だともっと酷い。恐るべし、布団の呪縛!って感じ?
ダラダラゴロゴロしながら10分くらい、やっと起き上がり、そのまま寝てしまった服のしわを延ばそうと裾を叩く。ん、しわが付いてない?流石、特殊装備......。
「んっ......」
伸びをすると、しっぽの先まで伸びしたみたいで、しっぽがぴぃーんと真っ直ぐに伸びた。
抱き枕になっていたルーンも、伸びをしてる。のし掛かっちゃったかな?ごめん。
窓を開けると、鳥が数羽止まっていたようで、慌てたように飛び立った。その行く先を見ると、澄みきった青空に深い緑の山脈とそこに突き刺さるように混じる白い岩山が遠くに見える。
そして、眼下に広がるオリジナの街。都会のコンクリートを見て来たせいか、石造りの白や黄色、土色の町並みが新鮮だ。
ゲームの世界と似た風景とはいえ、現物は別物みたいだ。
朝のやわらかな日射しも、石畳の道を行き交う人々も、NPCの単調な動きとは違う、本物のリアルな動き。
広場かな?芝生で犬と戯れる人、稽古かなにか、木刀片手に打ち合いをしてる子供たち。時折、魔法が混じる。
坂道の階段をのんびりと降りる母親とその子供かな?が笑いながら駆けていく。あ、転んだ。
とても、人間臭くて、私には懐かしい感じだ。毎日、ホテルに閉じ籠ってゲームの中という狭い世界にいた私にとっては。
ふと、空を見上げると、高く広い空が広がっている。
ゲームとは全く違う、また、地球の都会の空とも違う澄んだ青の空には、大きな鳥が悠々と羽ばたいていた。
こう言う、世界のどこかで毎日のように起きていることが、この世界が本物の世界だと、ゲームの世界ではないと、充分、証明してくれる。異世界に来たんだって、実感する。
ゲームやラノベの世界に浸るうちに、いつか死んだら行けるのかな?なんて、ちょっと憧れていた異世界に今、現在、来ている。
それも、ゲームキャラのステータスを全て引き継いだ、リアルの私で。
猫の神様、もしかして、私の人生をやり直させてくれるの?
私は、この異世界で自由に生きていいの?
見つめるべき神様の姿は無く、私の視線は空高くを見ていた。
ふと、ある物語を思い出す。
都会から田舎の親戚の家に、夏休みの間だけ訪れた少女の物語。湖の家で出会った少女と過ごし、前を向けたその少女は言っていた。
世界は一つのリングのようなもので、みんなはリングの外側で生きている。と。
リングの内側で、光に当たらず、暗く生きてきた少女は、もう一人の少女と過ごすうち、夏が終わる頃にはリングの外側の人になっていた。
私も、リングの内側で生きている人間だ。親の言うことする事全てを警戒し、観察し、逃げ道を作り続けていた。
多分、私は怯えていたんだと思う。
どれだけ親に明るく振る舞っても、いい子でいても、何にせよ、それは怯えを誤魔化していたにすぎない。両親にも、自分にも。
私はリングの外側を生きる皆に、リングの内側から、私も外側だと嘘をつき続けた内側の人間だったんだ。
猫の神様は、それを知っていて、私を異世界に送ったのかな。
地球ではリングの内側でしかいられない、外側だと嘘をつくほど陰に沈んでいった私を、別のリングで表にいられるように。
異世界は私がもう一度、生きる価値を見直せる場所。
この世界で嘘をつく必要は私にはない。だから、私がまたリングの内側にいる必要は皆無だ。この世界でやり直して、私は自由に、自分に正直に、リングの外側で生きればいい。
今の時点では、どちらかなんて決まってない。私が、行きたい方に行けるんだ。もちろん、明るい方に!
すぅ~っ、朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、嫌なもやもやとともに吐き出す。
頭の中がスッキリした。
「よし、今日からが、私の異世界ライフだ!」
「きゅう!」
ルーンも、張り切っているのがわかったのか、気合いの入った賛成の声をあげた。
期待と、興奮と、やっぱり不安も、全部を背負って、私は宿屋を出た。
今日から冒険者活動開始っ!目標、がっつり稼いで好きに暮らす!!
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宿屋を出て、納屋で休ませてもらったムーンと合流する。部屋に一緒が良かったんだけど入口に入らなかった。
「きゅるる.......」
そのせいか、ちょっと拗ねてる。
「今日、いっぱい頼るからね。頼んだよムーン」
「きゅうん!」
頼りにされるのが嬉しいようで、しっぽがパタパタした。撫でるとさらにしっぽパタパタはスピードアップし、納屋の藁が飛び散る。ちょっ、ムーン、ストップストップ!
広場へ行くと、朝なのに人が沢山いた。移動屋台みたいなのも何軒かあるみたい。朝食、ここで買い食いしちゃおうかな?
見回すとパン屋があった。何人か並んでるけど、すぐ買えるかな。
「へいお嬢ちゃん、かわいい耳だな! どれにする? 女性には白パンが人気だぜ?」
パン屋のおじさんが、白い丸いパンを指して、どれでも1つ銅貨2枚だと教えてくれる。
白いパンと、隣の黒いパンと、黄色のパン、何が違うんだろ?値段は同じらしいし。色?
「あぁ、それはな、白パンは米粉で出来たパンで柔らかくて食べやすいんだよ。黒パンは雑穀入りのパンで、固いが腹持ちと保存が効くパンなんだ。黄パンはライ麦で出来たパンなんだよ」
へぇ、米粉なんだ。ってことはお米もあるってことね。
日本人なら、お米はいつか必ず食べたくなるでしょ。あって良かった。
んー、黒パンはいいかな、固いのやだし。とすると、白パンか黄パンだけど.......、せっかくだし、両方にするかな。食べきれなくても、ストレージに入れておけば時間が変化しないから劣化しないし。
「おじさん、黄パンと白パン1つずつ頂戴?」
ストレージから握った手のひらに銅貨6枚を移動させ、おじさんに渡す。
「まいど~!」
おじさんは2つを紙袋に入れて渡してくれた。あ、いい匂い。
「うちは大通り横の道で本店開いてんだ。うまかったら寄って買ってってくれよな!」
そうなんだ、気に入ったら大量購入しておくかな?まあ、とりあえずは冒険者として活動して、稼いでからじゃないと。
噴水に来てみると、まだマナリアはいなかった。
目立つからか、待ち合わせ場所に人気らしく人がちょくちょくいる。
今のうちに食べよ。
あ、柔らかくて美味しい。これなら、大人買いしたい。
ものの数秒で食べ終わり、続いて黄パンを食べてみる。
こっちはフランスパンのちょっと柔らかい感じだね。これは香ばしくて美味しい。これも買お。
「待たせたわね!って、なに食べてるのよ?」
ちょうど、半分食べ終わったときにマナリアがきた。
「黄パンだけど?さっき買ったの。」
そう言ったら驚かれた。なに?どうしたの?
「あなた、それすぐに売り切れるのよ?!よくあったわね!」
マナリアが羨ましそうに見て来た、本店のことは知らないのかな?知っていたら買いに行けるのに。
「本店にはいかないの?そっちの方が買えるんじゃない?」
「えっ.......?」
「え?」
マナリアは青い顔をして絶句した。どうしたの?
「わたし、本店があったなんて聞いてないわよ.......!」
あ、知らなかったみたい。
「こんど、一緒に行く?」
パッと顔を輝かせ、顔をあげるマナリア、でも、すぐに「いい、いかないわ。」と断る。
「場所知らないでしょ?一緒にいけばいいよ、私、行くつもりだし。」
「そっ、そうだけど.......!」
ライバルって言っちゃった上に、強がりなマナリアは、正直に行きたいって言えないみたい。
「今度、一緒に行こ?」
でも、やっぱり行きたいから、なのかな。
「しょ、しょうがないわね!そこまでいうなら一緒に行ってやらなくもないわ!」
「.......。」
やれやれ。めんどくさいやつ。
マナリアはポーチからお握りを取り出して、速攻食べ終わる。拳大を二口って.......。
ごくんっと飲み込んだマナリアは、街門を指して、
「さぁ、依頼をこなしに行きましょう!」
と、笑う。
あ、こうやって前を歩いてくれる感じ、着いていくタイプの私にはありがたい。
煩いやつだけど、いい友達。
「私もあなたのと同じのを受けてきたのよ!どっちが早く終わらせるか、勝負するわよ!」
ルーンを小脇に抱えて、宣戦布告してきた。
おい、ルーン返して。それにムーンに乗るな。
前回撤回。
やっぱり、微妙かな?
というか、うちのもふもふズを連れてくな。これは、.......ある意味、天敵?
逃げるマナリアを追いかけながら広場を抜け、街門をくぐり、私たちは草原にやってきた。
読んでくれてありがとうございました!(^∇^)
ちょっとマナリアをうざめにしたかったんですが、出来てますかね?文才ないので、感想お願いしますっ!
次もよろしくです!