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69. 第1試合: 傷心試合3

めちゃめちゃ投稿遅れました!m(__)m

四月中盤とか言っておいてもう6月ですね! すみません!

読んでくださっている方々、長らくお待たせしました。傷心試合 終わりです。



『これは...! トスコロカリアチームとミデンチームの真っ向勝負!! 地の利はミデンチームにあるか!? 地と空、凄まじいぶつかり合いです!』


足場の悪い崖の足場を軽々と跳び回るミーツは光の粒をバラ撒きながら光鞭(ライトウィンプ)を振るう。

対してメガネ隊長は苛立ちからか岩散弾(ロックショット)全力攻撃(フルアタック)がそれらを全て爆砕させていく。

砂煙で見えづらくなった視界、どちらも気を抜けば突破される膠着状態にもつれ込んでいく。


「トスコロカリアでは有名人だったな、お前。蒼空の司だったか? 大層な異名貰ったな。向こうじゃ一対一(タイマン)で敵う相手はいないって噂だ」


「まあね。俺の鳥たちは強いから」


空中からイーグレットを見下ろすガラシャ。戦いの場において、武器はもちろんその場の情報というのが勝利に大きく左右する。

イーグレットの一挙一動を見れる位置。二人は構えたまま身動きせず、出方を窺うこと数秒。

動いたのはガラシャ。


「だけどなぁ! 獣人(俺ら)は人族とは格がちげぇんだよ!!!」


鷲の翼で撃ち出された風の二撃がイーグレットを周囲の木共々吹き飛ばす。

逆風で受け身をとっても衝撃は受け流しきれずに何回か転がって株に背からぶつかった。呻く暇もなくガラシャの風撃が撃ち下ろされる。


「っ!! こんのっ!」


イーグレットも応戦し、崖際の木々が幹から折れていくほどの風圧が生じる。拮抗状態にもつれ込んでいく。

イーグレットの風の鳥たちと、ガラシャの風の刃が相殺する度、空間が揺さぶられるような感覚が観客を襲った。

空気がぶつかっているとは思えない衝突音がステージ中に轟く。観客も司会進行のレメディも安全なところにいるのに剣の柄に手を伸ばしたり顔の前で腕を翳したりしてしまう。解説のロイドとレイヴンはピクリともせずに、眼下の壮絶な戦いに見入っていた。

その間にも風の刃が竜巻を生み、嵐の中を猛禽たちが貫く。

岩を守るため(メガネ隊長が戦力になるイーグレットを従わせるために動けなくなってしまって)留まったラフトアは祈るように森の向こうを見つめていた。


(イーグさん...)


負けないで、と。

この勝負に、そしてあの隊長にも。

隊長をかって出た彼はトスコロカリアで有名な貴族の家系だ。しかし、彼の両親は 何事にも上に立つ 貴族の誇りを意識しない穏やかな性格の持ち主だった。反発するように彼は 優秀 や 勝利 に執着するようになっていった。

己の出るものは全て優勝を飾らなければならない。

彼は堅気な性格も相まって、何をしてでも成し遂げることに躊躇しない。

もちろんラフトアがこのことを知っているわけではないが、予選から勝ちに必死な彼を見てきた。彼が一生懸命なのも知っている。


(けど、無理やり仲間を従わせて勝つのは違う)


イーグレットに着けた強制の首輪。

バッチの回復も間に合わない即死の首輪、あれでは本当にイーグレットは死んでしまう。そんなもので脅されたら、誰も逆らえない。

服従(こんなこと)で勝っても喜びは生まれない。


(でも、私が何か言ったら....イーグさんが殺されちゃうかもしれない)


ラフトアやイーグレット本人が相手ではメガネ青年を更に刺激することになるだろう。

勝利に奔走する彼の視界には前しか見えていない。そして思い出さなければ、その隣を走ってくれる仲間がいることを。


(私には、出来ない)


誰か、彼を振り向かせてくれる人が必要だ。





足場が次々と崩され、メガネ隊長には遂に僅かな凹凸しか残されていない。迎撃の合間に足場が削られていたのだ。


「終わりね、くらいなさい! 〈日の光よ、輝き貫け!〉日照槍(シャイニングスピア)!!」


短杖から放たれた眩い白槍が避けられないメガネ隊長へと当たり、その崖は派手に穿たれる。


『派手な撃ち合いの末追い詰められたミデンチーム! 必殺の一撃、勝負あったのでしょうか!?』


もうもうと上がる土煙に回復の光が無いか目を凝らすミーツは肩で息をしていた。撃ち合いという精密な魔法操作が必要な戦いに、ミーツの魔力もほとんど底をついていたのだ。


「っあっ...はあっ..やった...?」


やけにゆっくり吹いた風が砂を払って、現れたメガネ隊長は確かにボロボロで、額や腕から血が滲んで汚れと混ざって服を黒く染めるほどの怪我を負っていた。

が、土砂に立った隊長の瞳はミーツを睨み続ける。

胸や腹部や首、体の所々に乗っていた石のかたまりが崩れ、その下は怪我も服も全く破れていない。


『あっ!? なんとミデンチームリーダー耐えていた! あの魔力の光魔法を防ぎきっています!』


『..ほう』


解説席のロイドも小さく感嘆するほどのメガネ隊長の魔法。

高速の魔法の槍に、咄嗟の反応で創った岩石の鎧が競り合いに勝ったのだ。


「まさか...(それ)を覆って私の攻撃に耐えたっていうの?!」


石盤甲冑(ストーンプレート)だ。魔法の使えない羊はここで終わりだな!」


驚愕するミーツを目の前に、勝ち誇ってずれたメガネを直す。


「私の勝利の踏み台となることに感謝しろ。〈岩よ集いて降り注げ〉流岩雨(ストーンワークス)ッ!!!」


まさかの形勢逆転に観客も解説者の3人も息をするのも忘れて見守る。

崖を片方半壊させる勢いで中に登った岩の数々が放物線を描いて頭の上に墜ちてくるのを、ミーツは呆然と見ているしか出来なかった。


「っ! ミーツっっ!!!」


イーグレットと風対風対決をしていたガラシャが叫ぶが、ミーツは為す統べなく岩石の雨に打たれた。

最後の1つが堕ちて、岩山が出来上がったあと一筋の光が昇る。ミーツが戦線離脱した光だ。


「くっそぉ!?」


思わず伸ばしていた翼の腕はなににも届かず空を掴む。


「うわ...死なないからって遠慮ねぇ....」


風の巨鳥に乗ったイーグレットも、遠目に見ても引くほどのオーバーキル。

停滞していた空の2人の間に、間髪入れず石の砲撃が爆発した。

2人を見上げるメガネ隊長。


「何をしている!! さっさと仕留めろ!!!」


メガネ隊長の怒号に、お互い信じられないといった顔で向き合うイーグレットとガラシャ。

お互い激戦で魔力も消耗していた。


「どうする? うちのメガネ隊長って煩くってさ、ちゃんとやらないと俺殺されちゃうかもしれないんだよね」


首にかけられた魔法を指差して見せるイーグレットに、ガラシャは言葉を失った。


(勝利のために仲間の生命まで手にかけるってのかよ!?)


これはこちらも手を抜けないと、意識を切り替える。


「....本気で一合、それで決着をつける。いいよな?」


質問しているにも関わらず、有無を言わせない魔力を練り上げるガラシャ。風穴の渦が空に穴穿ち、竜巻となって木々が上から吸い込まれていく。

吹き荒れる風とオーラに、イーグレットの闘争心も沸き立つ。


「いいね...」


唸るように返した言葉は旋風を呼び起こす。

足場となっていた風の鳥は大きくうねって、暴風の鳳凰が天に鳴いた。下の木々が風圧で折れていく。


森が上下に裂かれ、谷が崩れ、残骸は双方の引力で空中に浮島のように溜まっていく。

乱気流で浮島が流れ、障害物が退いた瞬間。

竜と鳳凰が激突した。


一瞬、結界内の空気が消え、1テンポ遅れて爆風がスタジアムを轟かせる。


観客、仲間が見つめるなか、崩壊した戦場から光の柱が2本。


『相討ち...』


イーグレットもガラシャも、お互い全力の一撃で共倒れとなった。

この時点でトスコロカリアチームの勝利が決定した。

呆然とした様子の会場の空気のなか、メガネ隊長は独りミデンチームの岩の前へと立つ。


『...第一試合はトスコロカリアチーム! 怒涛の展開からの最後は相討ちでの勝利! 第二試合、オリジナ対ロランダは20分後開始です!』


「あの、もう出られますよ」


なかなかフィールドから出てこないメガネ体長を案じて係員が呼びに入った。

と、そこには粉々に打ち砕かれたミデンチームの岩。


「ああ」


そのまま係員に背を向けたままフィールドを出たメガネ隊長は、口角を上げて舌舐める。


「...あと2回....」


メガネの奥に狂喜を隠して。

















だんだんペースが落ちてますが書くのやめませんから! 何年かかろうが完結させます!

この後何したいとか何となくではあるんですが決まってるんです。

というわけで、のんびり頑張りますっ。


更新遅くても記憶の一部に残しておきたいとちょっとでも思われた方、ぜひブクマお願いします。

ブクマの数って1つでも増えると物凄く励みになります。



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― 新着の感想 ―
[一言] ん、狂気の眼鏡ですね。 彼のメガネはたぶん世界征服できると思う(知らんけど)
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